ウランガラス、ラジウムガール

ウランは地殻中の存在順位が元素中で53位で、4ppmもあるそうです。白金族(Pt, Ir, Os)は0.001~0.01ppmしかないそうなので、ずっと豊富です。 http://www.aesj.or.jp/~recycle/nfctxt/nfctxt_2-1.pdf ウラン鉱石も高純度のものがあり、閃ウラン鉱(ピッチブレンド、UO2)など多数あります。日本の人形峠で発見された「人形石(にんぎょうせき)」((U,Ca,Ce)2(PO4)2・1~2H2O)という鉱石もあります。そのためか、古くからガラスに1%程度入れて熱膨張率を調節したり黄色い色を付けたりするのに使われました。紫外線が使えるよう…

魔術師マーリン

マーリン(Merlin)の解説をします。Wikipedia によると12世紀の偽史に登場する実在しない魔術師のようですが、AIの商品名や会社名などとしてよく使われます。ハリー・ポッターでは「マーリン勲章」というのが出てきます。チューダー朝初代のヘンリー7世(1457-1509)が自分がマーリンの予言に出てくるとして新王朝の正当化に使ったため広まったと言われています。モデルはいるそうです。偽史の作者が伝説に残るローマ系ブリトン人の将軍(437ADごろ戦って生き残った)とウェールズの隠者(540AD頃出生)を組み合わせて創作したということです。 マーリンの魔術としては予言が主のようです。未来から過…

ベルリンの大学病院機構 Charité(シャリテ)

小石川養生所(1722年)と同時期に設立された慈善病院としてはドイツ(プロイセン)のCharité(シャリテ)があります。これはペスト流行が国内に侵入することを予期して隔離のため1710年にフレデリック1世によってベルリンに造られました。ペストが終結した後は慈善病院になったそうです(名前がCharitéなのはそのためでしょう)。ベルリン医科大学の附属病院となり、ノーベル賞を11人出しているそうです。この数字は情報源によって揺らいでいます(wikipedia 57人(?!)、40人、同大学の分子医学科のページでは8人)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%…

世界の研究所:Werner Heisenberg Institute (Max Plank Societyの物理学研究所の別名)

今年は Werner Heisenberg が「行列力学」(シュレディンガー方程式と同等)を発明した1925年から100周年なので、雑誌でいくつか特集が組まれています。来年のシュレディンガー方程式100周年のほうが派手なイベントがあるかもしれません。量子力学の正しい計算法がわかったという意味では重要で、国連は今年を量子技術の記念の年にしているようです。今週は、American Institute of Physicsの100周年特集号から話題を拾っていこうと思います。 研究所としてはWerner Heisenbergが正式名称の研究所はないですが、ドイツの国立研究所であるMax Plank S…

Why Nations Fail (9):第9章~第12章+チャーチル+ヨーゼフ2世

金曜日の読書 Why Nations Fail は飽きてきたのと、次に読みたい本が見つかったので飛ばしながら行きましょう。歴史を顧みると為政者が善人とは限らないという「性悪説」に立つほうがよく、何もしないでいると「寡頭制の鉄則」で発展しない停滞した制度に落ち込み維持される確率が高いです。そのために民主主義が「最も悪が少ない」制度として存在している、というのがチャーチル(W. Churchill)の警句でした。 さて、9章~12章です。9章はヨーロッパの植民地主義がもたらした貧困、10章はイギリス以外で発展した地域がどういうしくみで発展したのか、11章は民主制度がもたらす好循環を説明しています。…

Hamiltonの主関数と制御理論:Bellman方程式は「7つの習慣」と見た目が同じことを言っています

Bellman方程式を連続時間にしたものは、Hamilton-Jacobi-Bellman方程式と言い、解析力学のHamilton-Jacobi方程式の拡張になっています。 その背後にある理由を調べていたら、下記を見つけました(pdf注意)。この分野を理解したい人は一読をお勧めします。 https://www.jstage.jst.go.jp/article/butsuri1946/41/3/41_3_227/_pdf/-char/ja 実は、この著者の先生には習ったことがあります。私が大学2年生か3年生で受けた講義で本来の先生が長期出張のためこの著者が代講で来られて何回か講義を受けました。こ…

マイクロRNAの発見に至る経緯:実験系をうまく選ぶことは重要である

今週のmiRNAの発見者たちは一時期同じ研究室にいました。線虫を分子生物学の素材に使って成果を上げたProf. Robert Horvitzの研究室で、Horvitzは2002年にノーベル賞をもらっています。線虫は実体顕微鏡で取り扱いやすい大きさで、透明な生物ですぐ内部がわかるため、X線や薬品で突然変異を起こさせた後、それをピックアップして遺伝子解析をするのが楽、すぐ増えるので飼うのが簡単など、多くの利点があります(使い始めたのはHorvitzのボスのSydney Brenner, 兄弟弟子のJohn Sulstonと3人同時受賞)。我々でいうと物質は普通決まっているので、実験系を選ぶのが大切…

ハッカーと画家

今週紹介しているY Combinator社の創業者の一人はプログラマPaul Graham氏です。若い時に立ち上げた会社がYahooに買収され、億万長者になっています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Paul_Graham_(programmer) 私とほぼ同世代であることに驚きました。古典的なプログラミング言語Lispの教科書はベストセラーになっています。また、下記の本「ハッカーと画家」もベストセラーで、面白いです。職業に関する考察も多いので(当然、ベンチャー企業の重要性を語っていますが)就活にも役立つかもしれません。 https://www.amazon.co…

風邪の症状は上気道の感染に対する免疫の反応だからウィルスが違っても似ている

白血球の仲間のマクロファージが病原体を見つけると免疫反応が始まり、その最初が炎症を起こすサイトカインの放出でした。だるくなったり痛くなったり熱が出たりすのは病原体の直接の影響ではなく、免疫反応なので、200種類ものウィルスがほぼ同じ風邪の症状を起こすのが納得できます。 くしゃみと咳は異物を外に出すための動作ですが、病原体をまき散らす効果もあり、人間側と病原体側のどちらに役に立っているかは疑問ですね。最近は寄生体が宿主を操作する例が見つかっているので、その一種かもしれません。 他の応答は、頭痛、だるさ、関節痛など、人間の行動を抑制して安静にする方向です。休めないで動き回っていると風邪が治りにくい…

フレネルゾーンプレートはX線の収束に使える

X線自由電子レーザーは平行光を出しますが、狭い領域に収束させたいときはどうすればいいでしょうか。X線に対して完全に透明な物質は無く、屈折率も1に近いため(実は内殻励起より高いエネルギーでは1よりもわずかに小さい)、レンズを作るのは難しいです。1つの方法はX線が微小角入射に対しては全反射する(屈折率が1よりも少し小さいため)ことを利用して中空で胴が膨らんだ円筒鏡の内側を使う方法です。この場合はコヒーレンスがどうなるかは加工精度もあり難しい問題になります。 もう一つは、光の一部が無駄になりますが、フレネルゾーンプレート(Fresnel zone plate)を使う方法です。これは、屈折でなく、波の…