五輪書(10) 空の巻

金曜日の読書「五輪書」は最後の「空の巻」です。この巻はたいへん短いです。 修行を重ねることにより、少しの曇りもなく、迷いの雲の晴れたところに至ることを「空」と言っています。 自分にはまだ知りえない世界があると自覚し、心の偏りや目のゆがみにとらわれていないかと常に反省しながら鍛錬を続けることが必要とのことなので、到達不可能でしょう。 この境地に近づけば、自動的に技が決まり勝つことができる、とのこと。 The Scroll of Heaven … He should polish his mind and his will and sharpen the two visions - …

五輪書(9) 風の巻2

金曜日の読書「五輪書」は「風の巻」の2回目です。この巻では前回紹介したものを含めて全部で9つの流派を批判しています。 1 長い刀を使う流派  Schools that use a particularly long large sword 2 力任せに太刀を使う流派  Schools that use the sword with brute force 3 短い刀を使う流派 Schools that use a short sward 4 多くの技をもつ流派  Schools that have a large number of techniques 5 構えを重視する流派 Schools…

五輪書(8) 風の巻1

金曜日の読書「五輪書」は「風の巻」の1回目です。風の巻では他流の批判をしながら自分の二天一流のエッセンスを述べています。 大きな刀や小さな刀にこだわる流派、表と奥の区別をする流派などを批判しています。原文と英語を並べてみてみましょう。 他の流々、芸にわたって、身すぎのためにして、色を飾り花を咲かせ、売りものにこしらへたるによって、実(まこと)の道に有らざる事か。 In the other schools, techniques are displayed like merchandise adorned with colors and flowers, so they can be turne…

高温ガス炉の試験は西ドイツで行われ、問題点と解決策がわかった

高温ガス炉のアイデアは1944年に米国、最初の本格的な試験と小規模の実用運転は旧・西ドイツで行われています。1960年建造、1967年に商用発電開始、1988年に閉鎖です。15MWの発電能力がありました。 https://en.wikipedia.org/wiki/AVR_reactor ケルン(Köln, Cologne)の近くにあるJürich(ユーリッヒ)という町にドイツの原子力研究所があり、そこに建設されました。 その技術が中国に移転され、2021年から稼働している210MWの高温ガス炉になっています。その意味で「世界初」というのをどうとらえるかは議論がありそうです。 https://…

五輪書(7) 火の巻2

金曜日の読書「五輪書」は「火の巻」の2回目です。前回は1:1の戦いに重点を置いた記述を説明しましたが、今回は軍勢を率いる場合について紹介します。 1 「景気を見る」 敵味方の勢い、数、心理を分析し、確かに勝つというところを確信して、先手を取って、戦う。 2 「剣を踏む」 敵が行動を起こそうとするところを踏みつけて勝つ。 3 「ひしぐ」 頭から抑え込む。これは敵が少ない場合がよいが、多くてもうろたえているときは有効である。しかし「ひしぐ」力が弱いと盛り返されるので、手の内に握って抑え込み続ける気持ちが重要。 4 「おびやかす・うろめかす」 おどかしたり意表をついて動揺させる。 5 「かどにさはる…

五輪書(6) 火の巻1

金曜日の読書「五輪書」は「火の巻」の1回目です。この巻では、戦いの具体例を1対1の場合と、軍勢を率いる場合の両方について解説しています。宮本武蔵の寿命が尽きつつある段階で書かれたので、まとまりに欠けますが、戦いの心構えを言語化してあって、面白く参考になります。 今週は1対1の戦いについて紹介します。 1 「場の勝ち」 戦いの場を把握し、自分が有利に、相手が不利になるように動いていく。 2 「先(せん)を取る」 自分が仕掛ける、相手の攻撃を防衛する、両方から攻撃する、3つの場合があるがどちらもタイミングを見計らって相手よりも速く動いて「先」を取る。 3 「枕のおさえ」 相手が攻撃しようとする動作…

五輪書(5) 水の巻2

金曜日の読書「五輪書」は「水の巻」の後半です。武蔵が多くの流派の免許皆伝者を長年指導した結果会得した剣術の技術と本質を言葉にしています。 面白い構えや技の名前があります。五方の構、五つのおもて、一拍子の打、二の越の打、無念無想の打(The strike of nonthought)、縁のあたり、石化のあたり、紅葉の打ち(The crimson leaves strike)、しうこうの身(The autumn monkey’s body)、漆膠の身(The body of laquer and paste)、たけくらべ(Comparing heights)、身のあたり(Banging…

五輪書(4) 水の巻1

金曜日の読書「五輪書」は2巻めの「水の巻」第1回です。水をモデルとして剣術の具体的な「理論」(原文は「利」)を述べています。まず心、目、手、足の使い方の基本の考え方です。 要約します。 心:平常の心が剣術を行っているときの心と変わらないようにする。心を広く、偏りなく、静かにゆるがせて、心に用心して、身には用心をせず。心を濁らせず、知恵も心もいつも鍛錬する。天下の理非、善悪をわきまえ、他人に騙されることを無くす。動かぬ心。 姿勢:顔はうつむかず。目玉はうごかさない。まばたきもしない。少しあごを出して首筋に力を入れる。肩から下は一体と思って両肩を下げ、背筋をまっすぐ。 目:大きく広く見る。「見」と…

五輪書(3) 地の巻3

金曜日の読書「五輪書」は「地の巻」第3回目です。ちょっと前後しますが、まず二刀流が優れている点の説明から。 「一命を捨る時は、道具を残さず役にたてたきもの也。道具を役にたてず腰に納めて死する事、本意に有るべからず。然れども、両手に物を持事、左右共に自由には叶ひがたし。太刀を片手にとりならはせんため也。・・・太刀を両手にて持てあしきこと、馬上にてあしし。かけ走時あしし、沼、深田、石原、険しき道、人ごみにあしし。」 If you are going to die in battle, it is desirable to utilize all weapons you are carrying. …

五輪書(3) 地の巻2

金曜日の読書「五輪書」は「地の巻」第2回目です。英語で見ていきましょう。 “If you succeed in clearly discerning the general principle of the art of the sword and in this manner easily defeat one person, you can defeat any opponent. The mind is the same whether it is a matter of defeating one person or a thousand or ten thousand e…