ノーベル物理学賞

2022年のノーベル物理学賞は、「ベルの不等式」が成り立たないことを実験的に検証した3人に与えられました。
ベルの不等式は、量子化学では習わないですが、本格的な量子力学の教科書には出ています。「雨男と晴女が出会う確率の上限」というわかりやすい解説は下記。
https://xseek-qm.net/Bells_inequality.html
実験は「量子もつれ」が実際に起こり、通信の秘匿に使えることの証明にもなっています(2015年、Zeilingerら)。量子もつれは、量子コンピュータの動作原理なので、タイムリーな受賞ともいえるでしょう。量子コンピュータを提唱した人たちもいますが、その受賞はあるとしても先になるでしょうね。ベルの不等式を提唱したJ.S.Bellも当然受賞すべきでしたが、1990年に62才で亡くなっていてノーベル賞はもらっていません。
いろいろ調べていたら、Stanford大学のweb公開・哲学辞典にベルの不等式が詳しく載っていて面白かったです(細部を知りたければとてもわかりやすいです)。
https://plato.stanford.edu/entries/bell-theorem/
哲学と心理学は物理学と脳科学とコンピュータ科学を守備範囲に入れないとおかしいと思うので、正しい方向ですね。
「量子もつれ」(端的にはEPR相関)を使って、光速を超える瞬時の通信が行える、という設定が最近の宇宙物のSFにはよく出てきますが、相対論の縛りがあるので、私は正しくないと思っています。現在の研究ではどうなっているのか、いずれきちんと調べてみたいです。

英語は https://plato.stanford.edu/entries/bell-theorem/ から:
quantum entanglement エン「タ」ングるメント 量子もつれ、量子絡み合い と訳します。
inequality インイク「ワ」りティ 不等式
auxilary assumption オーキ「シ」らリ ア「サ」ンプション 補助的な仮定 auxilaryは「補助、予備」の意味です。オーディオのAUXはこれの略で、補助端子、予備端子のことです。
predictions 予想
probablistic プロバブ「り」スティック 確率論的な
deterministic デターミ「ニ」スティック 決定論的な
“The incompatibility of theories satisfying the conditions that entail Bell inequalities with the predictions of quantum mechanics permits an experimental adjudication between the class of theories satisfying those conditions and the class, which includes quantum mechanics, of theories that violate those conditions. ” さすが哲学辞典、難しいです。
entail 必然的に伴う、課する
adjudication アジュディケーション 裁き、裁定
「ベル不等式が成立する条件を満たす理論と量子力学の予測は一致しないため、その条件を満たす理論のクラスと、その条件を破った理論のクラス(量子力学を含む)のどちらが正しいか実験的に判定を行うことが可能である。」
“Until recently, however, each of these experiments was vulnerable to at least one of two loopholes, referred to as the communication, or locality loophole, and the detection loophole (see section 5). ”
vulnerable 「ヴァ」るネラブる 脆弱な 
a loophole 抜け穴
locality 局所性

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