世界の研究所 MAX IV Lab

今日はおそらく第150回です。余裕がない時は短くなってしまうかもしれませんが、できるだけ続けたいと思います。 今週の世界の研究所は、スウェーデンのMAX Labです。 https://www.maxiv.lu.se/ ここは、Lund市の郊外にあり、去年も学会で行きました。Lundはスウェーデンの南側のスコーネ地方にあります。このへんはニルスの不思議な旅の舞台です。 MAX Labは、内装に木材がふんだんに使われているのが特色です。去年行ったときは、日本のJ-PARCと同様の加速器による中性子発生施設(ESS; European Spallation Source)を併設するため工事をしていま…

孫子 風林火山

今週の孫子は、7章 軍争篇(Maneuvering)からです。「15 故兵以詐立、以利動、16 以分合為変者也。17 故其疾如風、其徐如林、18 侵掠如火、不動如山、19 難知如陰、動如雷霆。20 掠郷分衆、廓地分利、21 懸権而動。22 先知迂直之計者勝。此軍争之法也。」 17と18が武田信玄の旗「風林火山」です。 https://www.city.kofu.yamanashi.jp/senior/kamejii/035.html 個人的には19に憧れます。 15. In war, practice dissimulation, and you will succeed. 16. Wheth…

メトロノーム

月末から始まる「物性化学」講義の準備をしています。3年目の今年は、流れがだいたい固まったので教科書の骨子を作るべく、もがいています。1回目の力学系のところで「エントロピー生成最小原理」(I. Prigogine)の証明をどうするか考えているところです。例年証明せずに紹介だけしていますが、なんとか納得感を出したいと思います。添え字だらけの式はここには載せられないのですが、メトロノーム(下記、動画リンク)の話を一般化する方向で考えています。さて来週月曜日に間に合うかどうか。 https://www.youtube.com/watch?v=Aaxw4zbULMs https://www.youtub…

硬X線光学

硬X線は、中性子星(pulsar)やブラックホールの観察に使われます。高エネルギーの光にはレンズとして使える物質がありません。低エネルギーのX線には、すれすれ入射による反射(斜入射望遠鏡)を使う方法(1,2:X線回折装置の集光にも応用されています)があります。それが使えないほどの高エネルギー微弱光を見るため、いろいろな方法が考案されました。札幌出身の故 小田稔教授(3)による「すだれコリメータ」(4)が最初で、2次元版のcoded mask(5)があります。天文学、生物学に使われる極限の光学は半導体のナノリソグラフィ等にも応用可能で、勉強になります。 (1) http://astro-dic.…

世界の研究所 流浪地球&高能物理研究所

今週の世界の研究所は、中国から選ぼうと思いましたが、web上の情報が少なく、延期です。かわりに、去年ヒットしたSF映画を紹介しましょう。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B5%81%E8%BB%A2%E3%81%AE%E5%9C%B0%E7%90%83 https://www.youtube.com/watch?v=0TDII5IkI3Y 原作は読みましたが、映画は相当ストーリーが変わっているようです。 太陽が赤色巨星になることがわかり、地球にたくさんの核融合エンジン(燃料は地殻の石のようです)を作って地球ごと太陽系を脱出してαケンタウリを目指すところまでは…

孫子 「奇」

今週の孫子は、5章 兵勢篇(Energy)からです。「三軍之架、可使必受敵而無敗者、奇正是也。 兵之所加、如以(石段)投卵者、虚実是也。凡戦者、以正合、以奇勝。故善出奇者、無窮如天地、不(立と掲のつくり)如江河。終而復始、日月是也。死而復生、四時是也。」 型にはまった正攻法だけではダメで、臨機の応用(「奇」indirect tacticsと訳してありますが、ちょっと違う感じですね)が必要であるという主張です。長州藩の「奇兵隊」の「奇」の基になった考え方だと言われています。 To ensure that your whole host may withstand the brunt of the…

弓曳童子

からくり人形は需要があるようで、いまでも製作を仕事にしている人がいます。 下記リンクをたどると、昨日の弓曳童子の製作過程等が説明されています。 http://hara-k.art.coocan.jp/ 図面付きの本も出ていますね。弓曳童子(下記のNo.5)はもうすぐ11月30日販売のようです。 https://www.amazon.co.jp/dp/4434195883 機械仕掛けの勉強をしたい場合は、下記がおすすめです。 https://www.amazon.co.jp/dp/4526077194 a craftsman 職人 craftsmanship 職人の技能、職人気質 billboa…

からくり儀右衛門

久しぶりに江戸時代の人物を紹介しましょう。東芝の創業者の一人(「芝」のほう)田中久重は「からくり儀右衛門(ぎえもん)」と異名を持つ人形職人でした。こういう、別名(二ツ名)が付く技術者になりたいですね! https://toshiba-mirai-kagakukan.jp/learn/history/toshiba_history/roots/hisashige/index_j.htm 下記は20代の作品とのことですが、ゼンマイ、歯車、カムだけでできているのは素晴らしいです。 https://www.youtube.com/watch?v=S-ayNFyBNhA 幕府の緊縮令などでからくりが流行…

オーロラ(4)

オーロラについて、いろいろ情報を集めたので、ここで紹介しておきます。 ・北海道でも強い磁気嵐の時は微弱なオーロラが見えることが、分光観測でわかったとのこと。裸眼では見えません。11年に一度の太陽活動の極大期のみといわれていましたが、頻度はもっと高そうです。 http://stdb2.stelab.nagoya-u.ac.jp/member/shiokawa/aurora_head.html ・magnetic reconnection のわかりやすい講義。シミュレーション先行で、式による解析はまだまだのようです。数学好きの人はアタックしたらいいかもしれません。AIに微分方程式の特殊解を求めさせ…

世界の研究所 Ioffe Institute

今週の世界の研究所は、ロシアのIoffe物理工学研究所(Ioffe Institute)です。Saint Ptersburg(サンクトペテルブルク、昔のレニングラード)にあります。ここには私が学生時代から共同研究している先生がいるので、何度も行ったことがあります。非常に古い建物が使われていますが、重点的にお金が配分されている研究室もあります。創立100年とのこと。サンクトペテルブルグは昔の首都なので、多くの宮殿や美術館があるきれいな街です。 http://www.ioffe.ru/index_en.html https://www.hermitagemuseum.org/wps/portal/…