超弾性(擬弾性)は金属結合の微妙なバランスで生じる

強弾性(擬弾性)合金は、形状記憶合金と密接な関係があります。 金属の結晶構造には面心立方、体心立方、六方最密などいろいろなものがありますが、どの構造になるかは、金属の自由電子が作る平面波と原子核の正電荷の周期性の微妙なバランスで決まります。これを利用して、温度変化や外部から変形させようとする力で結晶構造が相転移する合金を作ることができます。外部からの力(「応力(おうりょく)」と言います)によって各面のなす角が90°の結晶からそうでない結晶に相転移する合金があったとすると、応力に対応して結晶面の角度が変わって大きく変形しますが、応力がなくなると90°にもどるのでもとに戻ります。wikipedia…

超弾性(擬弾性)

金属線を曲げるところを考えましょう。ゆるく、すこしだけ曲げると元に戻りますが、急角度で大きく曲げるとまがったまま元に戻らなくなります。元に戻らる場合を弾性変形、もとに戻らない場合を塑性変形と言います。弾性変形の範囲(弾性限界)を超えると塑性変形が起こると考えることができます。超弾性(擬弾性)とは、ある種の物質を大変形しても塑性変形が起こらず、もとに戻る現象です。通常の弾性は、弾性限界まではフックの法則で変形に比例した力が働きますが、超弾性はフックの法則から外れます(大変形の場合、力は緩やかにしか増えない)。仕組みは原子レベルですが、説明は明日にして、先に応用を見ていきます。いちばんよく見る例は…

世界の研究所 スウェーデン 王立技術大学 KTH

先週、大学の仕事が終わった後で真空中の駆動機構を作っていて、非磁性の良いバネが必要になりました。そういえば、超弾性合金を演示実験用にもっていたな、と思い出してバーナーで熱処理しながらコイルに巻いてみたところ、素晴らしいものができました。うれしかったので、今週は「超弾性(擬弾性)合金」について解説しましょう。世界の研究所は、1932年に超弾性現象が発見された(が、数十年埋もれていた)、スウェーデンのKTH(王立技術大学、Royal Insititute of Technology、スウェーデン語で Kungliga Tekniska högskolan)を取り上げます。 https://www.…

The Door into Summer (11) 第10章

金曜日は「夏への扉」を読んでいます。今週は10章です。タイムマシンが作動して主人公は31年前の1970年に移動します。少し高い空中に出現し、1970年の地表まで落下します。研究所の建物ができていないためです。タイムマシンSFでは出る場所を制御できるかどうかにいろいろなパターンがありますが、「夏への扉」は地球上の同じ位置に出現する設定です。出現したのが弁護士夫妻の目の前で、この弁護士夫妻が助けになってくれます。話が目まぐるしく進行し、汎用ロボットの開発、自動製図機の発明などを行い、最初に設立した会社のライバルとなる会社を設立します。これは2001年の世界で見た状況を再現するべく行動していることに…

ヘリウムの同位体 3He

「今日の英語」は1週間お休みをいただきました。お休みの前はPlank探査機の検出器を冷やすための希釈冷凍機の話をしていました。希釈冷凍機は、3Heと4Heの混合と分留によるエントロピーの輸送を利用して冷やします。常圧では固体にならないので極低温で使えます。3Heは私が学生の時に使っていましたが、非常に高価(たしか1Lの気体が10万円)、かつ不純物としてトリチウム(3H)を含むため吸い込んではいけないという指導をうけました。今日は3Heの資源について調べてみましょう。地球上では重力が弱いので4Heと同様、失われるだけのようです。4Heは放射壊変のα線として生成もされますが、3Heはビッグバン以降…

プランク探査機搭載の冷凍機

Planck探査機はもう役目を終えましたが、2.726Kの黒体輻射に相当するマイクロ波を角度分解して強度分布を測定し、揺らぎの大きさを調べるのがミッションでした。このようなマイクロ波は、それより高い温度の物体からは大量に放出されますから、検出器はより低い温度に置かなければなりません。ヘリウムの同位体を使った冷凍機が必要です。 使用された多段式冷凍機の解説記事は下記です。 https://www.esa.int/Enabling_Support/Space_Engineering_Technology/Planck_s_cooling_chain 太陽電池と制御システムが入っている高温側と、検出…

宇宙背景輻射と宇宙の年齢

宇宙背景輻射をいろいろな方向で詳細に観測すると宇宙の年齢がわかる、というのは不思議な気がします。下記が解説です。 https://www.asj.or.jp/geppou/archive_open/1996/pdf/19960805c.pdf https://astro-dic.jp/cosmic-microwave-background-radiation/ nasaの解説は画像があって分解能向上がはっきりわかります(これらの画像はモデル図ではなくて実物だと思いますが…?) https://www.nasa.gov/mission_pages/planck/multimedia/pia168…

世界の研究所:ウィルキンソン探査機とプランク探査機

先週金曜日に宇宙の寿命の話をしました。現在はビッグバン以来138億年ということになっています。そのデータを取ったのが米国のウィルキンソン探査機(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe, WMAP)と欧州宇宙機構のプランク探査機(Planck Surveyor)です。 https://ja.wikipedia.org/wiki/WMAP https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%97%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%82%AF_(%E4%BA%BA%E5%B7%A5%E8%A1%9B%E6%98%9F) WMAPは打ち上…

The Door into Summer (10) 宇宙の寿命

金曜日は「夏への扉」を読みながら「時間」について考えることにしています。毎日暑いので、宇宙の寿命について考えると涼しくなるでしょうか。宇宙の将来についてはいくつか説があるようです。 収縮してbig bangの状態に戻る big crunch https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%83%E3%82%B0%E3%82%AF%E3%83%A9%E3%83%B3%E3%83%81 big bang の状態の手前で反転膨張に転じる big bounce https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%93%E3%83%83%…

レニウムの用途

レニウムの用途は主に合金です(単体は希少ゆえ高価)。単体の融点が3185℃と非常に高いので、高温材料に向いています。例えばNi基の単結晶タービンブレードに添加してナノレベルで規則構造を作り、疲労により粒界が成長するのを防ぎます。W-Re合金は酸化しない環境下で高温の熱電対に使われることもあります。各種電子源のフィラメントにも入っています。周期表の第6周期になると原子核の電荷が大きいので内殻電子の軌道が小さく押し込められるので速度が速くなり、特殊相対性理論の効果(質量が増える)が強く現れます。そのため、価電子のエネルギーも深くなって化学的な反応性が減少したり、逆に特殊な触媒活性が現れたりします。…