ドン・キホーテ(12) さようならドン・キホーテ

金曜日のドン・キホーテは今回で終わります。大学を卒業したばかりの村の若者で司祭候補生のサンソン・カラスコ扮する銀月の騎士に倒されたドン・キホーテは、サンチョ・パンサと村に戻ります。途中で贋作のドン・キホーテ第2部に出てくる紳士と出会い、話をした結果、紳士はこちらが本物であちらが偽物であることを納得し、居合わせた公証人に証書を作ってもらいます。ドン・キホーテは村に到着し、自宅で眠りについたあと、高熱を発します。六日間患って、医者は心痛の為であり、命が危ないと診断します。その後深い眠りから覚めると、正気に戻っていました。 騎士道物語を本当のことだと信じてさまよっていたのは誤りだった、間もなく死ぬか…

ドン・キホーテ(11) 放浪の羊飼いになろう

ドン・キホーテの物語も終盤に差し掛かります。バラタリア島(村)の総督となったサンチョパンサは公爵の命令で配下が仕掛ける様々ないたずらに悩まされます。総督付きの医者は体に悪いものを食べてはいけない、と満足に食事をさせません。 さらにある夜、「敵襲」との想定でサンチョパンサを叩き起こし、円形の大きい盾2枚の間に挟み込んでぐるぐる巻きにしてしまってから、灯火を消して暗闇の中でさんざんぶちのめします。朝になり敵襲は撃退された、との報告を受けたサンチョパンサは辞任を申し出ます。就任10日目のことです。その後、公爵に辞任報告に行く途中で深い穴に落ちて偶然通りかかったドン・キホーテに救助されます。 追放令に…

ドン・キホーテ(10) Barataria島の太守サンチョ・パンサの活躍

今週のドン・キホーテは、Barataria島の太守サンチョ・パンサの活躍です。相変わらず変なことわざを連発しながら会話しますが、うがったものもあり楽しめます。就任テストのような3つの裁判、それから裁判官が匙をなげたものを1つさばきます。 (1)二人の老人が金貨十枚の貸し借りで争っています。裁判で、サンチョ・パンサの前で貸したほうは返してもらっていない、という主張、借りたほうは、ここで返したという主張を神に誓うから、借りたほうに杖を持っていてくれと言います。宣誓を聞いてサンチョ・パンサは借りたほうの主張を認めますが、最後に杖を調べよ、と命じます。すると金貨10枚は杖の中に入っていました。誓ってい…

ドン・キホーテ(9) ドン・キホーテがサンチョ・パンサに与えた訓戒

今週のドン・キホーテ: 公爵夫妻は家来と一緒に演劇仕立ての物語を作ってドン・キホーテとサンチョパンサに冒険をさせます。昼夜に渡って何十人もがかかわり、魔法使い、悪魔、空飛ぶ木馬を持った野蛮人の集団、呪いでひげが生えた侍女などが登場します。二人は目隠しをして木馬に載せられ、ふいごであおがれて空を飛んでいる気分になっている最中に仕掛けられた爆竹が爆発して冒険劇が終わります。すべては勇敢な遍歴の騎士とその部下の活躍で解決した、という手紙が降ってきます。 「それは公爵と夫人に、一生の間の笑い種を与え、サンチョには、長生きしても生涯話すべき内容を与えた」とあります。面白いですが、人が悪いですね。公爵は部…

ドン・キホーテ(8) サンチョ・パンサは島をもらえるか?

ドン・キホーテ後編は、前編を愛読している公爵夫妻が登場してクライマックスを迎えます。二人は城に招かれ、香水や赤いじゅうたんで迎えられ、食卓につきます。ドン・キホーテが上座に招かれたことに対してサンチョ・パンサが長い物語で当てこすりをして、ドン・キホーテは顔色をいろいろに変えて焦って怒って、公爵夫妻は笑いをこらえるのに必死です。 また、同席していた僧侶に「遍歴の騎士などは物語の中だけのものなので、馬鹿なことはやめて家に帰りなさい」と言われて危うく喧嘩になりそうになります。 そのやり取りの中で、公爵がサンチョ・パンサに「ドン・キホーテ殿の名によって島の総督役を授けましょう」という提案をします。僧侶…

