世界の研究所 MRC Laboratory of Molecular Biology(英国)

今週の世界の研究所は英国のMRC Laboratory of Molecular Biologyを取り上げます。ここはケンブリッジ大学医学部に離接していてDNA構造解明のワトソンとクリックの流れをくみ、ノーベル賞19人を出しているすごい研究所です。MRCはMedical Research Council(英国政府の医学研究局)の略だそうです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/MRC%E5%88%86%E5%AD%90%E7%94%9F%E7%89%A9%E5%AD%A6%E7%A0%94%E7%A9%B6%E6%89%80 https://www2.mrc-lmb.…

百人一首(6) 悪天候の歌 48, 57, 58

今週金曜日の百人一首は、雷を扱ったものは無いので、悪天候(に近いもの)を探しました。 48 風をいたみ岩うつ波のおのれのみ くだけてものを思ふころかな    源重之 Blown by the fierce winds / I am the waves that crash upon your impervious rock. Through my heart shatters, / my love rages yet. 57 めぐりあひて見しやそれとも分かぬまに 雲がくれにし夜半の月かな  紫式部 Just like the moon,/ you had come and gone / bef…

稲妻とUrey-Millerの実験

雷といえば雷鳴と稲妻です。雷鳴は、放電に伴って発生する高温による空気の膨張速度が音速を超えて衝撃波が生じ、それが音に変わるときにゴロゴロいう音になります。稲妻は放電経路から出る光ですが、例えば北斎の「山下白雨」にみられるように折れ曲がりと分岐があります。 https://www.adachi-hanga.com/ukiyo-e/items/hokusai049/ 動画はたくさんありますが例えば下記がスローモーションもあって見やすいです。 https://www.youtube.com/watch?v=UNEZnK6V2QE それほど直線部があるわけではないことがわかります。 その仕組みについて…

雷の電気が発生するしくみ

雷の電気はなぜ発生するかについては下記が詳しいです。 https://ztresearch.blog/education/electrification-of-clouds/ 簡単に言うと、激しい上昇気流で水を含む空気が冷たい上空に行くと水滴ができます(これが雲)、さらに上空に行くと氷になります。氷は核発生が難しいため過冷却の水滴も多く、いったん氷ができると過飽和水滴を取り込んで急激に大きくなることがあります。そのため、場所により氷の粒の大きさにむらが生じます。大きい氷粒は重力で落ちるため、低いところに小さい氷粒があると激しく衝突します。その際、H3O+イオンが動きやすいため、静電エネルギーの…

高い電圧を作るしくみ

雷の電圧は1億ボルトに達することもあると言われています。この電圧がどうやって生じるか、については昨日のサイトにヒントがありましたが、クイズ形式にすると: Q. 雷の高い電圧が発生する機構は下記の装置のうちどれに最も似ているか? 選択肢 1.van de Graaff 2. Cockroft-Walton 3. 高周波加速空洞 答えは、1.ヴァンデグラフ発電機です。 静電気を連続的に発生させて一ヶ所に蓄積させるという、単純ですが偉大なアイデアです。素材を工夫すると2000万ボルトを出せるそうです。 https://www.youtube.com/watch?v=rNEY3Yv9kC8 https…

世界の研究所 米国 National Center for Atmospheric research

先週末は激しい雷がありました。これから寒くなるという予告だと思います。今週は雷について調べる予定で、世界の研究所は、米国のNational Center for Atmospheric Research (NCAR, 国立大気研究所)を紹介します。当然米国の気象庁NOAAも雷の予報はしています。日本では、ちょっと前にとりあげた電力中央研究所が雷の研究部門(避雷用途)を持っています。 NCARの場所はコロラド州のBoulderです。Univ. Colorado, NOAA(気象庁)& NIST(標準局)の設備も近くにあり、また、隣接のWyoming州には付属の計算機センターがあるようです…

百人一首(5) 記憶に関する歌 34, 35,100

今週金曜日の百人一首は、昨日、海馬(hippocampus)の話をしたので「記憶」に関わるものをピックアップします。英訳はPeter McMillan先生(文春文庫) https://www.peter-a-macmillan.com/ (34) 誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに (藤原興風) Of those I loved, none are left. / Only the aged pine / of Takasago has my years, but, alas, / he is not an old friend of mine. (35) ひとはいさ 心も…

FOXP2遺伝子は言語・学習能力に関係する

月曜日に紹介したドイツのマックスプランク進化人類学研究所は、今回のノーベル賞のネアンデルタール人研究以外にも、FOXP2遺伝子というヒットを飛ばしています。変異させるとネズミが賢くなったというのは「アルジャーノン」みたいで衝撃的です。 https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v9/n1/%E3%80%8C%E8%A8%80%E8%AA%9E%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E3%80%8D%E3%81%8C%E5%AD%A6%E7%BF%92%E9%80%9F%E5%BA%A6%E3%82%92%E9%80%9F%E3%82%81…

海馬とタツノオトシゴ属 は英語では同じ単語

今日は、韓国とイタリアで行われる2つの国際会議に両方オンライン参加します。リモートのおかげでたいへん便利になりましたが、ハイブリッド会議の主催者側の苦労は先月の学会をお世話して痛感しました。ところが、昨夜、イタリアの方から、私の座長のスケジュールが20分早まったプログラムが最終版として送られてきました。韓国の学会での自分の発表時間と重なってしまい、慌てました。韓国側をずらしてもらうことで対応できましたが、運営の心構えが開催国によって違うのかな、と少しあきれています。 さて、月曜に紹介したマックスプランク発達教育学研究所ですが、乳児の発達の部門等の他、 脳波の精密計測の部門と https://w…

ノーベル経済学賞

2022年のノーベル経済学賞は経済危機における銀行の役割に関する業績で前米国連邦準備理事会議長の B.S.Bernanke,シカゴ大学のD.W.Diamond, Washington Univ. in St LouisのP.H.Dybvigの3氏に与えられました。1930年代の世界恐慌は金本位制の縛りで通貨供給量を増やせず、1990年代の日本のバブル崩壊時は世論もあり引締めをしすぎて苦労しました。2008年のリーマンショック後は、危機にあっては銀行を守れ、という認識で当局は行動しているようです。今回のコロナ危機では各国とも積極的にお金を配りました。副作用でインフレや為替不安定が起こっていますが…