The Door into Summer (12) 大団円

金曜日の「夏への扉」は11章・12章で大団円となります。31年間冷凍睡眠で過ごした後、タイムマシンで31年前に戻ってから親しい少女リッキーを探して10年後に冷凍睡眠に入るように促します(「そうしたらお嫁さんにしてくれる?」「もちろん」)。それから31年後の2001年に体験した状況(ライバル社のロボットが市場を制覇しており、その特許は自分の名前で登録されている)になるようにロボットの改良、特許取得、ライバル会社設立などを大車輪で行った後、冷凍睡眠に入ります。ここで主人公が2人、同時に冷凍睡眠に入っているはずです。冷凍睡眠から覚めた後、1人はタイムマシンで過去に戻り、もう一人はリッキーの冷凍睡眠の…

The Door into Summer (11) 第10章

金曜日は「夏への扉」を読んでいます。今週は10章です。タイムマシンが作動して主人公は31年前の1970年に移動します。少し高い空中に出現し、1970年の地表まで落下します。研究所の建物ができていないためです。タイムマシンSFでは出る場所を制御できるかどうかにいろいろなパターンがありますが、「夏への扉」は地球上の同じ位置に出現する設定です。出現したのが弁護士夫妻の目の前で、この弁護士夫妻が助けになってくれます。話が目まぐるしく進行し、汎用ロボットの開発、自動製図機の発明などを行い、最初に設立した会社のライバルとなる会社を設立します。これは2001年の世界で見た状況を再現するべく行動していることに…

プランク探査機搭載の冷凍機

Planck探査機はもう役目を終えましたが、2.726Kの黒体輻射に相当するマイクロ波を角度分解して強度分布を測定し、揺らぎの大きさを調べるのがミッションでした。このようなマイクロ波は、それより高い温度の物体からは大量に放出されますから、検出器はより低い温度に置かなければなりません。ヘリウムの同位体を使った冷凍機が必要です。 使用された多段式冷凍機の解説記事は下記です。 https://www.esa.int/Enabling_Support/Space_Engineering_Technology/Planck_s_cooling_chain 太陽電池と制御システムが入っている高温側と、検出…

The Door into Summer (10) 宇宙の寿命

金曜日は「夏への扉」を読みながら「時間」について考えることにしています。毎日暑いので、宇宙の寿命について考えると涼しくなるでしょうか。宇宙の将来についてはいくつか説があるようです。 収縮してbig bangの状態に戻る big crunch https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81 big bang の状態の手前で反転膨張に転じる big bounce https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%83%…

The Door into Summer(9) サスペンスとヘタウマ

金曜日は「夏への扉」を読みながら「時間」について考えていますが、今週は余力がないので第8章の解説にとどめます。第8章は3つの動きがあり、一つは冬眠前に猫好きの少女リッキーに郵送した、乗っ取られた自社の株券の行方、もう一つは現代で使われている自動ロボットや自動製図機の特許を取り寄せたところ、全く覚えていないのに自分の名前で特許が成立していたこと、一つはタイムマシンの登場です。この話のタイムマシンはエジンバラ大学(コロラド山中の米軍の研究所に招聘)の偏屈なトゥイッチェル(Twitchell)教授により発明されました。このタイムマシンの面白いところは、2つのほぼ同じ質量の物体(生物でもよい)を一つは…

The Door into Summer(8) 女王アリは数十年生きる

金曜日は「夏への扉」を読みながら「時間」について考えています。 生物にとって老化や寿命というのは容赦なく時間の流れを感じさせるものです。今週はセミの話をしていましたが、幼虫で17年を過ごす北米のセミは昆虫の中でも長生きではないかと思いました。cicadamania web siteによると22年超えのものもいるようです。しかし、昆虫の中で最も長寿なのはある種の女王アリと言われていて、飼育下で28年の記録があるそうです。 https://entnemdept.ufl.edu/walker/ufbir/chapters/chapter_34.shtml 写真は下記です。アリの情報を集めたweb s…

The Door into Summer(7) エネルギー地形と観測の時間

ここのところ金曜日は「夏への扉」を読みながら「時間」について考えています。 “(free) energy landscape”という言葉があります。訳は「エネルギー地形」です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E5%9C%B0%E5%BD%A2 物質が変化するときのいろいろな状態のエネルギーがどうなっているか、で、物質の構造変化の座標を空間中の位置(イメージしやすいのはxyの2方向)に、そのエネルギーを高さにとって、地形図のようなものを考えるものです。…

The Door into Summer(6) 絶対反応速度論と前指数因子

金曜日は「夏への扉」を読みながら「時間」について考えています。今日は化学反応における時間を支配するアレニウス式における”pre-exponential factor”(前指数因子)、別名 “attempt frequency” (試行周波数)について考えましょう。いわゆるEyring(アイリング)の絶対反応速度論では、化学反応が起こるときには反応する分子たちが作る活性複合体の遷移状態があり、活性複合体中の分子振動により反応障壁を超えると生成物が生じると考えます。その時に反応障壁を超えようと「試行」する分子振動の周波数が「試行周波数」で、試行1回に…

The Door into Summer(5) 分子進化時計

金曜日は「夏への扉」を読みながら「時間」について考えています。一般相対論のワームホール解、放射壊変の時定数、エントロピーと時間の矢、と来たので、次は遺伝子の話にしましょう。遺伝子は世代を繰り返すと突然変異によって変化し、これが生物の進化と大きく関係してきます。遺伝子の変化は機能を持たない「偽遺伝子」で最も速く、一定値であると考えてよいということが「分子進化の中立説」として正しいとされており、生物の系統がいつ枝分かれしたか、などの時間の推測に使われています。「分子進化時計」と呼ばれます。化学結合論のLinus Pauling が創始者です。 https://en.wikipedia.org/wi…

The Door into Summer(4) 時間の矢とエントロピー

金曜日のThe door into summer は第3章です。本文は後にして、時間についての考察を続けましょう。大学1年生に熱力学を教えています。今週はエントロピーの説明をしたら、強い興味を示してくれました。説明がうまくなったから、と言いたいところですが、年によって反応が変わっているだけでしょう(揺らぎの範囲)。私の知らない最近のテレビドラマかマンガでエントロピーが出てきたのかもしれません。さて、熱力学第二法則は「孤立系のエントロピーは増大する」と表現されることがあり、これは「エントロピー」という言葉を作ったClausiusの本に書いてあるそうです。また、エントロピー増大と時間が一方向に流れ…