分子動力学シミュレーションの動画

昨日分に訂正があります。プログラムLAMMPSを製作管理しているのはLos Alamosではなくて、米国の Sandia 国立研究所とTemple大学でした。おわびします。Sandia国立研究所については来週紹介しましょう。 LAMMPSは、分子動力学と呼ばれる計算を行います。私が最近行った蒸着のシミュレーション例を示します。 700Kに設定 https://www.youtube.com/watch?v=F0Hi9NkacY8 100Kに設定 https://www.youtube.com/watch?v=-FVRxe3D5pM 実際と比較すると蒸着分子の速度はだいたいこれくらい、新たな分子…

世界の研究所 米国 Los Alamos National Laboratory

今週の世界の研究所は米国のLos Alamos 国立研究所(1)です。ここは、機密を要する原爆開発のマンハッタン計画(2)の最終段階のためにNew Mexico州の人里離れた場所に1943年に建設されたものです。同計画は、1939年からのべ40000人を投入して、連鎖反応が起こるという情報だけから5年で原子爆弾の開発にこぎつけました。ウランの同位体濃縮、核反応断面積の精密測定、爆弾の設計など、短期間で越えた技術的ハードルは驚くべきものがありますが、日本人としては複雑な感情を抱かざるを得ません。水爆もここで開発されました(Jahn-Teller効果やBET吸着式のE. Tellerが指揮, 19…

企業会計 その2 CAPM

金曜日はしばらく企業会計の解説です。略語がたくさん(数十)あるので、当面、それを知識ゼロから説明していく方針でやってみます。 今回は、前回出てきた企業が資金を株式市場から調達するときにかかる「株主資本コスト」に関連するCAPM(キャップエム: capital asset premium model、資本資産価格モデル)です。読み方が変な略語が多いです。 皆さんが大発明をしたとしましょう。それを使って製品を作って売りたいとして、工場を建てる資金をどう調達するか。銀行から借りるか、株を発行して株式市場で売る(審査に通って上場したとして)かという選択肢があります。銀行のお金は期限が来たら返す必要があ…

CO2還元反応

CO2を電気で還元する方法は研究途上ですが、過電圧や反応速度、選択性の問題があります。個人的には高分子電解質(米国3M社、下記CRDSレポートを参照)が面白いと思います。 太陽光・太陽熱発電で得られた電力を貯めるために、水の電解で水素を作る方法が先行しているので、水素とCO2を反応させて還元する方法が有力視されています。既存のプロセスの改良でできることも利点です。各段階でいろいろな反応があるので覚えておくといいでしょう。 逆シフト反応 CO2+H2 → CO+H2O Fischer-Tropsh reaction (FT反応)nCO+(4n+2)H2 → C_n H_2n+2 + nH2O 触…

大気CO2還元に必要なエネルギー総量

CO2の海底貯留は数十年の一時しのぎにすぎません。還元して燃料に戻すのが理想です。 そのためには、エネルギーが必要です。見積もってみましょう。 地球大気の100ppmのCO2は、1.8×10^16 molに相当。 熱化学方程式が簡単です。 C(黒鉛)+O2(気)=CO2(気)+ 394kJ/mol なので、 394*1.8E16=7.1E18 kJ=2E18 Wh =2000 PWh Eは”10^”の意味です。Pはpetaで1E15 (ギガの6桁上 G(giga), T(tera), P(peta))。 (※4電子還元で炭素にしなくてもいいかもしれませんが、今回は簡単な…

大気の総量と回収すべきCO2量

大気の総量の計算法について。 昨日は対流圏の厚さを使いましたが、上の方は圧力が低い(上端で約0.1気圧)ので正しくありません。昨日は気圧が対流圏全部1気圧として計算していたところが間違っていました。頭のいい方法が下記に載っていました。大気圧そのものから、大気の質量を求めます。 https://www.s-yamaga.jp/nanimono/taikitoumi/taikiatsu.htm 地表は1気圧 = 1013 hPaです。P=m g/S , g=9.8ms^-2 なので、 1m^2の上の大気の質量は m = PS/g= 1.03323×10^4kgとなります。海の中の圧力と同じですね。…

世界の研究所 CO2海底貯留実験施設(苫小牧)

今週の世界の研究所は、北海道苫小牧にあるCO2海底貯留実験施設です。これは資源エネルギー庁がお金を出してつくった民間企業が運営しています。二酸化炭素排出に国際的に課金されるようになると、それを引き取るビジネスが成立するはずです。 https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccs_tomakomai.html https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/ccs_tomakomai_2.html CO2は、25℃でも67気圧で液体になります。(臨界点は31℃73気圧…

企業会計 その1 ROE

企業会計の勉強第1回は、ROE(return on equity, 自己資本利益率と訳す)の解説にしましょう。 読み方は、アール・オー・イー のようです(本だけで勉強すると読み方を間違えて時々恥ずかしいですが、いまはネットで調べられるので安心です)。 定義は ROE = 当期純利益÷自己資本×100(%) で、当期=一定期間(1年、3か月など)   純利益=税金を払った後の会社の手元に残る利益(すべての経費は税金を払う前に清算済み)   自己資本=株式を発行して集めたお金 です。当期純利益は貯金したり、設備投資したり、株主に配当を払うのに使います。上場企業に適用される数値です。 「お金が1年間…

稲がシリコンを集める仕組み

稲のもみ殻には乾燥重量の20%のSiO2が含まれているとのこと。”稲はシリカを何に使っているかというと、葉、茎を硬くして細くても力学的に強くすること、籾を外敵(虫など)に食べられにくくすること、また、水蒸気のバリヤ材として皮が薄くても過剰な蒸散を防げること、などと言われています。遺伝子改変でシリカが取り込まれないようにすると上記の機能が無くなり、稲にダメージがあることが実験で確かめられています。 稲がシリコン(無電荷のケイ酸 Si(OH)4)を集める仕組みは日本の農研機構によって解明されました。3つの膜タンパクがかかわっていて、受動的(ケイ酸だけを選択的に通す穴)、能動的(ATPの…

もみ殻に含まれるケイ素、Rochow-Mullerの直接法、3交代勤務

稲の籾殻(もみがら)には乾燥重量で20%のSiO2が含まれています。もみ殻を燃焼させてシリカだけを取り出す装置が販売されていますが、温度が高すぎると結晶化が進み、火山灰と同様に塵肺(珪肺)の原因になる粉が生じます。アモルファスにとどめておくと、生体内で分解が可能で毒性が低いとされてます。温度制御した燃焼装置を作っている会社が国内にいくつかあります。シリカの販路が少ない割に競争は激しそうです。 https://www.youtube.com/watch?v=25YOFurzhHU 約30年前、もみ殻が半導体シリコンの原料にならないかという話がありましたが、不純物として問題になるのは超微量の炭素な…