Ruan Ji’s Poems and Essays(3): 大人先生伝(1)

金曜日の読書・阮籍は詩のほかにもいくつも文章を書いています。いくつか見ていきましょう。「大人先生伝」というのが有名で、なかなか味があります。日本語訳がないので漢文をchatGPTに入力して「日本語に訳して」と言ったら解説付きで正確に訳してくれたのは驚きました。おそらく現代中国語の解説書があってそれを取り込んでいるのでしょう。 話としては大人先生という仙人=スーパーマンが一般人一人とと2人の隠者と会話するおとぎ話です。短いですがちょっとニーチェのツァラツストラの雰囲気があります。漢文は飛ばして、英語で見ていきましょう。英訳本では題名は”The Great Master’s…

水素水を使ったChemosynthsisのエネルギー収支

Chemosynthesisの最近の研究は下記にまとまっていますが、購読しないと読めません。 https://www.cell.com/trends/microbiology/fulltext/S0966-842X(23)00332-3 いろいろなエネルギー源を利用する微生物が見つかっています。 NH3 (redox potential +340mV), NO2-(+420mV), S2-(-220mV),S2O3^2-(+225mV), H2(-414mV), CO(-520mV), CH4(+170mV), Fe2+(+770mV) などです。それぞれを利用する酵素が見つかっており、名前が…

Chemosynthesis

アリューシャン海溝の底の水深10000mで見つかった生物たちは”chemosynthesis”でエネルギーを得ているとのことです。 どういうものか、については米国国立海洋大気局(National Oceanic and Atmospheric Association)が解説をwebに載せています(pdf)。 https://oceanexplorer.noaa.gov/edu/materials/chemosynthesis-fact-sheet.pdf それによると、海底の熱水噴出孔(hydrothermal vents)か冷水湧出域(cold seeps)に存在する…

深海潜水艇のカメラ

「奮闘者」潜水艇(Bathyscaphe “Striver”)のカメラが気になったのでいろいろ調べました。まず、論文が出ています。 https://preprints.opticaopen.org/articles/preprint/The_deep-sea_camera_with_three_detectors_based_on_triple-prism/21971207?file=38980910 RGB3色をプリズムで異なる撮像素子に導く光学系とFPGAを使った色合わせの方法が書いてありますが、最初のレンズがどうなっているかがわかりません。耐圧の厚いガラスを通して…

世界の研究所:CAS, Institute of Deep Sea Science and Engineering

先週の科学系のニュースできれいな動画がありました。千島-カムチャツカ海溝とアリューシャン海溝の底10000mの深さでの生態系です。1000気圧以上の深海底でカメラと光学系をどうしているのか気になります。 https://www.youtube.com/watch?v=7jOfYW0F6Xk 論文はこちら。無料で読めます。 https://www.nature.com/articles/s41586-025-09317-z 中国科学院の深海科学技術研究所(CAS, Institute of Deep Sea Science and Engineering)の「奮闘者」(Striver)という潜水…

Ruan Ji’s Poems and Essays(2):四海を渡る白鳥より自由な近所のスズメになりたい

金曜日の読書・阮籍の「詠懐詩」続きです。1800年前の文字は日本語に取り込まれていないものが多いことがわかり、漢字の入力が大変だな~と思っていましたが、webサイトがありました。中国語版の Wikisource です。https://zh.wikisource.org/wiki/Author:%E9%98%AE%E7%B1%8D 有名なものをまた一つ紹介します。 其十  灼灼西隤日,餘光照我衣。 迴風吹四壁,寒鳥相因依。 周周尚銜羽,蛩蛩亦念飢。 如何當路子,磬折忘所歸? 豈為夸譽名,憔悴使心悲。 寧與燕雀翔,不隨黃鵠飛。 黃鵠遊四海,中路將安歸? 隤日は日没のこと。黃鵠は黄色い白鳥で、死者を…

アミロペクチンの合成経路

アミロースとアミロペクチンの生合成経路がどこまでわかっているか調べました。 https://photosyn.jp/pwiki/?%E3%83%87%E3%83%B3%E3%83%97%E3%83%B3%E3%81%AE%E5%90%88%E6%88%90%E3%81%A8%E5%88%86%E8%A7%A3 https://katosei.jsbba.or.jp/view_html.php?aid=1141 複数ある別々の役割を持つ酵素は同定されています。また、「アミロペクチンの側鎖は左巻き二重らせん構造(1~10 nmのスケール)を形成し,澱粉分子は細胞のサイズにも匹敵する澱粉粒(1~10…

イネ科植物のウルチとモチ

イネ科穀物(米、麦、粟、稗、黍、トウモロコシなど)にはウルチとモチがあります。ウルチは枝分かれの少ないでんぷん(アミロース)が主成分~半分くらいで、モチはアミロースがほとんどなく枝分かれの多いアミロペクチンが主成分の場合です。関連遺伝子は特定されていて、waxy(ワクシー、waxのようにつやがある、の意)遺伝子と呼ばれています。waxyが働いているとウルチになり、変異があり正常に働いていないとモチになります。 植物は基本的な遺伝子が複数集積した「倍数体」をとるものが多くあり、コメは2倍体/4倍体、小麦は2,4,6倍体、トウモロコシは通常2倍体でまれに4倍体だそうです。倍数体の場合は変異の割合に…

雑穀の英語は なんとか millet。キビダンゴはインド料理にもある

昨日紹介した論文は英語で、「キビ 黍」と訳した英語はmilletです。他の雑穀(アワ 粟、ヒエ 稗)の英語を調べたらすべてmilletがつくことがわかりました。英語ではあまり区別しないようですね。どれも乾燥地帯 arid areas で作れる穀物で、2か月以内に収穫できる特色があります。すべてイネ科です。 キビ white millet / hog millet / Proso millet; hogは大人の豚。 Prosoはロシア語でキビを指す。 アワ foxtail millet 穂がキツネの尾のようにふさふさしている。 ヒエ finger millet 穂が指のように分かれている。 どれ…

世界の研究所:Univ. Cambridge, McDonald Institute for Archaeological Research

お米は店頭に戻ってきたようでやや安心ですが、未来の炭水化物の摂取を考えると、たくさんある穀物の地理的分布やそれぞれの特色が気になります。先週、英国の大学(Univ. YorkとUniv. Cambridge, McDonald Institute for Archaeological Research)が日本の縄文土器・弥生式土器の穀物の痕跡を解析して、コメとキビが大陸からほぼ同時に入ってきたが、キビは定着せず、調理の内容としてはそれ以前の漁撈・採集社会からの変革もほとんど起こらなかった、という論文を出しています。 https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2…