不均一触媒の計算化学

CO2還元はいわゆるC1 chemistry (シーワン化学)の一種です。今後石油がなくなった後での化学品原料としてC1化学が重要になることは間違いないでしょう。と思って最新の参考書を買いましたがいい値段でした。 https://www.amazon.co.jp/dp/B09QJDTDYT 著者は中国の学者ですが、中国は昔から石炭液化をやっていたのでC1化学は得意です。私があまり勉強していない分野なので、目からうろこのところがいろいろあります。1700ページあるので、しばらく楽しめそうです。図書館にも入れるように頼んでおきましたが、入るにしても時間がかかると思います。 さて、昨日の電流によるC…

CO2電気化学還元にはAgナノ粒子を使う

昨日紹介した3M社の電気化学的CO2還元(COをつくる)は、電解液に硫酸とイオン液体、陰極(CO2を還元する側)に銀ナノ粒子、陽極(酸素発生側)に白金ナノ粒子を使っています。 CO2は水素結合を作るような官能基(アミンなど)があると良く溶けますが、硫酸を使っているのが斬新です。硫酸にはCO2が溶けにくいので溶かすためにイオン液体を使っているのかもしれません。 Agを触媒に使っているのが面白いです。明日紹介する参考書でAgを触媒に使う例がないか調べましたが、CO2の水素添加に使っている文献が1つあるだけで、それほどありふれた反応ではないようです。 還元側で使っているので銀ナノ粒子は溶けたりはして…

世界の研究所:米3M社

今週は、CO2の電気化学的還元について解説しようと思います。いずれ化石燃料(石油、天然ガス、石炭)は無くなります。これらはエネルギー源としてだけではなく化学品の原料として重要です。 CO2から炭化水素等の化合物をどうやって作るか、勉強しています。今週は、水素等の還元剤を用いるのではなく電気で直接還元する技術を主に見ていきたいです。 注目すべき論文としてちょっと古いですが、3M(スリーエム)社の下記が有名です。これについては2021年8月26日(※)にちょっと紹介していますが、詳細は説明していませんでした。 https://www.science.org/doi/10.1126/science.…

知的創造企業(8) 日本型の知識創造企業の世界展開(その1)

金曜日の「知識創造企業」は第7章前半です。第6章までの日本スタイルであるグループリーダーの集団が研究開発を引っ張る middle-up-down management と ハイパーテキスト型組織が世界で通用するかという点において、世界展開している自動車の開発(前半=1986年の日産プリメーラ)や合弁企業(新キャタピラ三菱の油圧ショベルREGA)の例についてケーススタディが行われています。 日産の話で印象的なのは、テストドライバーが車の運転のしやすさや特徴を言語化し、設計にフィードバックする役職として機能していることです。また、3年間で1500人をヨーロッパに送り込んで実際に運転させ、現地の交通…

同期整流

スイッチング電源は本当に小さくなりました。携帯の充電器を見ればわかります。効率は80%を超えています。様々な工夫がされているのが下記の記事で分かります。 https://www.tdk.com/ja/tech-mag/power/006 高速でスイッチをオンオフして交流を作ってトランスに入れ、トランスで電圧を変換してから直流に直します(整流という)。その時にオンオフのタイミングを変えることで出力電圧を変えられるので、整流後の電圧をモニターしてオンオフのタイミングを制御することによって5Vなどの一定電圧を得ます。 直流に直すときに、昔は半導体pn接合のダイオードを使っていました。しかし、ダイオー…

トランスは磁性体を使用する

トランスはコイルが組み合わさってできていると昨日言いましたが、実際のトランスでは、コイルは磁性体に巻き付けてあります。その理由は、磁性体があると同じ電流で磁束を大きくできるためです。その比例定数を透磁率と言います。 透磁率は物質によって大きく異なり、真空の値を1とした「比透磁率」はトランスで使われるものは1000以上あります。 50Hz,60Hzで使われるトランスにはSiを数%混ぜたFeからできている「電磁鋼板(でんじこうはん)」を積層したものが使われます。透磁率が大きい電磁鋼板の作り方にはノウハウがあり、数年前に国際的産業スパイ事件がありました。 なぜ薄い鉄板を積層して作るかというと、電磁誘…

スイッチング電源は高い周波数の利用でトランスを小さくしている

トランスは、電流をコイルに流すことにより電気エネルギーを磁気エネルギーに変えて、それをまたコイルが受けて電気エネルギーに戻す、という仕組みで働きます。 電気エネルギーと磁気エネルギーは、時間的に変動すると相互に変換できます。ファラデーの電磁誘導の法則です。なぜ変動が必要なのか、というのは不思議ですが、我々の住む空間の性質(宇宙の法則)と考えるしかありません。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%A9%E3%83%87%E3%83%BC%E3%81%AE%E9%9B%BB%E7%A3%81%E8%AA%98%E5%B0%8…

世界の研究所 Ganz Engineering (ハンガリー)

いま特殊なスイッチング電源を作っています。どうすればよいかほぼわかりましたので、あとは完成させる時間をはやく捻出しないといけません。ちょっとした電力(~1kW)を高速に制御するので、部品が燃えたり破裂したり、試行錯誤があります。 スイッチング電源は機械式のものが自動車のイグニッション用に1910年に発明されています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Delco_ignition_system 現在のACアダプターや携帯の充電器等に使われている形に近いものは1958年にIBMが発明したそうですが、その時は真空管で作ったそうです。 https://www.xppower…

知的創造企業(7) ハイパーテキスト型組織

金曜日の「知識創造企業」は第6章です。グループリーダーの集団が研究開発を引っ張る middle-up-down management を実現する組織形態について説明しています。 組織形態としては、上下の階層でできている官僚型と小さいチームで一つの目標を短期間で達成するタスクフォース型が良く知られていますが、本章は一人が多重の所属を持つ「ハイパーテキスト型組織」を提案しています。 ハイパーテキストは、コンピュータ用語で、文章にタグとして多重の情報が埋め込まれているものです。ここでは通常は官僚型の指揮系統にあるが、必要な時は引き抜かれて小さいチームを作るという意味のようです。おそらく奇をてらってい…

高速気流ではバリヤは作れない

ダイソンの羽根のない扇風機は、スリットから細い高速気流をだして周りの空気を巻き込みます。下記のサイトによると 1㎜の隙間からで55mph=25m/sの速度の気流を出しているそうです。25m/sは台風レベルですね。 https://www.pocket-lint.com/smart-home/news/dyson/98959-how-dysons-air-multiplier-works/ 気流のそばでは空気が気流に巻き込まれます。すなわち、圧力が下がっているのと同じです。 飛行機が飛ぶ原理とも関連しています。しばらく前に話題になりましたが、テストなら「ベルヌーイ、循環、クッタ」という言葉が書い…