量子ドットの高密度励起

量子ドットの性質として、光励起が高密度に行われた場合に特異な現象が起こることがあります。 一つは励起子分子や励起子液滴と呼ばれる励起状態の集合体です。半導体では光励起状態は、価電子帯にできた正孔と伝導帯にできた電子がクーロン力(静電気力)で緩く結合してエネルギーが少し下がった状態「励起子exciton エキシトン、エクサイトン」を作りますが、高密度に生成すると集合体を作って特異な性質を示します。半導体量子ドットでは作られた励起子が拡散していくことができずに無理やり密集します。これによって光の屈折率などの光学的性質が変わるので、光で光を制御する光演算機などが作れると考えられています。量子コンピュ…

半導体量子ドット

半導体量子ドットは1桁ナノメートルから数十ナノメートルの大きさをもつ、GaAs,InP,ZnSなどのコロイド粒子です。量子ドットのディスプレイへの応用については下記がよくまとまっています。 wikipediaには、同じ物質なのに大きさを変えると色が変わっているきれいな写真が載っています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Quantum_dot_display 上記はちょっと情報が古いですが、市場に出ているディスプレイの現状は下記です。まだ量子ドットを電流で発光させる技術は量産になっていませんね。 https://softdesigny.com/qled-oled#i…

世界の研究所 英国ベンチャー Nanoco Technologies plc.

今週の世界の研究所は、英国のUniv. Manchester 発ベンチャー Nanoco Technologies plc.をとりあげます。2001年設立です。 https://www.nanocotechnologies.com/about/history/ ここは、今年のノーベル化学賞になった量子ドットの工業生産法を開発してビジネスにしています。特にカドミウムが入っていないものを作っています。 ここの人もノーベル賞候補かな、と思っていましたが2018年に亡くなっていました。 https://news.liverpool.ac.uk/2018/10/22/obituary-professor…

西行(8) 鴫立沢

金曜日の読書の西行(さいぎょう)の解説書は晩年に差し掛かります。本文は来週にして、今週は本の後半の和歌の翻訳で秋に関するものを選んでみます。 秋、ものへまかりける道にて こころなき 身にも哀(あは)れは 知られけり 鴫立沢(しぎたつさわ)の 秋の夕暮れ  (これは傑作として古来評価が高く、「三夕(さんせき)の歌」の一つとして知られています) I thought I was free / of passions, so this melancholy comes as a surprise: / a woodcock shoots up from marsh where autumn&rsquo…

暗号通貨取引所のための安全保障マニュアル

RUISのレポートで暗号通貨に関するものが面白かったので紹介します(pdf注意)。 https://ik.imagekit.io/po8th4g4eqj/prod/institutional-vasps-and-var-assessment-guide-2.pdf マネーロンダリング等や国家間の制裁逃れに使われるのを避けるにはどうするかという仮想通貨業者向けのマニュアルです。 ・住所、氏名、会社ならビジネスの内容、暗号通貨使用の目的、個人ならどうやって原資を手に入れたか(給料から貯めたのか、もらったのか、など)を届け出させる。 ・その人や会社に関する悪いニュースなど情報を精査する(有料サービス…

車のサイバーセキュリティ

今日はRUSIのサイバーセキュリティに関する論説を読みましょう。電気自動車はコンピュータ化されているのでサイバーセキュリティが重要になる、という論説です。緊急停止機能(a Big Red Button)がハッキングされるのも問題だが、むしろ大量のセンサー(カメラやマイクを含む)から知らない間に個人情報を抜かれるほうが怖くないか、と述べています。エネルギーインフラのハッキングは例があるようですね。そういえばイランの核物質濃縮設備もハッキング(というよりスパイが制御コンピュータに差し込んだUSBウィルス)で壊されたと聞いたことがあります。 https://ja.wikipedia.org/wiki…

カジノの経済安保と収益性

RUSIのweb siteは読みごたえがあります。また、講義や解説のyoutubeがたくさん貼り付けてあるので、時間がある時にじっくり見たいですね。文字のほうが短時間に情報を得ることができるので効率はいいですが、研究所の人が話しているのも面白いです。今日は、ちょっと意外だった下記を読んでみましょう。 https://www.rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/gambling-industry-ukraine-financial-and-national-security-threats ウクライナでゼレンスキー政権が20…

世界の研究所 英国 The Royal United Service Institute for Defense and Security (RUSI)

今週の世界の研究所は、英国の安全保障シンクタンク The Royal United Service Institute for Defense and Security (RUSI、英国王立防衛安全保障研究所) を取り上げます。ここはウクライナ-ロシア関係で情報源としてよくニュースに登場していましたが、イスラエル-ハマス関係でも情報を発信しています。1831年に設立された、この種のものとしては世界最古のシンクタンクとされています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Royal_United_Services_Institute 現所長はケント公爵(故エリザベス女王のい…

西行(7) 源平の争い

ウクライナとロシアの争いが膠着状態に陥っている中でイスラエルとハマスの戦闘が勃発し、世界がきな臭くなっていますね。金曜日の読書の西行の解説書は今回源平の争いにさしかかっています。平清盛と西行は同い年で、西行が高野山に庵を構えたのは平清盛の働きかけがあったという説があります。源平の争いは国家を二分する内乱で、多くの人がなくなっています。この解説書は、「戦争は地獄で、人間の愚かさの表れである」とたびたび書いています。西行は平清盛による強引な福原遷都や内乱に関して多くの和歌を詠んでいます。 福原へ都うつりありときこえしころ、伊勢にて月歌よみ侍りしに 雲のうへやふるき都に成りにけりすむらん月の影はかは…

固体多孔質CO2吸脱着剤

一昨日はアミン溶液を中心としたCO2吸着剤の応用例でしたが、固体吸着剤も使われています。ゼオライトなど多孔質固体や、多孔質固体の孔の内部ににアミン等のCO2を吸着・脱着できる分子・高分子を吸着させたものです。利点は、温度の変化でCO2の溶解度を変える液体を作ることは可能ですが、溶液、特に水の温度を変えるのはエネルギー消費が大きいので、潜熱の小さい固体にしよう、という発想です。ムーンショットなど国家プロジェクトも複数走っています。諸外国の大型プロジェクトも多数あります。 下記は現状がよくわかります(pdf) https://www.rite.or.jp/news/events/%E6%B4%BB…