ヒスタミン受容体には4種類ある

昨日出てきた好酸球(eosinophil)に関する最近の(10年前ですが)レビューは下記です。Fig.2を見るといかに多くの過程が絡み合っているかがわかります。 https://www.nature.com/articles/nri3341 血液中に放出される様々な伝達物質がかかわっています。例えば小型のたんぱく質である「ケモカイン」は50種類以上あります。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B1%E3%83%A2%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%B3 花粉症の薬でアレグラにはお世話になっていますが、これはヒスタミン受容体に結合してブロッ…

ヒスタミンと好酸球

アレルギー関係でよく知られている低分子はヒスタミン(C5H9N3)でしょう。これはI型アレルギーで登場する即効性の物質で、蕁麻疹(じんましん)、かゆみ、血管透過性の亢進(鼻水)、平滑筋収縮(気道でおこると喘息、腸で起こると腹痛・下痢)などを誘発します。 https://en.wikipedia.org/wiki/Histamine ヒスタミンは抗原が体内に侵入した時にリンパ球の一種であるB細胞が分化した形質細胞からつくられるIgE(免疫グロブリンE)が抗原を伴って組織中のマスト細胞や血液中の好塩基球に結合した時に放出されます。同時に他の信号伝達物質も放出され、さまざまなアレルギー反応を誘発しま…

アレルギーには4種類ある

免疫の教科書でおすすめは、「休み時間の免疫学」斎藤紀先著・講談社です。定期的に情報が更新されていて、現在2018年の第3版です。 厚生労働省の下記解説もわかりやすい読み物です(pdf注意) https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-17.pdf アレルギー反応には4種類あります(GellとCoombsによる(1963年))。 I型 即時型アレルギー、アナフィラキシー型:抗原が来た直後の一連の反応とそれ以降の遅延型反応 II型 細胞障害型:免疫反応で生じた不要な抗体が免疫反応を誘発して細胞が障害される I…

世界の研究所:World Allergy Organizaiton 世界アレルギー機構

先日、古い木材の近くで長時間過ごしていたら呼吸器のアレルギー反応が起きました。検索してみたところ、過敏性肺(臓)炎という病気があることを知りました。これは、古い木材に生えるカビ(trichosporonという白カビ(というより糸状になる酵母?)、目にはあまり見えないようです)の胞子(無性生殖で、分節型分生子というようですが、英語版はsporeと書いています)に対するアレルギーだそうで、多くの患者さんがいるそうです(干し草の菌や鳥の糞に反応する場合もある)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%88%E3%83%AA%E3%82%B3%E3%82%B9%E3…

The Door into Summer (12) 大団円

金曜日の「夏への扉」は11章・12章で大団円となります。31年間冷凍睡眠で過ごした後、タイムマシンで31年前に戻ってから親しい少女リッキーを探して10年後に冷凍睡眠に入るように促します(「そうしたらお嫁さんにしてくれる?」「もちろん」)。それから31年後の2001年に体験した状況(ライバル社のロボットが市場を制覇しており、その特許は自分の名前で登録されている)になるようにロボットの改良、特許取得、ライバル会社設立などを大車輪で行った後、冷凍睡眠に入ります。ここで主人公が2人、同時に冷凍睡眠に入っているはずです。冷凍睡眠から覚めた後、1人はタイムマシンで過去に戻り、もう一人はリッキーの冷凍睡眠の…

強弾性は合金と有機低分子結晶で見つかっている

超弾性(擬弾性)や形状記憶効果は、応力や温度によって結晶構造が不連続的にスイッチする場合に起こる現象で、まとめて「強弾性 ferroelasticity」と呼ばれます。「強 ferro」は強磁性や強誘電性と同じく、温度・圧力等に応じて自発的に対称性の変化が起こることを意味しています(ちなみに、中国語ではferroは鉄と訳すので、この言葉は「鉄弾性」になると思います)。金属結合は比較的等方的なので結晶構造に切り替え可能な多様性が生じやすいですが、共有結合は化学結合の方向性があるので強弾性向きではありません。分子結晶の分子間に働く分子間相互作用は、その複雑さとファンデルワールス力に方向依存性が少な…

超弾性(擬弾性)は金属結合の微妙なバランスで生じる

強弾性(擬弾性)合金は、形状記憶合金と密接な関係があります。 金属の結晶構造には面心立方、体心立方、六方最密などいろいろなものがありますが、どの構造になるかは、金属の自由電子が作る平面波と原子核の正電荷の周期性の微妙なバランスで決まります。これを利用して、温度変化や外部から変形させようとする力で結晶構造が相転移する合金を作ることができます。外部からの力(「応力(おうりょく)」と言います)によって各面のなす角が90°の結晶からそうでない結晶に相転移する合金があったとすると、応力に対応して結晶面の角度が変わって大きく変形しますが、応力がなくなると90°にもどるのでもとに戻ります。wikipedia…

超弾性(擬弾性)

金属線を曲げるところを考えましょう。ゆるく、すこしだけ曲げると元に戻りますが、急角度で大きく曲げるとまがったまま元に戻らなくなります。元に戻らる場合を弾性変形、もとに戻らない場合を塑性変形と言います。弾性変形の範囲(弾性限界)を超えると塑性変形が起こると考えることができます。超弾性(擬弾性)とは、ある種の物質を大変形しても塑性変形が起こらず、もとに戻る現象です。通常の弾性は、弾性限界まではフックの法則で変形に比例した力が働きますが、超弾性はフックの法則から外れます(大変形の場合、力は緩やかにしか増えない)。仕組みは原子レベルですが、説明は明日にして、先に応用を見ていきます。いちばんよく見る例は…

世界の研究所 スウェーデン 王立技術大学 KTH

先週、大学の仕事が終わった後で真空中の駆動機構を作っていて、非磁性の良いバネが必要になりました。そういえば、超弾性合金を演示実験用にもっていたな、と思い出してバーナーで熱処理しながらコイルに巻いてみたところ、素晴らしいものができました。うれしかったので、今週は「超弾性(擬弾性)合金」について解説しましょう。世界の研究所は、1932年に超弾性現象が発見された(が、数十年埋もれていた)、スウェーデンのKTH(王立技術大学、Royal Insititute of Technology、スウェーデン語で Kungliga Tekniska högskolan)を取り上げます。 https://www.…

The Door into Summer (11) 第10章

金曜日は「夏への扉」を読んでいます。今週は10章です。タイムマシンが作動して主人公は31年前の1970年に移動します。少し高い空中に出現し、1970年の地表まで落下します。研究所の建物ができていないためです。タイムマシンSFでは出る場所を制御できるかどうかにいろいろなパターンがありますが、「夏への扉」は地球上の同じ位置に出現する設定です。出現したのが弁護士夫妻の目の前で、この弁護士夫妻が助けになってくれます。話が目まぐるしく進行し、汎用ロボットの開発、自動製図機の発明などを行い、最初に設立した会社のライバルとなる会社を設立します。これは2001年の世界で見た状況を再現するべく行動していることに…