プリオン研究における事故

タンパク質の折り畳みが異常になってそれが感染するというプリオン病は不思議なことが多く、盛んに研究されています。例えば、多次元NMRでタンパク質の各部分の距離を測定することができるので形状が分かります。その実験とコンピュータシミュレーションを組み合わせた昨年発表の研究などは面白いです。まれな過程の効率的なシミュレーションの例(metadynamics、いずれ解説しましょう)として勉強になります。 https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2019631118 この論文ではプリオンの断片を扱っていますが、断片ならば病原性はないのでしょうか。黄熱病の研究などでも野口…

ヘリウム資源

ヘリウムの値段が高騰して、日本物理学会が要望書を出したニュースは見たことがあるのではないでしょうか。 https://www.jps.or.jp/information/2019/12/helium.php ヘリウムは100%輸入です。主な産出地は、米国、カタール、アルジェリアと限られており、米国土地管理局が備蓄していたヘリウムの国外販売終了(2018年)や、中東の情勢不安定により、日本国内へのヘリウム輸入量が大幅に減少しています。価格がここ数年で4倍に上がりました。ヘリウム風船をほとんど見なくなりました。 輸入価格で1g 2円から8円になっています。1モルは4gなので、32円ということですね…

ヒンデンブルク号の爆発

久しぶりに事故の分析です。講義で水素分子の回転ラマンを使って量子統計(フェルミオンとボゾン)を説明しました。雑談用に、ヒンデンブルク号の爆発について調べたところ、wikipediaは動画付きでした。web講義でリンクのみ示しましたが、見た学生には衝撃があったようです(感想から)。 https://en.wikipedia.org/wiki/Hindenburg_disaster_newsreel_footage 最近の説として: ・Alの船体にAlと酸化鉄を混ぜた塗料を使っていて、静電気による火花(static spark)でテルミット反応が起きたという説(焼夷性塗装仮説 incendiary…

硝酸アンモニウム

レバノンの爆発はたいへんですね。早い回復を願ってやみません。 さて、NH4NO3 (ammonium nitrate)の熱分解については150報以上の論文が でています。J. Energetic Materials 31,1-26(2013)がレビュー論文です。 200℃以下では、NH4NO3→NH3(g)+HNO3(g) endothermicなので簡単には爆発しない。 200℃以上で、さまざまな発熱反応がおこります。  NH4NO3→N2O+2H2O など、当然ラジカルも発生するのでいろいろな 反応がおこり、 N2O, N2, NO2,H2Oなどが主要成分として検出されているそうです。 肥…