素数ゼミと大きい素数を重ねて使う「セミ原理」

北米(東側)のセミは何年に一度しか現れない、ということが知られていて、その間隔が7,13,17年という素数であることから、素数ゼミ(prime number cicada)という言葉があります。解説は下記です。 https://www.abc.net.au/science/articles/2001/11/27/421251.htm 上記はオーストラリアの記事ですが、オーストラリアでの素数ゼミ(Magicicada属)の分布図は見つかりません。オーストラリアには700種のセミがいて、多くがまだきちんと調べられていないそうです。Blue Mountain 地域で2010,2013,2017年の集…

北米ではある種のセミは毎年現れない

日本ではセミは毎年同じように鳴きますが、北米大陸ではそうではないようです。下記に次回の出現予想地図というのが出ています。どの地域では何年に出現する、というのがわかっているようです。また、トップの画像のセミも日本のセミとはだいぶちがいます(目が赤くて胴が黒い!大きさもやや小さいようです) https://www.vox.com/science-and-health/22362042/cicada-brood-x-map-2021 素数ゼミ(prime number cicada)、というのが論文にあって何だろうと思っていましたが、地域によっては13年や17年ごとにしかセミが出現しないということの…

世界の研究所 セミ関連の cicada safari アプリと cicadamania サイト

関東の内陸部は気温が高くなっていて、梅雨は明けていませんが盛夏といっていいのではないでしょうか。今週の世界の研究所は、夏の昆虫であるセミの研究プロジェクトのアプリ “cicada safari” https://cicadasafari.org/ と、おそらく個人でやっている web https://www.cicadamania.com/ をとりあげます。前者は、米国の Mount St. Joseph University の先生(Prof. Gene Kritsky)が2019年に始めたアプリだそうです。Science 誌にもとりあげられています。 https:/…

The Door into Summer(7) エネルギー地形と観測の時間

ここのところ金曜日は「夏への扉」を読みながら「時間」について考えています。 “(free) energy landscape”という言葉があります。訳は「エネルギー地形」です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E5%9C%B0%E5%BD%A2 物質が変化するときのいろいろな状態のエネルギーがどうなっているか、で、物質の構造変化の座標を空間中の位置(イメージしやすいのはxyの2方向)に、そのエネルギーを高さにとって、地形図のようなものを考えるものです。…

リンの同素体

リンは多数の同素体をもつことが知られています。wikipedia は最近は信頼しても大丈夫なので、詳しい情報は下記を見るといいと思います。 https://en.wikipedia.org/wiki/Allotropes_of_phosphorus 白リン(別名 黄リン) P4分子の結晶 発火点30℃、皮膚につくと猛毒 赤リン P4分子が頂点同士で1次元につながったもの。通常はアモルファス。摩擦で発火するのでマッチに使う。また、プラスチックの難燃化剤に使う(燃えたとき難燃性のポリリン酸がプラスチック表面を覆って酸素を遮断するため)。 http://www.rinka.co.jp/product…

元素リンの発見は錬金術師による

リンは錬金術師(Henning Brand, 独, 1669年ころ)が初めて単離しました。原料は大量の尿を煮詰めたもので、リン酸塩を得、最後に「ワイン」と強熱して還元することにより単体が得られました。下記の絵(Joseph Write, 1771, “The Alchymist, in Search of the Philosopher’s Stone, Discovers Phosphorus, and prays for the successful Conclusion of his operation, as was the custom of the Anci…

有機リンの毒性、特に硫黄とリンがつながるとヤバい

リンは生体に不可欠な元素で、エネルギー通貨として使われるATPがなくなると生きることができません。リンを扱う酵素は3種類あり、試験に出そうですね。 https://en.wikipedia.org/wiki/Phosphorylase phosphorylase A-B + H-OP <-/-> A-OP +h-B phosphatase P-B + H-OP <-/-> P-OH + H-B kinase 「カ」イネース 日本語はキナーゼ  P-B + H-A <-/-> P-A + H-B 植物にリンが不足すると、生育が悪くなりねじれたりするそうですが色…

巨大リン鉱床がノルウェー南部で発見されました

先週のビッグニュースは、ノルウェーで世界最大級のリン鉱床が見つかったというものです。 https://www.bbc.co.uk/newsround/66099273 リチウム二次電池の正極用にリン酸塩の需要が2050年に現在の20倍に膨らむと予想される中でナウルなど既存のリン鉱床が枯渇しました。わかっている人は気を揉んでいたと思いますが、これで今後50年以上心配なくなったとのことです。特にEUには朗報である、というニュースです。 今週の世界の研究所は、リンで鉱床を発見したNorge Mining社をとりあげます。 https://norgemining.com/ リン、バナジウム、チタン、金…

The Door into Summer(6) 絶対反応速度論と前指数因子

金曜日は「夏への扉」を読みながら「時間」について考えています。今日は化学反応における時間を支配するアレニウス式における”pre-exponential factor”(前指数因子)、別名 “attempt frequency” (試行周波数)について考えましょう。いわゆるEyring(アイリング)の絶対反応速度論では、化学反応が起こるときには反応する分子たちが作る活性複合体の遷移状態があり、活性複合体中の分子振動により反応障壁を超えると生成物が生じると考えます。その時に反応障壁を超えようと「試行」する分子振動の周波数が「試行周波数」で、試行1回に…

ラムダ関数

「ラムダ関数」というのはpython, javaなどいろいろなプログラミング言語に実装されています。 なぜ「ラムダ」というのかはちょっと面白いです。下記によると、最初は変数に「^」をつけていたが印刷の時の活字がなかったので、「^」を変数の前につけていて、いつのまにか「λ」になったという嘘のような話が書いてあります。 https://www.quora.com/Why-is-it-called-lambda-calculus これまで、ラムダ関数は関数名を省略する「無名関数」の仲間だと認識していましたが、違っているようで、オブジェクト指向言語の次の世代の「関数型言語」で中心となる概念のようです。…