Also Sprach Zarathustra(8)噛め!噛むんだ!頭を噛み切るんだ!

金曜日のZarathustraの今週は、前回紹介した部分の直後で第3部で最も印象的な場面です。自分の運命から逃れられないことを意味する「永劫回帰」を納得できずに苦しむZarathustraは幻覚を見ます。 Where was now the dwarf? And the gateway? And the spider? And all the whispering? Had I dreamt? Had I awakened? ‘Twixt rugged rocks did I suddenly stand alone, dreary in the dreariest moonlight. BU…

トナーの攪拌には磁性体の粉が使われている

コピー機やレーザープリンターと言えば、トナーが必須です。トナーのなかみは、下記サイトがわかりやすいです。 https://www.ricoh.co.jp/pps/support/techinfo/laser_dousa1_jp.html 帯電がプラスとマイナスの物質があるのが面白いです。感光ドラムも+チャージ用(セレン)と―チャージ用(有機)になっているそうです。また、トナーに酸化鉄(マグネタイト)微粒子を加えたものをディベロッパーというそうです。磁石を回転させて攪拌しているそうで、developer(現像機)という名前から考えて、酸化鉄微粒子は回収再利用されるのではないかと思います。 この特…

電子写真(コピーとレーザープリンター)の感光ドラムの半導体

コピー機やレーザープリンターの感光ドラムに使う半導体はいろいろあります。有機半導体は異なる分子を混合することによって光励起できる深いトラップを作れるので理想的です。ほかの半導体で金属ドラムの上に成膜できるものというとかなり限られます。また、光伝導性や帯電性の制御が有機物よりも難しいと思います。セレンは古くからこの目的に使われてきましたが、毒性と摩耗性に弱みがあります。 アモルファスシリコンはセレンや有機物よりも硬いので長寿命ですが、トラップの制御がかなり難しいと思われます。 シリコンのダングリングボンド(dangling bond, 他の原子とつながっていない結合手)がトラップを作りますが、そ…

コピー機の感光ドラムには半導体が塗ってある

コピー機やレーザープリンターには「トナー」と「ドラム」があるのは聞いたことがあると思います。「トナー」は、固形インクの粉ですね。これについては後で見ることにして、「ドラム」は半導体が塗ってある金属の円筒です。下記サイトがわかりやすいです。 https://www.hodogaya.co.jp/english/products/segment01/electronic/ OPC = organic photo conductor 有機光伝導体 で、微結晶の金属フタロシアニンなどを塗ってあるものが多いと昔聞きました。最初期はセレン、長寿命をうたうアモルファスシリコンのものもあります。 chargi…

世界の研究所 xerox Webster Research Center

今週来週の2週間でアモルファス半導体の応用について紹介しようと思います。広く応用されているのはコピー機などの感光ドラムですが、今週はその発展形のレーザープリンターも調べてみましょう。月曜の世界の研究所は、レーザープリンターが発明されたxerox Webster Research Center(ゼロックス、米国ニューヨーク州ウェブスター)にします。 https://xeroxnostalgia.com/2020/04/06/xerox-webster-campus/ 普通紙の複写機を発明したのは、米国のChester F. Carlson(1906-1968)で、光伝導という現象をコピーに使えな…

Also Sprach Zarathustra(7)永劫回帰の時代背景

金曜日のZarathustra、今週は「永劫回帰」の時代背景を説明します。19世紀後半になって、熱力学第二法則(エントロピー増大則)の仕組みを解明しようとする研究が盛んになりました。S=k log Wで微視的状態数WとエントロピーSを結び付け(1877)、H定理(1872)とあわせてこの問題をほとんど解決に導いたのがボルツマン(L.E.Boltzmann)です。一方、天体運動のような少数の物体が関与する系では単純な微分方程式である運動方程式で運動の時間変化を追いかけられることがわかっていました。エネルギーは保存するため、微分方程式で書ける運動は止まることがなく、同じ状態を繰り返すのではないか?…

リスコフの置換原則は上司と部下ではなくて祖先と子孫

私は教師として「たとえ話」を工夫する努力を続けています。ただ、うまい対応関係がない場合もあり、たとえ話だけでは誤解を招くこともあるので注意が必要です。その一つの例が昨日のSOLID原則の”L”, すなわち「リスコフの置換原則」にあります。たとえ話では、「上司は部下を置換できなければならない」でした。ソフトウェア工学の言葉で”superclass” と “subclass”というのがあり、このたとえ話では、superclass が上司(supervisor)で、subclassが部下(subordinate)に対応しそうです…

SOLID原則:たとえによる説明

ソフトウェア設計の原則には、リスコフの置換原則のほかに4つあり、まとめてSOLID原則と呼ばれています。 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02319/010500002/   わかりやすいですが途中から有料。 https://www.membersedge.co.jp/blog/typescript-solid-single-responsibility-principle/  およびそのリンクは無料。 S 単一責任の原則 Single responsibility principle O 開放閉鎖の原則 Open/closed prin…

リスコフの置換原則

リスコフの置換原則は、クラスと継承にかかわるものです。クラスは、使いまわせるひな形のようなもので、大規模なプログラムを多くの人で作る時に有用です。100行以下の短いプログラムでは、クラスを使わないほうが文字数を減らせるので、短い使い捨てのプログラムを書いているときはありがたみがわかりません。 最近、下記の本を読んでいて(javaで説明。初級を脱したい人にはおすすめです) www.amazon.co.jp/dp/4297127830/ クラスやインターフェースのありがたみがようやくわかるようになってきました。例えば、似ているが少し違うことをやりたいときの分岐をクラスを使って自動的に行う、という機…

世界の研究所 Mitre Corporation

私のソフトウェア工学の勉強は週末に時間を見つけて頑張っていますが、だいぶつながりが見えてくるようになりました。どの分野でも同じだと思いますが、有用な概念には名前(符牒 ふちょう)をつけて一言でコミュニケーションをとれるようにしていますね。ソフトウェア工学で人名がついている概念は化学の「人名反応 name reactions」ほどは多くないですが、今週はその一つである「リスコフの置換原則」の周辺を解説したいと思います。月曜日の世界の研究所は このBarbara Liskov教授(1939-, 現MIT)が若い時に在籍していた 米国の非営利法人Mitre Corporation (マイター と読む…