Planck探査機はもう役目を終えましたが、2.726Kの黒体輻射に相当するマイクロ波を角度分解して強度分布を測定し、揺らぎの大きさを調べるのがミッションでした。このようなマイクロ波は、それより高い温度の物体からは大量に放出されますから、検出器はより低い温度に置かなければなりません。ヘリウムの同位体を使った冷凍機が必要です。
使用された多段式冷凍機の解説記事は下記です。
https://www.esa.int/Enabling_Support/Space_Engineering_Technology/Planck_s_cooling_chain
太陽電池と制御システムが入っている高温側と、検出器が入っている低温側が”V-groove buffle”という断熱装置でくぎられていて、低温側は0.1Kまで冷やしているそうです。
探査機がいたあたりの周囲温度は2K(ケルビン)なので、まず放熱で冷やし、それから水素吸着冷凍機で冷やします。高圧水素ガスがバルブから放出される時に断熱膨張で冷えて、それから水素吸蔵合金に吸着されて回収されます。それで20Kになり、ヘリウムのJourle-Thomson効果を使った冷凍機で4.5Kにします。最後にヘリウム3-ヘリウム4の希釈冷凍機を使います。これは地上ではミリケルビンに到達できるのですが、探査機では0.1Kを狙ったそうです。結果を見る限り、うまくいったのではないでしょうか。
希釈冷凍機の解説は下記。実に頭の良い仕掛けです。発明者は超伝導のLondon方程式の兄弟の一人Dr.Heinz Londonです。
https://ja.wikipedia.org/wiki/3He-4He%E5%B8%8C%E9%87%88%E5%86%B7%E5%87%8D%E6%B3%95
動画は下記ですが、装置を見せているだけです。
冷凍機には電力が必要です。Planck探査機は太陽-地球系のラグランジュL2点に居ました。L2点は太陽の反対側です。太陽電池を積んでいるようですが、太陽光は当たるのでしょうか?本当に何でもwebに載っていますね。L2点から見た太陽の眺めの図があります。完全に地球の影ですが、円環状に(弱く)光が来ています。図の解説によると、光は目が眩むほど強いそうです。
https://en.wikipedia.org/wiki/File:Sun-behind-Earth-seen-from-L2.jpg
“Plank is clearly a very ambitious mission from a cryogenic point of view but we are confident it will work flawlessly and achieve its planned two sky surveys at least.”
ambitious mission 野心的なミッション
cryogenic point of view 低温技術の観点からすると
flawlessly 問題なく、失敗なく
flaw フろー 傷
sky survey 全天観測
“A human observer at L2 would only be able to see the blinding white annulus of the Sun.”
blinding 目が眩むくらむような
annulus 円環
※「今日の英語」は明日から1週間お休みです。暑さが続きますがお気をつけてお過ごしください。