孫子 彼を知り己を知れば、百戦してあやうからず

今週の孫子は、第3章 謀攻篇(Attack by stratagem) から有名な言葉「彼を知り己を知れば、百戦してあやうからず」です。箇条書きにすることで文章にリズムと力が出ているのがわかると思います(私が言う「ピリッとしている文章」)。これは言語にかかわらず使える文章法です。 「故知勝有五。知可以戦与不可以戦者勝。識衆寡之用者勝。上下同欲者勝。以虞待不虞者勝。将能而君不御者勝。此五者知勝之道也。  故曰、知彼知己者、百戦不殆。不知彼而知己、一勝一負。不知彼不知己、毎戦必殆。」 17.Thus we may know that there are five essentials for vi…

孫子 百戦百勝は善の善なるものに非ず

今週の孫子は、第3章 謀攻篇(Attack by stratagem) から有名な言葉「百戦百勝は善の善なるものに非ざるなり」です。目的は敵の支配であって敵を破壊することではない、それならば戦わないで目的を達成できるほうがよいではないか、という主張です。その通りですね。 「1.孫子曰、凡用兵之法、全一国為上、破国次之。全軍為上、破軍次之。全旅為上、破旅次之。全卒為上、破卒次之。全伍為上、破伍次之。2.是故百戦百勝、非善之善者也。不戦而屈人之兵、善之善者也。故上兵伐謀。其次伐交。其次伐兵。其下攻城。攻城之法、為不得已。・・・ 6.故善用兵者、屈人之兵、而非戦也。拔人之城、而非攻也。毁人之国、而非…

孫子 専門家の暴走はいけません

今週の孫子は、第10章 地形篇(terrain)からです。今日は孫子の主張に反対です。「自分の専門知識による結論と反していれば、上の命令を聞かなくてもよい」、と書いてあります。160年前の維新の志士たちは孫子を読んでいたはずで、この辺も参考にしていたのではないかと思います。しかし、90年前から15年続いた日本の大失敗の原因の一つもこれです。いくら動機が正しいと思っても、個人として潔くても、専門家の暴走はいけません。専門家は、自分が視野が狭いことを意識する必要があります。最近は「結果責任」という言葉をよく目にするようになりました。手順を踏んだ上で決定し、その決定者にも責任を課すならば、良いことだ…

孫子 怒りの感情

今週の孫子は、第12章 火攻篇からです。怒りの感情に任せて戦うと取り返しがつかないことになる、と言っています。 怒りの制御法についてはセネカ(Lucius Annaeus Seneca;BC1-AD65)をはじめ多くの哲学者が取り上げています。 https://eigomeigen.com/anger.php 最近の本では「ヤクザ式 相手を制す最強の「怒り方」 (光文社新書) 」向谷匡史著 が面白いと思いました。怒りを抑えつけるのではなく、頭を使って溜飲を下げながら自分の利益に結び付ける方法が解説されています。親しい間でやると角がたちますが、ビジネスの交渉では有効かもしれません。 「主不可以怒…

孫子 humint ヒューミント

今週の孫子は、13章用間篇(The use of spies)からです。人から情報をとることの重要性を説いています。現代で言う、情報機関におけるhumint (ヒューミント、human+intelligence)ですね。これまではhumintが重要とされてきましたが、ポストコロナの時代にどうなるかは興味深いです。 「故明君賢将、所以動而勝人、成功出於衆者、先知也。 先知者不可取於鬼神、不可象於事、不可駿於度。必取於人、知敵之情者也。」 Thus, what enables the wise sovereign and the good general to strike and conquer…

孫子 呉越同舟

今週の孫子は、第11章「九地篇」(The Nine Situations)から、「呉越同舟」です。 「29 故善用兵者、譬如率然。 率然者、常山之蛇也。撃其首則尾至、撃其尾則首至、 撃其中則首尾(にんべんに具、「ともに」)至。30 敢問、兵可使如率然乎。曰、可。 夫呉人与越人相悪也、当其同舟而済遇風、其相救也、 如左右手。31 是故方馬埋輪、未足恃也。32 斉勇若一、政之道也。33 剛柔皆得、地之理也。 34 故善用兵者、携手若使一人。 不得已也。」 常山にいる「卒然」という大蛇が一部を攻撃されると他の部分で逆襲するように、部下を一体として動かすにはどうするか。敵同士の呉と越の人が嵐の舟の中で…

孫子 風林火山

今週の孫子は、7章 軍争篇(Maneuvering)からです。「15 故兵以詐立、以利動、16 以分合為変者也。17 故其疾如風、其徐如林、18 侵掠如火、不動如山、19 難知如陰、動如雷霆。20 掠郷分衆、廓地分利、21 懸権而動。22 先知迂直之計者勝。此軍争之法也。」 17と18が武田信玄の旗「風林火山」です。 https://www.city.kofu.yamanashi.jp/senior/kamejii/035.html 個人的には19に憧れます。 15. In war, practice dissimulation, and you will succeed. 16. Wheth…

孫子 「奇」

今週の孫子は、5章 兵勢篇(Energy)からです。「三軍之架、可使必受敵而無敗者、奇正是也。 兵之所加、如以(石段)投卵者、虚実是也。凡戦者、以正合、以奇勝。故善出奇者、無窮如天地、不(立と掲のつくり)如江河。終而復始、日月是也。死而復生、四時是也。」 型にはまった正攻法だけではダメで、臨機の応用(「奇」indirect tacticsと訳してありますが、ちょっと違う感じですね)が必要であるという主張です。長州藩の「奇兵隊」の「奇」の基になった考え方だと言われています。 To ensure that your whole host may withstand the brunt of the…

孫子 窮鼠には逃げ道を

今週の孫子は、7章 軍争篇(Maneuvering)からです。「孫子曰、凡用兵之法、a 高陵勿向、b 背丘勿逆、c 佯北勿從、d 鋭卒勿攻、e 餌兵勿食、f 帰師勿遇、g 囲師勿周、h 窮寇勿迫、i 絶地勿留」1972年に紀元前の古い本が発掘されたためか、英語版と日本語(漢文)版に異同があります。解説本によく書いてあるのは、「g 敵を包囲するときは逃げ道を作っておかないといけない、h 窮地に追い込んだ敵をすぐに攻撃してはならない」です。理由はわかりますね?「窮鼠猫を咬む(きゅうそねこをかむ)」を避けるためです「(師」は軍隊:例 諸葛孔明の出師表、「北」は逃げるです) 34 (c) Do not…

孫子 拙速

今週の孫子は、2章 作戦篇(Waging War)からです。「6 ゆえに兵は拙速を聞くも、いまだ巧の久しきをみざるなり。 故兵聞拙速、未(目者)巧久也」。論文は速く書いて投稿しないといけないということです! 下記、長いですが、戦争が長引くと国が疲弊するから、と言っています。なんでも同じではないでしょうか。学生の頃、「麻雀と同じで、良い手を待ちすぎると先を越される」と言われました。一般性がある話だと思います。 There is no instance of a country having benefited from prolonged warfare. 7. It is only one w…