Also Sprach Zarathustra(2)概要と第一部のさわり

金曜日のZarathustraは、概要を解説してから第一部の最初を読みましょう。余談ですが、論理的な思考力や文章の構成力を鍛えるには、文章を要約する訓練が即効性があります。例えば、4冊のZarathustraを1文で、400字で、3ページで要約しなさい、などの問題を自分に課してみるといいと思います。最初は添削が必要かもしれません。社会人向けの講座もあるようですが、大学受験生向けの通信添削講座(Z会など)の難関国語コースが実はコスパがいいと思います。chat-GPTが(将来は)うまく模範解答を作ってくれるかもしれませんね。 さて、2文で要約すると、「神のない新興宗教の教祖であるZarathust…

ダイヤモンドアンビルセル

月曜日に紹介した高圧における室温超伝導の実験は、ダイヤモンド アンビル セル(diamond anvil cell, 略称DAC, ダック)を用いて行われました。私も昨日DACの使い方のノウハウを専門家に習っていたところです。アンビルというのは「金床(カナトコ)」の意味ですが、高圧の分野では、錐状の物体で両端が平らなものを指します。この形を使って高圧を発生させる方法を編み出したのは昨日のBridgmanです。高圧力を出すにはアンビルが変形してはいけないので、できるだけ硬い物質としてダイヤモンドが使われ始めました。米国標準局(National Bureau of Standard, 現NIST)…

発明家教授 ブリッジマン

Percy W. Bridgman(ブリッジマン)は、ハーバード大学の実験物理学の教授でした。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%BC%E3%82%B7%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%83%96%E3%83%AA%E3%83%83%E3%82%B8%E3%83%9E%E3%83%B3 結晶成長のBridman-Stockbarger法の開発や、 https://en.wikipedia.org/wiki/Bridgman%E2%80%93Stockbarger_method 硬い物質と柔らかい物質を組み合わせて漏れを無くし高…

産業界の理想的研究者 ボッシュ

高圧技術の初期に大きく貢献した人は私見では2人いると思います。一人は、ハーバード大学の実験物理学者Percy W. Bridgman, もう一人はドイツBASF社の技術者→経営者のCarl Boschです。2人ともノーベル賞をもらっていますが、それを離れてもいろいろな点で偉人です。 Boschからいきましょうか。下記はよくまとまっています。産業界の研究者として理想的な仕事ぶりではないでしょうか。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9C%E3%83%83%E3%82%B7%E3%83%…

世界の研究所 愛媛大学 地球深部ダイナミクス研究センター、北京高圧研究中心、ルテチウム+水素+窒素の高圧での室温超伝導の論文

先週、ルテチウム(71番元素)+水素+窒素の系で、高圧下(比較的低い)での室温付近での超伝導がNature誌に報告されました。これは米国のロチェスター大学の論文です。まだ他機関による追試が必要ですが、本当ならば様々な応用が可能になるでしょう。 https://www.nytimes.com/2023/03/08/science/room-temperature-superconductor-ranga-dias.html https://www.nature.com/articles/s41586-023-05742-0 ルテチウムの価格が変動しているかどうか見たかったのですが、最新のものは有…

Also Sprach Zarathustra(1)ニーチェについて

金曜日の読書は今週からF.W.NietzscheのAlso Sprach Zarathustra (Thus spake Zarathustra, ツァラトゥストラかく語りき)を読んでいこうと思います。この本は私が大学に入って乱読しているときにぶつかって大きな衝撃を受けました。原書を読みたくてドイツ語を独学で勉強しようとしたくらいです。コロナ前に韓国での学会に呼ばれた帰りにソウル大の知り合いを訪ねたら、書類が山積みになっている部屋の机の上にこの本があり、「若いころに読んだけどまた読み返しているんだ」とのことでした。この先生とは話が合うと思っていました。いま読み直すと確かに若い時に気付かなかった…

ヤモリは多数の絨毛の先についた吸盤を使っている

接着といえば、大気圧の影響を忘れることはできません。大気圧は、ほぼ1kg重/cm2です。 (余談)空気の密度が1.293kg/m3なので、1cm2(=10^-4m2)あたり1m高さで0.1293g,これが1kg=1000gになるには1000/0.1293=7.7kmの高さが必要になります。大気は上空に行くほど薄くなりますが、ざっと厚さ10km(対流圏、その上が成層圏)と覚えておくといいでしょう。飛行機が30000ft~10kmの高さを飛ぶのは、エンジンの燃焼に必要な酸素の量と空気抵抗の兼ね合いで決まっていると思います。 すなわち、1cm2の吸盤を使えば最大1kgを支えることができるはずで、接着…

接着におけるプライマーの役割

難接着性プラスチックの接着に使う下塗り剤「プライマー primer」については情報が少ないですが、いくつか特許を見つけました。Loctite社(現 独Henkel傘下)がポリオレフィンやフッ素樹脂に対して有効と主張しているものです。 https://patents.google.com/patent/EP0476203A1/en これは1997年出願で、中心となるのは(CnHm)2-N-(CnHm)-N-(CnHm)2 の形のアミンおよびその誘導体です。P(CnHm)3の形の分子の特許も引用されています。アミンやフォスフィンが有効な理由はよくわかりません。アルキル部分が接着対象のポリマーに絡ん…

テフロンの接着

最近テフロンの接着法がいろいろ開発されています。テフロンは表面エネルギーが極めて低いので、ほかの物質と界面を作って表面エネルギーを下げる必要がありません。したがって接着が難しいです。 https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/la981727s http://www.ptfecoatings.com/technology/surface-energy.php 昨日の産総研ビデオにありましたが、大気中の放電プラズマやレーザー、火炎を使ってテフロンの表面を酸化して、化学結合可能な官能基(COOHなど)を出すというのが一つの方法です。下記の3分40秒くらいから。 ht…

世界の研究所 産総研 接着・界面研究ラボ

今週の世界の研究所は、日本の産業技術総合研究所(産総研)の「接着・界面研究ラボ」を取り上げます。産総研は2300名の研究者を抱える日本の国立研究所組織の一つで、つくばを中心に、全国に特色を持った11の拠点があります。 https://www.aist.go.jp/aist_j/information/about_aist.html 接着・界面研究ラボはいろいろな部門の研究者が集まってできた小組織ですが、化学、分光、機械特性評価、シミュレーションなど様々な手法を「接着」という対象の解明に集中させています。名簿にあるのはリーダー級の人たちが多いので、おそらくその下の人たちも関与していて、それなりの…