高温高圧によるダイヤモンド合成とダイヤモンドやすりの製法

ダイヤモンドについては、2021年2月1日「今日の英語」でDe Beers社を紹介していますが、合成法については詳しく説明していませんでした。 https://www.sekaiken.com/?p=1137 ダイヤモンドが炭素でできていることは、元素Ir, Osを発見した英国のS. Tennantによって1797年に証明されました。 https://en.wikipedia.org/wiki/Smithson_Tennant まず、ダイヤモンドは1気圧では準安定で、グラファイトのほうが安定です。ダイヤモンドを熱力学的に(=ゆっくり)合成するには、0ケルビンでも1.7GPa(17000気圧)が…

世界の研究所:韓国 Institute of Basic Sciences (IBS)

今週の世界の研究所は、韓国Ulsan(蔚山)のInstitute of Basic Science(IBS)をとりあげます。先週のNatureにここの論文が出ていました。1025℃にしたGa-Fe-Co-Si合金にメタンを吹き付けたらダイヤモンドができたとのこと。 液体基板を用いたCVDで、相図で安定なグラファイトでなくてダイヤモンドができたのは確かに新しい発見です。今週と来週ははダイヤモンドの合成について解説してみましょう。 IBSは2011年設立のようです。在籍研究者は600人強です。蔚山は、韓国の南東、釜山の少し北にあり、現代自動車をはじめとする現代財閥(Hyundai)の企業城下町とい…

五輪書(10) 空の巻

金曜日の読書「五輪書」は最後の「空の巻」です。この巻はたいへん短いです。 修行を重ねることにより、少しの曇りもなく、迷いの雲の晴れたところに至ることを「空」と言っています。 自分にはまだ知りえない世界があると自覚し、心の偏りや目のゆがみにとらわれていないかと常に反省しながら鍛錬を続けることが必要とのことなので、到達不可能でしょう。 この境地に近づけば、自動的に技が決まり勝つことができる、とのこと。 The Scroll of Heaven … He should polish his mind and his will and sharpen the two visions - …

Enterprise resources planning システム とプッチンプリン

プログラミング言語には命令型プログラミング言語(その中に手続き型プログラミング言語(C,Java, Python等)、関数型プログラミング言語(LISP, Haskel等)・・・)と宣言型プログラミング言語(SQL等)がありますが、宣言型プログラミング言語は私には難しく思えます。そのためか、最近ではいろいろなソフトとSQLをつなぐインターフェースが作られています。 それでも、ある程度のSQLの知識は必要です。 下記は文系でよく使われる統計解析ソフトRとSQLの連携システムですが、有料のサブスクになっていると思います。Oracle社はMySQLを無料公開していますが、こういうところで儲けているの…

SQLと三値論理

SQLの一つの特徴は昨日紹介したように宣言型言語であることですが、もう一つは、「真」「偽」のほかに「不明」を許す3値論理を使用していることです。これは、SQLの原理を提案したE.F.Coddがこだわったそうですが、不評です。 「不明」は、情報不足で真偽を決められないか、データそのものが一部欠落しているときに使う設定です。”null”(ヌる、日本語でもヌルといいます)という他の言語でもよく見る単語で表します。 「真」と「null」の論理和(or)をとると「真」ですが、「偽」と「null」の論理和は「null」になります。このように、論理演算を繰り返すと「null」が増殖し…

「SQL」の発音

SQLの読み方はいくつかあるようです。Structured Query Language 「構造化問い合わせ言語」の略だそうです。 https://www.dbvis.com/thetable/sql-or-sequel/ もともとsequel という言語として始まったので、「スィークエる」と読むのが玄人で、「エスキューエる」は素人だという説もweb掲示板には出ていますが、 上記によればどちらでもよいようです。が、「スィークエる」「シークエル」と言われてもわかるようにする必要があるでしょう。web掲示板には”squirrel(りす、スク「ワ」レラる)” と発音している変…

世界の研究所:IBM Thomas J Watson Research Center と SQL

今週は、データベースの標準として使われているSQLを解説したいと思います。 https://en.wikipedia.org/wiki/SQL SQLとして使われているソフトは4~5種類くらいありますが、IBMの研究者Edgar F. Codd博士による数学の集合論を使ったデータ処理システムの提案を受けてD.D.Chamberlin博士とR.F. Boyce博士がIBM Yorktown Hightsの研究所で開発しました。この研究所は今はThomas J. Watson Research Centerと呼ばれています。この研究所はまだ取り上げていませんでした。江崎玲於奈博士が勤務していたこと…

五輪書(9) 風の巻2

金曜日の読書「五輪書」は「風の巻」の2回目です。この巻では前回紹介したものを含めて全部で9つの流派を批判しています。 1 長い刀を使う流派  Schools that use a particularly long large sword 2 力任せに太刀を使う流派  Schools that use the sword with brute force 3 短い刀を使う流派 Schools that use a short sward 4 多くの技をもつ流派  Schools that have a large number of techniques 5 構えを重視する流派 Schools…

分子動力学における温度の設定

分子動力学の醍醐味は、「温度」を設定できることです。温度は、各粒子のエネルギーの揺らぎの幅と考えていいと思います。温度を扱う体系は「熱力学」とか「統計力学」と呼ばれていて、「熱力学」は確立された古い学問だと思われていましたが、確率に関することも密接にかかわってくるので、最近のコンピュータの発達に伴う情報の予測などでアナロジーの元となってまた面白くなっています。 これらを学ぶには、分子動力学シミュレーションをやりながら教わるとわかりやすいと思います(もちろん、学生側が分子に関心がなければついてこないでしょう)。なかなかその講義をする機会はないですが、1学期16回分を組み立てるのは面白そうです。 …

ReaxFFによるシミュレーション結果

昨日は午後数時間をかけてReaxFFでやりたかったことができるようになりました。化学式MoS2の層状構造をもった無機物のReaxFFパラメータが論文で公開されていたのを解読して314個のパラメータを取り込ませて分子動力学エンジンLammpsで計算できます。これでいろいろ実験結果の理解が深まります。 例えば、この物質を閉鎖空間で強熱すると融解すると思われますが、第一原理計算では計算時間がかかりすぎて再現が難しいです。動画にしたのが下記です。これでいろいろモデルを設計できるようになります。 https://youtu.be/_D32aIu8oW4 パラメータの記述の形式がわからずエラーを多発しまし…