水素水を使ったChemosynthsisのエネルギー収支

Chemosynthesisの最近の研究は下記にまとまっていますが、購読しないと読めません。 https://www.cell.com/trends/microbiology/fulltext/S0966-842X(23)00332-3 いろいろなエネルギー源を利用する微生物が見つかっています。 NH3 (redox potential +340mV), NO2-(+420mV), S2-(-220mV),S2O3^2-(+225mV), H2(-414mV), CO(-520mV), CH4(+170mV), Fe2+(+770mV) などです。それぞれを利用する酵素が見つかっており、名前が…

Chemosynthesis

アリューシャン海溝の底の水深10000mで見つかった生物たちは”chemosynthesis”でエネルギーを得ているとのことです。 どういうものか、については米国国立海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric Association)が解説をwebに載せています(pdf)。 https://oceanexplorer.noaa.gov/edu/materials/chemosynthesis-fact-sheet.pdf それによると、海底の熱水噴出孔(hydrothermal vents)か冷水湧出域(cold seeps)に存在する…

アミロペクチンの合成経路

アミロースとアミロペクチンの生合成経路がどこまでわかっているか調べました。 https://photosyn.jp/pwiki/?%E3%83%87%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%90%88%E6%88%90%E3%81%A8%E5%88%86%E8%A7%A3 https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=1141 複数ある別々の役割を持つ酵素は同定されています。また、「アミロペクチンの側鎖は左巻き二重らせん構造(1~10 nmのスケール)を形成し,澱粉分子は細胞のサイズにも匹敵する澱粉粒(1~10…

イネ科植物のウルチとモチ

イネ科穀物(米、麦、粟、稗、黍、トウモロコシなど)にはウルチとモチがあります。ウルチは枝分かれの少ないでんぷん(アミロース)が主成分~半分くらいで、モチはアミロースがほとんどなく枝分かれの多いアミロペクチンが主成分の場合です。関連遺伝子は特定されていて、waxy(ワクシー、waxのようにつやがある、の意)遺伝子と呼ばれています。waxyが働いているとウルチになり、変異があり正常に働いていないとモチになります。 植物は基本的な遺伝子が複数集積した「倍数体」をとるものが多くあり、コメは2倍体/4倍体、小麦は2,4,6倍体、トウモロコシは通常2倍体でまれに4倍体だそうです。倍数体の場合は変異の割合に…

雑穀の英語は なんとか millet。キビダンゴはインド料理にもある

昨日紹介した論文は英語で、「キビ 黍」と訳した英語はmilletです。他の雑穀(アワ 粟、ヒエ 稗)の英語を調べたらすべてmilletがつくことがわかりました。英語ではあまり区別しないようですね。どれも乾燥地帯 arid areas で作れる穀物で、2か月以内に収穫できる特色があります。すべてイネ科です。 キビ white millet / hog millet / Proso millet; hogは大人の豚。 Prosoはロシア語でキビを指す。 アワ foxtail millet 穂がキツネの尾のようにふさふさしている。 ヒエ finger millet 穂が指のように分かれている。 どれ…

世界の研究所:Univ. Cambridge, McDonald Institute for Archaeological Research

お米は店頭に戻ってきたようでやや安心ですが、未来の炭水化物の摂取を考えると、たくさんある穀物の地理的分布やそれぞれの特色が気になります。先週、英国の大学(Univ. YorkとUniv. Cambridge, McDonald Institute for Archaeological Research)が日本の縄文土器・弥生式土器の穀物の痕跡を解析して、コメとキビが大陸からほぼ同時に入ってきたが、キビは定着せず、調理の内容としてはそれ以前の漁撈・採集社会からの変革もほとんど起こらなかった、という論文を出しています。 https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2…

DNA origami で1μmのニコニコマークを量産できる

DNA origami が最初に報告された論文は下記です。 https://www.nature.com/articles/nature04586 origamiというのは日本語のおりがみから来ています。 図2はAFM(原子間力顕微鏡)像ですが、直径1μmのニコニコマークが多数ばらまかれている映像(Fig.2e)は衝撃的でした。 https://www.nature.com/articles/nature04586/figures/2 先行研究があって、もっと短いDNAを使って組み合わさる辺を作って八面体を作ったというのが2004年に出ています。 https://www.nature.com/…

世界の研究所:Caltech Chen NeuroScience Research Center, USA

ゴールデンウィークなので少し休みがちになります。今週と来週を使って、まだとりあげたことがなかったDNA origamiの話をしましょう。 先週出版された論文で、すい臓がんの細胞をDNA origami複合体で光らせて検出する方法を開発したというのがありました。 https://advanced.onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202410278 がん細胞は外科治療の場合には残さず切除する必要があり、飛び地を見落とさないように、手術中にがん細胞だけ光って見えるようにする方法がいろいろ開発されています。そこにDNA origamiを使うという話です…

硫酸ストロンチウムの殻を持つ放散虫については何もわかっていない

珪藻(diatom)は藻類(algae)の一種で植物でしたが、同様に微小な海洋プランクトンでシリカの殻をもつものがあります。放散虫(radiolaria)です。これは単細胞の動物プランクトンです。大きさは10μm~1mmで800種類が知られているそうです。 https://www.aist.go.jp/aist_j/magazine/bb0019.html 寿命も餌もわかっていないが海にはたくさんいる、というのが面白いですね。 放散虫が海洋底に降り積もってできた岩がチャート (chert)です。チャートは石英質の硬い堆積岩(sedimentary rock)ですが、この中からフッ酸処理や水酸化…

珪藻は通常の植物と違う代謝系をもつ:高効率の光合成、シリコンの輸送

珪藻は20万種類いて、海洋中のCO2固定の半分を行っているそうです。地上の植物と比較して光合成の効率がよいためその仕組みは活発な研究対象です。地上植物の葉緑体とは別の構造をもっていること、海水中の低濃度のCO2をHCO3-として濃縮しイオンポンプで輸送してから炭酸固定酵素Rubiscoの直前でCO2に戻すなど、いろいろヒントになりそうな仕組みを備えています。 https://sci-tech.ksc.kwansei.ac.jp/~matsuda/Research.html Rubisco(ルビスコ)はMgを活性中心に含んでおり、光合成に必須なタンパク質で、高等植物も含め、種の間でほとんど変異が…