月曜日に紹介した高圧における室温超伝導の実験は、ダイヤモンド アンビル セル(diamond anvil cell, 略称DAC, ダック)を用いて行われました。私も昨日DACの使い方のノウハウを専門家に習っていたところです。アンビルというのは「金床(カナトコ)」の意味ですが、高圧の分野では、錐状の物体で両端が平らなものを指します。この形を使って高圧を発生させる方法を編み出したのは昨日のBridgmanです。高圧力を出すにはアンビルが変形してはいけないので、できるだけ硬い物質としてダイヤモンドが使われ始めました。米国標準局(National Bureau of Standard, 現NIST)のグループが1958年に作ったのが最初です。下記英語版wikipediaはDACの関連技術を詳しく解説しているので、一読に値します。
https://en.wikipedia.org/wiki/Diamond_anvil_cell
2個のダイヤモンドのアンビル(先端はキューレットという平らな部分になっている)を平行な板に2枚にそれぞれ固定し(周辺を接着剤で固める)、キューレット径より小さな穴があいた金属板(ガスケットという)を挟んで3~4本のねじで止め、ねじを締め付けることでガスケットを押しつぶします。ガスケットの穴に試料を詰めておけば試料に高圧をかけられるという仕組みです。手のひらにのるくらいの装置で、10万気圧はそれほど苦労なく作れます。
圧力の測定にはルビーの蛍光の波長が圧力に依存して変化することを利用します。ダイヤモンドは透明でX線の透過性も高いので、各種分光やX線回折を行うことができます。実物の写真はいろいろありますが、下記はどうでしょうか。
https://www.geol.umd.edu/~ajc/LaboratoryForMineralPhysics.html
キューレットを平行に押すことが重要なので、かまぼこ型や半球型のすり合わせを使って角度を変えられるようにする工夫が100万気圧突破に重要だったとされています。Mao-Bell型DAC という名前が残っています。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%AF%9B%E6%B2%B3%E5%85%89
最近も改良の論文がでていて、技術屋としてロマンを感じます。
https://www.nature.com/articles/s41467-018-05294-2
三角錐 triangle pyramid 「ピ」ラミッド
四角錘 square pyramid
先端 tip, apex 「ア」ペックス
anvil = a heavy iron block on which pieces of hot metal are shaped using a hammer (LDOCE)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E5%BA%8A
固定する fix
周囲を接着剤で固めて固定する glue the perimeter to fix them 「ペ」リメータ 周囲
周辺 perifery 「ペ」リフェリ
アンビル anvil
キューレット culet 宝石の小さい平坦面 キューレットと書くことが多い
キュレット curet 掻き出す医療器具
ガスケット gasket 「ギャ」スケット と発音する
平ら flat
ねじ screw
締め付ける tighten 「タ」イトン
緩める loosen 「る」ースン
かまぼこ型 half cyllinder
半球型 hemispherical
すり合わせ alignment ア「ら」インメント
透過性 transmittance