世界の研究所 米国 National Center for Atmospheric research

先週末は激しい雷がありました。これから寒くなるという予告だと思います。今週は雷について調べる予定で、世界の研究所は、米国のNational Center for Atmospheric Research (NCAR, 国立大気研究所)を紹介します。当然米国の気象庁NOAAも雷の予報はしています。日本では、ちょっと前にとりあげた電力中央研究所が雷の研究部門(避雷用途)を持っています。 NCARの場所はコロラド州のBoulderです。Univ. Colorado, NOAA(気象庁)& NIST(標準局)の設備も近くにあり、また、隣接のWyoming州には付属の計算機センターがあるようです…

百人一首(5) 記憶に関する歌 34, 35,100

今週金曜日の百人一首は、昨日、海馬(hippocampus)の話をしたので「記憶」に関わるものをピックアップします。英訳はPeter McMillan先生(文春文庫) https://www.peter-a-macmillan.com/ (34) 誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに (藤原興風) Of those I loved, none are left. / Only the aged pine / of Takasago has my years, but, alas, / he is not an old friend of mine. (35) ひとはいさ 心も…

FOXP2遺伝子は言語・学習能力に関係する

月曜日に紹介したドイツのマックスプランク進化人類学研究所は、今回のノーベル賞のネアンデルタール人研究以外にも、FOXP2遺伝子というヒットを飛ばしています。変異させるとネズミが賢くなったというのは「アルジャーノン」みたいで衝撃的です。 https://www.natureasia.com/ja-jp/ndigest/v9/n1/%E3%80%8C%E8%A8%80%E8%AA%9E%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90%E3%80%8D%E3%81%8C%E5%AD%A6%E7%BF%92%E9%80%9F%E5%BA%A6%E3%82%92%E9%80%9F%E3%82%81…

海馬とタツノオトシゴ属 は英語では同じ単語

今日は、韓国とイタリアで行われる2つの国際会議に両方オンライン参加します。リモートのおかげでたいへん便利になりましたが、ハイブリッド会議の主催者側の苦労は先月の学会をお世話して痛感しました。ところが、昨夜、イタリアの方から、私の座長のスケジュールが20分早まったプログラムが最終版として送られてきました。韓国の学会での自分の発表時間と重なってしまい、慌てました。韓国側をずらしてもらうことで対応できましたが、運営の心構えが開催国によって違うのかな、と少しあきれています。 さて、月曜に紹介したマックスプランク発達教育学研究所ですが、乳児の発達の部門等の他、 脳波の精密計測の部門と https://w…

ノーベル経済学賞

2022年のノーベル経済学賞は経済危機における銀行の役割に関する業績で前米国連邦準備理事会議長の B.S.Bernanke,シカゴ大学のD.W.Diamond, Washington Univ. in St LouisのP.H.Dybvigの3氏に与えられました。1930年代の世界恐慌は金本位制の縛りで通貨供給量を増やせず、1990年代の日本のバブル崩壊時は世論もあり引締めをしすぎて苦労しました。2008年のリーマンショック後は、危機にあっては銀行を守れ、という認識で当局は行動しているようです。今回のコロナ危機では各国とも積極的にお金を配りました。副作用でインフレや為替不安定が起こっていますが…

世界の研究所 Max Plank Institute (MPI) for Evolutionary Anthropology, MPI for Human Development

今週の世界の研究所は、先週ノーベル医学生理学賞を受賞した研究者(Prof. Dr. Pääbo)のいるMax Plank Institute (MPI) for Evolutionary Anthropology(ライプツィヒ)と、ちょっと似ている名前の MPI for Human Development(ベルリン)を取り上げます。前者は人類学、後者は教育学で、どちらも日本では文系に近い領域ですが(人類学は理学部)、ドイツは理系の側にかなり振っているので興味深いです。他にも MPI for Evolutionary Biology(プレーン市)があり、紛らわしいですね。 どちらも写真を見る限り…

百人一首(4) 秋の歌 47, 69

昨日は最低気温4℃で、寒くなりました。今週金曜日の百人一首は、 47恵慶法師(えぎょうほうし)と 69.能因法師(のういんほうし)です。 (英訳は Peter McMillan、文春文庫Kindle版) (47) 八重葎(やえむぐら)茂れる宿のさびしきに 人こそ見えね秋は来にけり How lonely this villa / has become, overgrown with goose grass weeds. No one visits me - / only automn comes. (69) あらし吹く三室の山のもみぢ葉は 龍田の川の錦なりけり Blown by storm wi…

ノーベル化学賞

2022のノーベル化学賞は”about snapping molecules together” に与えられました。click chemistry(クリックケミストリー)は、複雑な分子に特定の官能基をつけておき、その反応だけが確実に起こることを利用して、副産物無しに狙った分子だけを共有結合で結合させる概念で、いずれ受賞するだろうと言われていました。Meldal教授が最初の汎用的な反応を発見し、Sharpless教授が体系化しました。Sharpless教授は2001年に野依教授と一緒にすでに受賞しているため、2回目受賞があるかどうか、という話題がありましたが、今回受賞しま…

ノーベル物理学賞

2022年のノーベル物理学賞は、「ベルの不等式」が成り立たないことを実験的に検証した3人に与えられました。 ベルの不等式は、量子化学では習わないですが、本格的な量子力学の教科書には出ています。「雨男と晴女が出会う確率の上限」というわかりやすい解説は下記。 https://xseek-qm.net/Bells_inequality.html 実験は「量子もつれ」が実際に起こり、通信の秘匿に使えることの証明にもなっています(2015年、Zeilingerら)。量子もつれは、量子コンピュータの動作原理なので、タイムリーな受賞ともいえるでしょう。量子コンピュータを提唱した人たちもいますが、その受賞はあ…

ノーベル医学生理学賞

2022年のノーベル医学生理学賞は、スウェーデン生まれ、ドイツMax Plank InstituteのSvante Paabo(ペーボ)博士に授与されました。DNA人類学の創始ということですが、成果はポピュラーサイエンスとして広く知られています。例えば本人による解説も和訳されています。 https://www.amazon.co.jp/dp/416390204X ネアンデルタール人と人間が交配した証拠がDNAから見つかったという報告が出たのは2010年ころで、衝撃的でした。アフリカ人はネアンデルタールと共通遺伝子がないのに、他の人種は1.5-2.1%あるということは、アフリカで誕生した現生人類…