ドン・キホーテ(7) 公爵夫人と出くわす

ドン・キホーテは当てのない旅をしています。旅をする物語はエピソードを好きなように配列できるメリットがあり、水戸黄門の時代劇のように無限に続けることも、フリーレンの漫画のように緊密に構成することもできます。 後編では、ライオンとの冒険、富農の家での歓待、貧乏な羊飼いが策略で幼馴染と結婚する話、深い竪穴の洞窟に命綱をつけながら降りて幻覚を見る話、詐欺師の人形遣いの話、漁師の小舟に勝手に乗って水車に突っ込みそうになる話、ロバの鳴き真似をめぐり村同士が争う話(ドン・キホーテが仲裁しようとするが追い払われる)など、細部に味はありますが脈絡がない話が続きます。 その後、鷹狩をしている公爵夫人と出くわすこと…

ドン・キホーテ(6) サンチョ・パンサが賢くなっていく

今週のドン・キホーテは、後編のあらすじをたどっていきましょう。前編はドン・キホーテの狂気ぶりが強調されていて読むのが気の毒になるくらいひどい目にあいますが、後編は安心して読めます。作家の円熟のなせる技でしょうか。 出発後、想い姫ドルシネアの村に行き、サンチョ・パンサに姫の館を探すように言いますが、見つからないので通りすがりの田舎娘が想い姫の魔法にかかった姿だ、といってドン・キホーテをだまします。その後、旅芸人の馬車と遭遇し、道化にからかわれて戦いを挑みますが芸人たちが石つぶてを持って待ち構える中、サンチョ・パンサに説得されて戦いを辞めて踵を返します。その後、「鏡の騎士」と遭遇して負けたほうが言…

ドン・キホーテ(5) 周囲の人と友人たち

今週のドン・キホーテは、ドン・キホーテが発狂前に親しくしていた人たちについて見ていきましょう。家政婦と姪と一緒に住んでいたようで、傷ついて帰ってくるとまた一緒に暮らします。親しい友人としては、司祭(ペーロ・ペレス学士)、村の理髪師(ニコラス親方)がいます。ドン・キホーテは、騎士道物語を昼夜なく読みふけり、睡眠もとらなくなってから発狂したという話になっています。 先日紹介した高圧超伝導の研究不正で騒ぎを起こした人も夜中の2時や明け方の4時に学生にメールをしていたそうなので、睡眠不足は要注意ですね。自戒しましょう。本文では騎士道物語の姫や騎士の話が出るとドン・キホーテは膨大な知識を披露します。暗記…

ドン・キホーテ(4) 悲恋とハッピーエンド

大学受験の現代国語の点数を上げるには、色々な文章を短時間でいろいろな長さに要約して、慣れている人に採点してもらうのが効果的です。論理的思考力を鍛えるのにも役立ちます。物事の優先順位を決める能力の養成にも役立つような気がしますが、自分を振り返ってみるとそうでもないようです。 金曜日のドン・キホーテですが、毎週、どこを取り上げるか悩みます。要約すると全然面白くなくなってしまうためです。同時代人のシェークスピアは悲劇の名手ですが、セルバンテスは、少なくともドン・キホーテでは各エピソードでハラハラしますがほぼハッピーエンドでまとまるので安心して読めます。売れた理由ではないでしょうか。 前編ではドン・キ…

ドン・キホーテ(3) サンチョ・パンサの人となり

金曜日の「ドン・キホーテ」、今週はサンチョ・パンサについて。この人はほとんど勉強をしたことがなく、「島の太守にしてやる」というドン・キホーテの口車に乗って何か月単位で一緒に旅をしています。数日で村に戻れるようですから、旅の範囲はそう広くありません。ドン・キホーテがいろいろなトラブルを起こして殴られたり羊の群れに突撃して羊飼いから石を投げられたりしたときにに助けにいって巻き添えになる役回りです。食べ物をロバに載せているので二人の食物はそれが頼りですが、ときどき宿代の代わりに奪われたり無くしたりして苦労します。 以下のセリフで人となりがわかるでしょう。 二人で野原の中で夜を明かすときに水音と繰り返…