Boston Metal は溶融塩電解で鉄を作ろうとしている

Boston Metalが追究している方法は、「溶融塩電解」と呼ばれるもので、加熱して融けた無機物に電流を流して電気分解します。古くはNaClを溶融したものに電流を流してナトリウム金属を得るなど、Hunphry Davy(1778-1829)が開発した方法です。鉄鉱石についても1810年に実験しているそうです。さらに、例えば氷晶石(Na3AlF6)を加えて融点を下げたボーキサイトを電気分解するとアルミが得られる方法はHeroult-Hall法として実用化されています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BC%E6%B3%95
実は、溶融塩電解は10年くらい前からリバイバルして流行っています。Boston Metalのもとになった2013年の論文は下記です。
https://www.nature.com/articles/nature12134
鉄鉱石を溶かすのに1600℃が必要とのことなので、それに耐える電極が必要になります。特に、酸素発生側の電極(陽極)は強い酸化条件にさらされるので、電極が酸化されて絶縁物化したら終わってしまいます。上記論文では、Cr-Fe-Alの合金を開発したようです。確かにすごいですね。陰極側はモリブデンのようですが、これは高融点ということで使われているのでしょう。融けたFeが陰極に析出します。直接電気分解で鉄ができると確かにCO2が出ないし、水素もいらないので簡単です。電極が長持ちできれば実用性はあると思います。
下記、世界1,2を争う製鉄会社アルセロール・ミッタル社が今年Boston Metalに$36M=50億円を出したということです(別記事では156億円)。いけるかもしれませんね。明日は、似た方法で鉄を作っている「電炉」についてみてみましょう。日本の関連企業は大丈夫でしょうか。
https://corporate.arcelormittal.com/media/press-releases/arcelormittal-invests-36-million-in-steel-decarbonisation-disruptor-boston-metal

英語は上記アルセロール・ミッタルwebから。

disruptor 崩壊させるもの、破壊者 (もとはSFの超兵器から)
“The conflict seemed likely to disrupt the government.” その対立は政府を破壊させそうだった。
decarbonizaiton 非炭素化
electrolysis 電解
durable 長持ちする 「デュ」ラブる
transaction 取引
fundraising =fund + raise 募金 
“Boston Metal has raised over $200 million in three fundraising rounds and grown from a team of eight employees in 2018 to over 100 today.” 従業員を2018年の8人から100人以上にした。

Leave a Comment

Comments

No comments yet. Why don’t you start the discussion?

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA