フランクリン北極探検隊の鉛中毒

今日は悲劇のフランクリン北極探検隊(1845)を取り上げます。 これは、北極探検の最初期に行われた、カナダの北側を通って大西洋と太平洋を結ぶ航路(北西航路)を見つけるための遠征です。イギリス海軍肝いりで行われましたが、129人(133人?)の隊員が全滅しました。北西航路を確立したのは、南極点一番乗りのアムンセン(1906)です。優秀な人は複数の業績を上げますね。私のみるところ、要因は才能だけでなく、性格や仕事のやり方が対象(と時代)に合っている場合が多いと思います。これは「運」を構成する一つの要素だと思います。合う対象を探すか、自分を変えるか、気にせず自分を貫くか、人それぞれですね。 http…

フラム号

フラム(Fram 前進)号は、ナンセンが考案し、ノルウェー一番の船大工(Colin Archer)が設計・建造した木製の極地探検用帆船(全長39m幅11m)で、通常より丸い船底が特徴です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%83%A9%E3%83%A0%E5%8F%B7 ナンセンは極地探検で船が氷につぶされる危険を認識し、氷に押されたときに浮き上がるように、丸い底を持つ硬い木でできた船を国の援助で作りました。フラム号は、14人が3年間氷の流れに乗って北極海の海流を研究しさらに北極点を目指したFram Expedition(1893-1896)…

初代難民高等弁務官

ナンセン(Fritjof Nansen 1861-1930)は時々現れるスーパーマンの一人で、海洋生物学者、探検家、政治家として活躍しました。技術的にはフラム号の発明(明日)が光ります。深海水を採集するナンセン瓶も発明しています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Fridtjof_Nansen https://en.wikipedia.org/wiki/Nansen_bottle 特に国連(国際連盟)の初代難民高等弁務官を務め、ノーベル平和賞受賞、「難民の父」と呼ばれています。私が驚いたのは絵が上手なことです。若い時画家も志したが、趣味にとどめることにしたとのこと。…

世界の研究所 Fridtjof Nansen Institute (Norway)

今週の世界の研究所は、ノルウェーの Fridtjof Nansen Institute (フリチョフ・ナンセン研究所)です。 https://www.fni.no/?lang=en_GB 研究対象はちょっと変わっていて、環境、生物多様性、気候変動の他に海洋法、北極・ロシア政治について研究しているようです。北極とロシアはいろいろあります。北極点には陸地が無いですが、石油、天然ガス(一説では地球上の1/4)、鉱産資源が豊富だと言われていて、ロシアが2007年に北極点の海底(深さ4261m)に潜水艇でチタン製(!)の国旗を建てて排他的経済水域であると主張したことにより緊張が高まりました。2015年に…

企業会計 その6 無形固定資産と3つの会計制度

今週は予算申請書を書いていて余裕がありませんでしたが、あと1つで終わりです。突っ込みどころを深く考えたり、理論的な予測を計算したりするので、通常とは違う側面から研究が進みます(強制的に言語中枢と連想能力が活性化される副作用もあります。今週は私は饒舌になっていたのではないでしょうか)。 さて、企業会計は、固定資産の続きで、B/Sの左側にある「無形固定資産」を取り上げます。 https://biz.moneyforward.com/words/1693/ これは、特許権、鉱業権(採掘権、日本は商社などで重要)、のれん代などがあります。特許権や鉱業権は定額法による償却が行われますが、のれん代の償却は…

帝国南極横断探検隊

昨日の https://japan.googleblog.com/2012/07/blog-post_18.html で「シャクルトン隊の小屋」というのがあったと思います。映画などで知っている人もいるかもしれません。 Sir Ernest Henry Shackleton(1874-1922)は、アイルランドの探検家で、アムンセンによる南極点到達のあとを受けた南極大陸横断(南極点通過)の探検を企画しました。その途中で船が流氷に閉じ込められ破壊され遭難しましたが、隊員28人を率いて2年間かけて自力で全員の生還に成功した、というすごい人で、しばらく前に「リーダーの模範」として日本でもブームになりま…

世界の研究所 ミネソタ大学極地研究所

今週の世界の研究所はミネソタ大学極地研究所(The Polar Geospatial Center (PGC) at the University of Minnesota)です。 https://www.pgc.umn.edu/ 研究所といっても、遠隔観測等のデジタル情報を扱うサービスを専門にしているようです。 https://japan.googleblog.com/2012/07/blog-post_18.html 今週は極地探検家を取り上げようと思います。 spatial spaceの形容詞。スペイシャる「空間に関する」「場所の」 spacial これも 「空間的な」スペイシャる 辞書…

企業会計 その5 減価償却

今日の企業会計は、「減価償却(げんかしょうきゃく) depreciation」について解説します。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%9B%E4%BE%A1%E5%84%9F%E5%8D%B4 B/S(貸借対照表)には、左側(借方)に「固定資産」という項目があります。これは、工場の設備などを指します。「減価償却」は、固定資産が年々減っていく取り扱いです。具体的には、税金に関わってきます。固定資産は、個人では持ち家も該当しますが、所有するためには年々その分の税金(=固定資産税:家については評価額の1.4%を毎年)を払わなければならない、ということです。税は…

Haldane ギャップの最近の進展

今週は難しい話ばかりで申し訳ありませんが、続けます。昨日のSSHモデルはポリアセチレンの二重結合と単結合の切り替わりに隠れている数学(2×2の複素行列)の話でしたが、今日は一次元スピン系の話です。有名なのは「Haldaneギャップ」で、Haldeneはこの業績とは別の論文で2016年にノーベル賞を受賞しています。 スピン1を持った金属原子が一次元的に並んだ物質(例Y2BaNiO5)の磁化率が0Kでどうなるか「基底状態から励起状態へgapがあるかどうかは、0Kでの帯磁率が0になるか(gapあり)有限値になるか(gap無し)という明確な違いとなって現れる」。また、欠陥を入れて端の挙動をみる、という…

Su-Schriefer-Heegerモデルの直接観察

トポロジカル物質について解説を考えていますが、とっかかりはポリアセチレンのSu-Schriefer-Heeger(SSH)モデルがいいのではないかと思っています。 twitterで簡単な説明をしている人がいました。 https://mobile.twitter.com/q9ac/status/1293366479346233345 最近は分子を表面で重合させて作ってSTMで見ることができます。下記はニュースですが、元論文のデータは感動的です。一番下のリンクから論文に飛んで、右パネルのFiguresタブで縮小版が見えます(あまりよく見えませんが、角のリボン状につくったグラファイトの原子が1個1個…