世界の研究所 JOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)

今週の世界の研究所は、日本のJOGMEC(独立行政法人 石油天然ガス・金属鉱物資源機構)をとりあげます。wikipediaによると、所管は資源エネルギー庁、職員は637人、年間予算は1兆円余という巨大なものです。国家石油備蓄なども仕事なので、お金がかかるのではないでしょうか。webに各種鉱産資源(Li, Niなど)に関するリアルタイム情報が出ていて、面白いので私はちょくちょく見ています。 https://mric.jogmec.go.jp/ 生物選鉱や装置の特許も持っているようです。千葉市(石油・天然ガス関連)、秋田県小坂町(金属関連)、新潟県柏崎市(油田技術教育)など研究設備もあちこちにあり…

Justice 第2章 功利主義(2)

世界が物騒になっていますね。一部で人気の E.N.Luttwak の「戦争にチャンスを与えよ」等を最近読み、いろいろ考えさせられました。生きている以上利害の対立は避けられないですが、樹木のように高く伸びて葉を広げたほうが日光をより多く吸収できるというような、静かな競争で解決するのが理想的だと思っています。一人の人間は持ち時間が決まっているので、ルールの下での競争で資源配分を決めるとだいたいOKと思いますが、歴史的な時間での人間集団に置きなおすと出生率が出てきて、やはり一筋縄ではいかないです…。賢くなりたいですね。 さて、今週のJustice は第2章「功利主義」のつづきです。英国のミルとベンサ…

空飛ぶ自動車の電池容量

昨日計算した、飛行自動車が浮くためのパワー21kWに加えて、102km/h=28.3m/sの速度で水平飛行するためのパワーは、空気抵抗 1/2 x Cd x 空気密度 x 前方投影面積 x 速度^2 =1/2 x 0.25 x 1.28[kg/m3] x 1 [m2] x (28.3)^2 =128 N です。思ったほど大きくないですね。これを28.3m/sで移動するときの仕事率(←「パワー」の日本語はこれでしたね)は128 x 28.3 =3.6kWとなります。 浮くためのパワーと合わせて25kW, 効率70%として36kWが消費電力ですね。88kWの最大出力は加速時や方向転換などに使うので…

空飛ぶ自動車の消費電力

飛行自動車(またはエアタクシー)は4m2の面積の空気を20m/sで下向きに噴き出して2000Nの力で浮かぶという計算でした。 消費電力(以下モーターの効率を入れない値を「パワー」と言いましょう、単位時間当たりの仕事)を計算したいですが、流体力学でプロペラの計算をするのは大変そうです。下記、軸流ファンの計算ですが、「ビオ・サバールの法則」が出てきて、羽根を10分割すると計算できるそうです。自動車関連の技術論文なのが面白いです(pdf)。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsaeronbun/48/2/48_20174227/_pdf/-char/ja も…

空飛ぶ自動車のホバリング

一人乗り飛行自動車 Jetson ONEは現実のものですが、数十年前のアニメが現実化したような奇妙な印象を持ちます。価格は1050万円だそうです。今年12台納品予定で、現在40台くらい予約がはいっているようですね。 https://www.gizmodo.jp/2021/10/jetson-one.html 技術的にいくつか疑問があるので、考えていきましょう。(1)下向きの風が発生するはずですが、どのくらいなのか?(2) 88kWという最大出力はかなり高いですが、浮くだけでどのくらい必要なのか? また、移動1km当たりの消費電力(燃費)は? (3) 使っているリチウムイオン電池の性能は? (4…

世界の研究所 空飛ぶ自動車のJetson社(スウェーデン)

生物系の話が2週続いたので、今週はニュースに出ていた空飛ぶ自動車について調べましょう。世界の研究所は、スウェーデンのベンチャー企業 Jetson です。 https://www.jetsonaero.com/ 一人乗り、重量86kg, 搭載重量95kg(体格が良いと厳しい?)、2.48×1.50x1.03 m 時速102kmで20分飛行可能。出力88kWのリチウムイオン電池、充電1~2時間です。土地利用が密集している日本では使用は難しいかもしれませんが、実用性はありますね。 Jetson is a Swedish company with a mission to change the way…

Justice 第2章 功利主義(1)

金曜日はしばらくSandel教授のJusticeを読みます。今回と次回で第2章「功利主義」を解説する予定です。功利主義は、「最大多数の最大幸福」を掲げて「道徳を科学的に扱う」ことを主張します。すなわち、関係者の幸福(快)の総和から苦痛(苦)の総和を引いたものを最大にすべきであるという原理です。第2章では、功利主義が一筋縄ではいかない衝撃的な例がいくつも挙げられています。冒頭の例は朝から申し訳ありませんが下記でした。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9F%E3%83%8B%E3%83%A7%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E5%8F…

膵島β細胞の増殖法

月曜日に紹介した、膵島β細胞の増殖法は、MYCL(L-Mycとも)という遺伝子の発現誘導を行うことでした。 MYCLや「発現誘導」は知らなかったので調べてみました。MYCLは下記サイトにあるように、DNAの転写を制御するタンパク質をコードしている「がん原遺伝子」だそうで、エラーが起こるとがんにつながるようです。下記サイトは静岡県の機関のものですが、勉強になりますね。 https://www.jcga-scc.jp/ja/gene/MYCL iPS細胞にも当初Myc遺伝子の仲間が使われていましたが、がん化の危険があるので使わない方法が開発されたそうです。「発現誘導」の方は猛烈に複雑で、今でも新事…

インシュリンの機能

インシュリンは51個のアミノ酸からなるペプチドです。大きさは2nmくらいでしょうか。塊のような形をしているので、液体中や細胞膜表面を移動しやすいのではないでしょうか。下記の真ん中あたりExploring Structureの”JSmol”タブを押すと3次元構造を動かせます(ちょっと時間がかかります)。 https://pdb101.rcsb.org/motm/14 インシュリンは細胞膜にある受容体と結合すると、細胞内シグナルタンパク質を変化させます(アミノ酸の-OHにリン酸PO4をくっつける)。その酵素チロシンキナーゼを活性化させるところからスタートするようです。 ht…

インシュリン

ランゲルハンスが彼の名前がついた膵島(isles of pancreas)を発見してから、その機能が分かるまでには52年かかっています。膵臓の主な機能は消化酵素を作ることですが、なぜかグルカゴンGlucagonとインシュリンInsulinという2つの血糖値調節ホルモンも出します。 https://www.terumo.co.jp/challengers/challengers/13.html ランゲルハンスの晩年の言葉「私には、これを解明する能力が欠けている」。フェルマーの「証明はできたが書く余白がない」に匹敵するドラマだと思います。 インシュリン Insulin は、「島 insula」を語…