Also Sprach Zarathustra(6)永劫回帰の予感

金曜日のZarathustraは第二部の末尾、Zarathustraが夢にうなされます。理由は、「永劫回帰(えいごうかいき)」という「真理」にうすうす気が付いてしまったからです。なぜ「永劫回帰」という認識が必要で、なぜそれがそんなに恐ろしいのか、はニーチェでないわれわれにはわからないところです。後世の解釈もいろいろです。私は、これは個人から見た時間と運命に関する一つの考え方だと評価しますが、恐ろしさは感じません。 さて、「永劫回帰」とはなにかというと、ある時間間隔ですべては全く同じように繰り返すという世界観です。そんなばかな、と思うかもしれませんが、19世紀末の数学と物理学ではそういう認識が行…

カルシウムやマグネシウムは鉄の不純物を吸収してスラグになる

溶鉱炉からは「スラグ」というのが出ます。調べたところ、鉄鉱石由来の成分もありますが、後から加える生石灰(CaO)や苦土石灰(CaMg(CO3)2)由来のものが多いと思われます。CaやMgを加える理由は、下記に説明されています。 https://www.tochigi-lime.com/%E3%80%8C%E7%9F%B3%E7%81%B0%E3%80%8D%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%AB%E4%BD%BF%E3%81%86%E3%81%AE%EF%BC%9F/ https://www.slg.jp/slag/process.html 鉄鉱石中のシリコン、硫黄、リンなどと反…

電炉による製鉄

製鉄は奥が深いです。色々調べていると疑問点がたくさん出てきます。さて、「電炉」というのがあり、鉄スクラップから鉄を再生するのに使われます。 http://www.fudenkou.jp/about_04.html 原料は鉄鉱石と違ってすでにほぼ還元されているので、融解することと不純物を除去することが主要な機能になります。溶接に使う「アーク放電」を使って温度を上げて鉄を溶かします。アーク放電は、ほとんど接触している金属同士の間に大電流を流そうとすると隙間の空気を介して放電が起こること。身近には、電池を導線で負荷に接触させるときに「パチッ」と火花が散るのがそれです。電灯のスイッチの火花や、突入電流…

Boston Metal は溶融塩電解で鉄を作ろうとしている

Boston Metalが追究している方法は、「溶融塩電解」と呼ばれるもので、加熱して融けた無機物に電流を流して電気分解します。古くはNaClを溶融したものに電流を流してナトリウム金属を得るなど、Hunphry Davy(1778-1829)が開発した方法です。鉄鉱石についても1810年に実験しているそうです。さらに、例えば氷晶石(Na3AlF6)を加えて融点を下げたボーキサイトを電気分解するとアルミが得られる方法はHeroult-Hall法として実用化されています。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83…

世界の研究所 Boston Metal

先週は炭素税の話をしていましたが、今週は下記によるとCO2排出源の11%を占めるという製鉄について調べてみます。思ったより多いですね(年次はわかりませんが8%という記事もあります)。 https://www.sustainable-ships.org/stories/2022/carbon-footprint-steel その理由は鉄の酸化物(鉄鉱石)を炭素で還元するためです。以前(2021-10-20)、Swedenの会社が水素による鉄鉱石の還元で製鉄をするプロセスに成功したという話を紹介しました。 https://www.ssab.com/en/fossil-free-steel 今週の世…

Also Sprach Zarathustra(5)精神は自らの苦悩によってその知を増すのだ

金曜日のZarathustraは第二部です。山に帰ったZarathustraは、自分の教えがゆがめられた夢を見てまた布教のために山を降りていきます。第二部も地の文はほとんど無く、説教と歌で構成されています。印象的な文章を抜き出してみます。私の感覚に引っかかったものを抜粋しているだけで、内容は万華鏡のように多彩です。英訳はDelphi版Thomas Common訳、和訳は岩波文庫(氷上英廣訳)を少しいじっています。 万華鏡 kaleidoscope カ「れ」イドスコウプ level 7 Not perhaps ye yourselves, my brethren! But into father…

ISO14044

製品にかかわる温室効果ガスの放出量の計算法についていろいろ調べていたら ISO14044 というのがよく出てきました。ISOとは、国際標準化機構というNGO(non-governmental organization 非政府機関、各部門で参加国代表(50か国など)の討議と投票で物事が決定される)およびそれが制定している規格を指します。ISO9001やISO14001はよく聞くと思いますが、ISO9001は品質、ISO14001は環境にかかわる規格で、それを満たしているという認証を受けることでいわば「お墨付き」が得られて取引などで有利になる利点があります。ISO14001は1996年制定で、大学…

製品ごとのCO2排出総量(life cycle management)を計算するソフトウェア

Sphera社(米シカゴに本拠)の子会社であるthinstep AGというソフトウェア会社が開発したGaBiというソフトウェアの試用版を見てみました。 https://sphera.com/life-cycle-assessment-software-ppc/ 同社は1970年代から環境、健康、安全、リスクマネジメントなどをビジネスにしていたとのことで、現在はsustenabilityを全面に出してきていますがどうやって収益を上げてきたのか興味があります。下記youtubeではよくわかりません。 https://www.youtube.com/watch?v=-9ONjKqAxFM GaBiは…

炭素排出コンサルタント

炭素税を考えるときには製品をつくる時にCO2をどれだけ排出するかの算定が重要になります。専用のソフトウェアも開発されているようです。例えばこの会社のGaBiというソフトウェアがあります。 https://www.sphera.com/ 1回払い買い切りで$1500-とのことで、思ったより安いですが、どの程度のことができるかを知りたいです。free trialを試してみたいですが、今週はいろいろ立て込んでいるので可能かどうか。 https://sphera.com/scope-3-value-chain-carbon-accounting/ にあるScope3 というのは、GHG protoco…

世界の研究所 炭素排出権取引にかかわる国際イニシアチブ CDP, SBT, RE100, TCFD

今週の世界の研究所は、炭素排出権取引にかかわる国際的な取り組みを調べてみましょう。参考にしている本は、野村総合研究所編「カーボンニュートラル」日経文庫(2022年)です。仕組みはまだ作られている途中のようですが、(1)各国内の政策による経済支援(CO2を減少させる試みに補助金をつける)。 (2)カーボンプライシング、具体的には炭素税に類するものです。これは各国が自国の企業に課します。 (3)国境炭素調整。国により炭素税の率が違う場合、軽い税率の国では物を安く生産できるので輸出に有利になってしまいます。炭素税が安い国の製品には関税を課して国がその分を吸い上げたり、逆に炭素税が重い国からの物品に補…