トランスは磁性体を使用する

トランスはコイルが組み合わさってできていると昨日言いましたが、実際のトランスでは、コイルは磁性体に巻き付けてあります。その理由は、磁性体があると同じ電流で磁束を大きくできるためです。その比例定数を透磁率と言います。
透磁率は物質によって大きく異なり、真空の値を1とした「比透磁率」はトランスで使われるものは1000以上あります。
50Hz,60Hzで使われるトランスにはSiを数%混ぜたFeからできている「電磁鋼板(でんじこうはん)」を積層したものが使われます。透磁率が大きい電磁鋼板の作り方にはノウハウがあり、数年前に国際的産業スパイ事件がありました。
なぜ薄い鉄板を積層して作るかというと、電磁誘導で導体(この場合は鉄芯)に流れる「渦電流」が電力損失や発熱になるので、渦電流が流れる方向を制限するためです。
100kHz程度を使うスイッチング電源のトランスでは電磁鋼板は使われず、焼結した酸化物(セラミックス磁性体、焼き物)が使われます。これは、渦電流の影響が大きくなるため、金属は使えず絶縁物を使うためだと思います。
高周波磁場を金属磁性体に当てると、電磁調理器(IH; inductive heating)になってしまいます。
50-60Hzのトランスは大きくなるので焼き物では割れる恐れがあるのと、高価になるので使われないのだと推測します。
高周波の場合は渦電流が動く範囲が小さくなるため、損失を減らすにはセラミックス磁性体の微小な結晶粒の制御が重要になります。下記TDKの解説(1986年)は面白いです。
https://www.tdk.com/ja/tech-mag/ferrite

英語は、https://www.tdk.com/en/tech-mag/ferrite02/009 から
inductive heating (電磁)誘導加熱
ferrite フェライト
“Soft magnetic materials such as ferrite are, so to speak, sleeping magnets, as they awake their magnetic properties and become magnetized when an external magnetic field is applied.”
awake ア「ウェイ」ク 起きる、起床する
external magnetic field エクス「タ」ーナる 外部磁場
hysteresis ヒステリシス (つづりをよく間違えるので注意)
steepness 急峻さ
permeability 透磁率
antenna アン「テ」ナ 触覚、アンテナ
high saturation magnetic flux density 高い飽和磁束密度
eddy current loss 渦電流損失(うずでんりゅうそんしつ) エディ
sintering 「スィ」ンタリング 焼結(しょうけつ)
from fierce cold to extreme heat フィアス 苛烈な 「厳寒から酷暑まで」 厳と酷が日本語と逆ですね。

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