The Door into Summer(7) エネルギー地形と観測の時間

ここのところ金曜日は「夏への扉」を読みながら「時間」について考えています。
“(free) energy landscape”という言葉があります。訳は「エネルギー地形」です。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%8D%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%83%BC%E5%9C%B0%E5%BD%A2
物質が変化するときのいろいろな状態のエネルギーがどうなっているか、で、物質の構造変化の座標を空間中の位置(イメージしやすいのはxyの2方向)に、そのエネルギーを高さにとって、地形図のようなものを考えるものです。物質はエネルギーが低い状態になろうとしますが、さらに下ろうとすると間に隆起があったりします(活性化エネルギー)。タンパク質の折り畳み(folding)などがいい例です。計算機が速くなったので、energy landscape を計算で求めてシステムを理解することもできるようになってきました。energy landscapeと時間との関係について、下記の論文を見つけました。タダで読めるようになっています。考えている時間スケールによってenergy landscape が違って見える、という話です。
https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1319599111
なかなかいいたとえ話ができませんが、人間の表情を高速度カメラで見ると、人為的な表情と自然な表情が筋肉の動きの順番で区別できる、などはちょっと関連あるでしょうか。だいぶ昔の研究ですが、下記など。
https://www.atr.jp/topics/press_000315_j.html
この研究は1966年の発見が元のようです。発展して”microexpression”という用語があるようです。
https://en.wikipedia.org/wiki/Microexpression

The door into summer は第6章です。30年間の冷凍睡眠から覚めた主人公は苦労の末、自分が昔設立した会社(Hire Girl Inc.)に宣伝業務のために雇われて技術者としての仕事を始めます。この小説での2001年には反重力が実現し、ロボットが自動で工場を動かしていますが、口述筆記する機械はありません。
She (=the receptionist of the top floor) said sharply, “Well? State your business and I’ll check with Mr. Curtis (=CEO) ‘s appointment secretary.” I said loudly, making sure everybody heard it, ‘I want to know what he’s going to do about my wife.’ Sixty seconds later I was in his private office. He looked up. ‘Well? What the devil is this nonsense?’ It took half an hour and some old records to convince him that I did not have a wife and that I actually was the founder of the firm. Then things got chummy over drinks and cigars and I met the sales manager and the chief engineer and the other heads of departments. … “Why?” Mr. Davis. Because you’re sales copy, that’s why! Because you’re romance. Founder of Firm Comes Back from Grave to Visit Brain Child. Inventor of the First Robot Servant Views Fruits of His Genius.’

receptionist 受付係
state 告げる
What the devil is this nonsense? いったいこのでたらめはどういうことだ?
chummy 仲良しの、親しい
sales copy 宣伝文句
brain child またはbrainchild 発明物、独創的な考え 
fruits 果実、成果
verdict 評決
「ご用件を言わないと先に行けません」→「僕の妻をどうするつもりかと聞きたいんだ!」と言って全く初対面の社長室にすっと入れてもらうような機転が利く主人公にとっては、障壁が障壁でないわけです。頭脳の回転が速ければenergy landscapeが違って見えるという例(?)になっています。

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