超弾性(擬弾性)は金属結合の微妙なバランスで生じる

強弾性(擬弾性)合金は、形状記憶合金と密接な関係があります。
金属の結晶構造には面心立方、体心立方、六方最密などいろいろなものがありますが、どの構造になるかは、金属の自由電子が作る平面波と原子核の正電荷の周期性の微妙なバランスで決まります。これを利用して、温度変化や外部から変形させようとする力で結晶構造が相転移する合金を作ることができます。外部からの力(「応力(おうりょく)」と言います)によって各面のなす角が90°の結晶からそうでない結晶に相転移する合金があったとすると、応力に対応して結晶面の角度が変わって大きく変形しますが、応力がなくなると90°にもどるのでもとに戻ります。wikipedia英語版が詳しいです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Shape-memory_alloy
こちらは仕組みの解説です。

超弾性の応用として、昨日忘れていましたが、血管のステントがありますね(上記youtubeの8分半くらい)。
航空機の羽の折り畳みに使うNASAのyoutubeも面白いです。

強弾性合金や形状記憶合金の合金組成は発見から数十年たつのにまだ研究が行われており、最近も新しい合金が見つかっています。数十度の温度変化や原子レベルからすると小さな力で結晶構造がスイッチするということを考えると、2つの構造の間に精妙なバランスがあることがわかります。結局のところ、原子間隔よりも広がった自由電子が金属結合を作っているので、合金化によって自由電子の濃度を変化させて金属結合を全体として変化させることができ、ちょうど相転移が起こりやすいところに設定できるところがこの話のミソです(結晶格子の対称性もあるので制約はありますが)。また、最近は金属結合以外でも形状記憶物質や超弾性が見つかっています。明日はその話をしましょう。

英語は上記2つのyoutubeから。
rhombus ひし形
mature マ「チ」ュア 成熟させる
“If it were not in a loop then the wire would be straight like this, but because it’s in a loop as it tries to straighten it exerts a force on the wheel, which causes it to turn.” 輪になっていなければ線はこのようにまっすぐだったでしょうが、輪になっているのでまっすぐになろうとするとき車輪に力をかけて回転させます。
straighten スト「レ」イトン まっすぐにする
exert エグ「サ」ート 行使する
wheel 車輪
fulcrum 「ファ」るクラム てこの支点 = pivot point、物事の中心となる要因 level 18
load てこの作用点
effort てこの力点
lever arm てこの腕
wheelbarrow 猫車、一輪の手押し車
elastic deformation 弾性変形
plastic deformation 塑性変形

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