Why Nations Fail (3):第2,3章 多数を占める労働者階級が自由に利益を追求すると経済発展につながる

金曜日の読書 Why Nations Fail は、実例が面白いです。今週は2章と3章を見ていきましょう。2章は、貧困国がある理由を、地理的条件、文化、指導者の無知などで説明しようとする説が間違っていることを実例を挙げて説明しています。地理的条件はメキシコと米国の国境の町で経済格差が3倍あることにより否定、文化(宗教や国民性)については、急速に経済発展する国があることが説明できないことにより否定、指導者の無知についてはガーナの例が挙げられています。初代大統領エンクルマは独裁傾向、その次のブシアは民主化を志向していましたが、経済は非効率のまま推移しました。ブシアは通貨価値を高く維持しようとしたた…

Human Cell Atlasプロジェクトで日本の機関からの論文が見えないのはなぜか?

Human Cell Atlasプロジェクトで日本の機関からの論文が見えないので勝手に心配しています。下記には理研がHuman Cell Atlasの4つの中核機関の一つとなっていて、アジア人に関する解析を取りまとめると書いてありますが、2017年の話です。 https://www.riken.jp/pr/news/2017/171220_1/ 下記は内閣府の報告書ですが、予算が足りなさそうです。装置などが巨額化するとともに、生物と情報がからんでくるので一人のPI(独立研究者)だけでは回せなくなっている、という話です。装置を自国で作っていれば税金を投入してもいいと思いますが、海外を潤すだけなの…

細胞の種類の同定に単一細胞のmRNAの種類と量を使う

身体の細胞の種類を一つ一つ同定するための最も確かな方法は、その細胞のDNA発現パターンを知ることです(single cell transcriptomics)。一人の細胞のDNAは全身で同じでも細胞の種類によってどの遺伝子が発現して必要なタンパク質を作っているかが異なります。タンパク質の分析(proteomics)は大変ですが、その手前のmRNAはPCR法を使って微量でも分析することができます。 https://en.wikipedia.org/wiki/Single-cell_transcriptomics に手法が解説されています(ちょっと簡略)。 https://www.nature.c…

Human Cell Atlasの中身

Human Cell Atlas の中を見ると例えば下記のページが肺のデータだそうです。黒い umap という図形が細胞の種類や地域性別などのチェックボックスをon/offすると変わりますが、何を示している図なのか、意味がよくわかりません。 https://cellxgene.cziscience.com/e/066943a2-fdac-4b29-b348-40cede398e4e.cxg/ 解説記事を読んでみることにしましょう。下記にはコンピュータがHuman Cell Atlasにどのように使われるか書いてあります。 https://www.nature.com/articles/d415…

世界の研究所:Human Cell Atlasプロジェクト

今週は、最近進展が報告された国際プロジェクト Human Cell Atlas(人体細胞地図)について調べます。 https://www.humancellatlas.org/ Nature誌が最新号で特集を組んでいます。 https://www.nature.com/collections/jccbbdahji 2018年に開始され、資金源はMeta社(旧Facebook)のZackerbergと妻のChanの財団 Chan Zackerberg Initiative が太いところです。 多くの人(現時点で9000人)から細胞の提供を受け、全世界の1700機関の3000人の研究者が協力して人…

Why Nations Fail (2):第1章 国家間の経済格差の原因:仮説の提示

金曜日の読書 Why Nations Fail は、まさに天下国家を語る本です。年代も場所もバラバラに出てきますが、歴史書としても面白く読めます。中央集権が確立した国の政治・経済の制度には「包括的」と「収奪的」の両極があって、これまでのいろいろな国や地域社会はその間のどこかに位置づけられます。この本では、inclusive (訳本では「包括的」)な社会はイノベーションが頻繁に起こり構成員が豊かになりますが、extractive (同「収奪的」)社会は貧しいままである、という主張を論証し、ではどうすればいいのかを提言しています。 第1章は、現在の米国とメキシコの国境にある米国アリゾナ州ノガレス(…

個人がLED照明を使って家で育てる植物とは?

オランダはLED照明を用いた植物工場を欧州で最初に商用化したようです。 https://www.led-professional.com/project_news/general-lighting/europes-first-all-led-industrial-plant-opens-in-the-Netherlands 世界で最初に行ったのがどの国かは調べきれていません。どこが最初か?という質問を生成AIに投げると適当な情報が返ってきて、こっちの方が先でしょう、と手持ちの情報を出すと、実はその通りです、と言って追加情報を出してくるのであてになりません。おそらくこちらの手持ちの情報を学習して…

養殖キノコは日本名のものが多い

キノコの栽培は家庭でもできるようで、菌やキットを売っています。下記の会社はヨーロッパ、多分オランダにあるようですが、どこにあるか書いてありません。日本に輸入するのは農水省から制限がありそうです。 https://toshifarm.com/en/collections/lions-mane 上の写真は変わったキノコですが、日本語ではヤマブシタケというようです。食用で、漢方薬(猴頭)にもなるそうです。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A4%E3%83%9E%E3%83%96%E3%82%B7%E3%82%BF%E3%82%B1 社名や扱っているキノコから…

オランダの農業技術とFood Valley構想

Wageningen はオランダの内陸部にあります。鉄道は近くを通っているようですが、大都市からは遠いです。大学と研究所の町です。Food Valleyという産学官の農業・食品研究機関の集積地ができていますが、なぜこの立地なのか気になります。ちなみに、ingenという語尾はオランダの地名にたくさんありますが、「○○族に向かう/ともにある(土地)」という意味だそうです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Wageningen_University_%26_Research によると、1876年に国立農学校ができてそれが次第に整備されたようです。小さい国なので、1か所に集…

世界の研究所:オランダ Wageningen University and Research

先週の月曜日のキノコの話を追いかけようと思って調べていたら、オランダの Wageningen University & Reseach(読み方はワーヘニンゲン)がひっかかりました。 https://www.wur.nl/en/value-creation-cooperation/join-us-on-campus.htm ここは、大学と官民の研究所が合体して運営されているようで、農業分野での大学世界ランキングでは1位です。 https://www.topuniversities.com/university-subject-rankings/agriculture-forestry 「…