風邪の症状は上気道の感染に対する免疫の反応だからウィルスが違っても似ている

白血球の仲間のマクロファージが病原体を見つけると免疫反応が始まり、その最初が炎症を起こすサイトカインの放出でした。だるくなったり痛くなったり熱が出たりすのは病原体の直接の影響ではなく、免疫反応なので、200種類ものウィルスがほぼ同じ風邪の症状を起こすのが納得できます。 くしゃみと咳は異物を外に出すための動作ですが、病原体をまき散らす効果もあり、人間側と病原体側のどちらに役に立っているかは疑問ですね。最近は寄生体が宿主を操作する例が見つかっているので、その一種かもしれません。 他の応答は、頭痛、だるさ、関節痛など、人間の行動を抑制して安静にする方向です。休めないで動き回っていると風邪が治りにくい…

風邪のウィルスは200種類、その中も多くの株に分かれているので抗ウィルス薬は絶望的

風邪に関する論文を検索すると下記が出てきました。The Lancetは臨床医学で一番権威ある雑誌と聞いています。この著者は同じ題材で、より新しいいろいろな医学事典に書いているようなので、第一人者なのでしょう。 https://www.thelancet.com/journals/laninf/article/PIIS1473-3099(05)70270-X/fulltext この論文によると、 ・風邪の症状を起こすウィルスは200種類以上ある ・ライノウィルスは風邪の30-50%を占める。ライノウィルスには100種類以上の株があるので抗ウィルス薬を開発するのは絶望的。 ・インフルエンザのみ早期…

世界の研究所: European Virus Archive

久しぶりに風邪をひいてしまいました。熱はないのですが声が出ません。今週は、風邪についてどこまでわかっているか調べてみたいと思います。まずは、ウィルスのアーカイブの紹介からです。 https://www.european-virus-archive.com/ は、欧州のウィルス研究のネットワークのようですが、https://www.european-virus-archive.com/evag-portal には500Euro、3500Euroなど値段がついています。これはお金を払えば本物を郵送してくれるということでしょうか。もちろんヒトに病原性がないものと思いますが、ちょっと嫌な感じですね。ウ…

知識創造企業(5) 暗黙知を形式知に変えるシステムづくり

金曜日の「知識創造企業」5回目は3章後半です。前半に説明された4段階のスパイラル (1)暗黙知の共同化 (2) 暗黙知から形式知への表出 (3) 形式知の連結 (4) 形式知の内面化により個々人の暗黙知へ をどのように組織として実現するか、という問題への解答です。 組織として知識創造を意図すること、自治、多彩なバックグラウンドの人を集めたチーム、揺らぎと創造的混沌、重複、必須多様性、 だそうです。最後の必須多様性(requisite variety)は、本書には書いていないですが、アシュビーの法則「複雑な環境に対応するには同じくらい複雑なシステムが必要である」というのがあります。 数学的証明は…

52番元素 テルル

Telluride村の名前の由来は、gold telluride (AuTe2)という金の鉱物でした。金や銀など11属元素は16族元素(カルコゲン chalcogenという。硫黄、セレン、テルル)と親和性が高く、化合物を作ります。 銀器は大気中で黒ずんできますが、これは大気中の硫黄を含む分子と化合して表面にAg2Sができるためです。なぜ親和性が高いかについてはいろいろな説明ができます。一つは電気陰性度からで、Cu1.9,Ag1.9,Au2.4,S2.5,Se2.4,Te2.1とよく似ていることから説明されます。無機化学におけるケテラーの三角形 https://solid-mater.com/e…

gold rush と 銃社会

ゴールドラッシュに関する日本語の書物は少ないです。今「カリフォルニアの黄金-ゴールドラッシュ物語 越智道雄著 朝日選書」を斜め読みしています。紀行文形式で情報をピックアップするのには骨が折れますが、雰囲気がわかります。 第一次ゴールドラッシュで得られた金は当時のお金で5.83億ドルというのはこの本の記述です。貨幣価値の換算は資料が探せなかったので、この本の「元の暮らしに戻って1日働いて50セントか、それともここで1日4ドルもらうか」という記述から、50セントが現在の日本円にして5000円くらいかな、というところで8兆円程度と換算しました。 1848年にカリフォルニアで大量の砂金が発見され、大統…

Telluride村の名前の由来

Telluride村は1878年に作られたそうです。名前の由来は、同じコロラド州で発見された gold telluride (AuTe2)鉱物だそうです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Telluride,_Colorado 金も出たそうですが(1875年発見)、AuTe2はここからは産出されませんでした。亜鉛、鉛、銅、銀がとれたそうです。現在はスキーリゾートです。最初のリフトは1972年に建設されたので、比較的新しいですね。 telluride.comという名前のサイトをみつけて興味を持ちました。日本語のページもあります。 https://www.telluri…

世界の研究所:Telluride Historical Museum

今週の世界の研究所(?)は、Happy Holidays!で少しふざけることを許していただいて、Telluride Historical Museum (米コロラド州)です。 https://www.telluridemuseum.org/ ここはゴールドラッシュで作られた Telluideという町の歴史を説明する観光用の施設です。 tellurideとは、我々化学者は52番元素テルル(Te)を陰イオンとしてもつ化合物、「テルル化物」という意味で使います。町の名前としては粋な命名ですね。 なぜゴールドラッシュの町がテルル化物なのか、ゴールドラッシュはどのくらいの規模の金がとれたのか、何人来て何…

知識創造企業(4) 暗黙知を形式知に変えるにはたとえ話が役に立つ

金曜日の「知識創造企業」4回目は3章前半です。暗黙知から形式知して新しい価値(製品、しくみなど)を創造するにはどうしたらよいか、を説明しています。 (1)暗黙知の共同化 (2) 暗黙知から形式知への表出 (3) 形式知の連結 (4) 形式知の内面化により個々人の暗黙知へ という4段階をスパイラル状に経由して知識が進化していくというモデルです。色々実例が上がっていて、(1)では、開発合宿が重要で、コピー機のドラムカートリッジの開発合宿でビール缶を見てひらめいたとか、(2)ではパナソニックのパン焼き機では開発者が有名ホテルのパン屋に弟子入りして苦労の末、パンをこねるときの「ひねり」の重要性に気づい…

太陽系外縁領域に「彗星の巣」がある

彗星はどこからくるか、という問題の回答として、オールト雲(Oort cloud) というモデルが提唱されています。オールト雲は2000天文単位~1万天文単位離れていて、太陽系の境界とされています。1天文単位(astronimical unit;au) は 地球と太陽の平均距離、光で8分13秒かかる距離で、1au=1.5億kmです。オールト雲は氷等でできていて、彗星の巣であるというモデルです。 https://starwalk.space/ja/news/what-is-oort-cloud https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%…