Justice 第八章 アリストテレスの主張

今週のJusticeは、第8章”Who deserves What? / Aristotle”です。古代ギリシャのアリストテレスの正義論を論じます。古代の議論がなぜ8章に置かれているかは、まだわかりません。緻密に構成されていると思うので、意味があるはずです。さて、この章ではリバタリアン(自由至上主義者)が「選択の自由」を、ロールズが「公正」を正義の条件として重視したのに対し、「名誉や報酬を受け取るのにふさわしい人か?」という観点を重視するアリストテレスの主張を論じています。最高級の楽器を与えらえるべき人は、最もうまく演奏できる人である、というのは確かに正義の感覚の一部で…

磁性微粒子による探傷技術

昨日 magnetic yokeを調べていたら、下記を見つけました。 https://www.youtube.com/watch?v=qpgcD5k1494 磁性微粒子(マグネタイト?)に蛍光塗料を吸着させています。 magnetic yokeや電流で磁場を発生させると、磁場の分布で内部の傷のところに磁性微粒子が集まるので傷が分かるという面白い技術です。対象は、鉄など強磁性体でないといけません。この技術を売っている会社はyoutubeに載せているだけでも何社かあるようです。効率の良いモータの設計には、複雑な構造の磁石や磁性体+コイル中の磁場を計算する必要があります。傷が磁場分布を変えることから…

世界最大の電磁石

世界で最も大きな電磁石は?と検索すると、フランスに建設中の核融合炉 ITER のcentral solenoid が出てきます。下記によると、高さ18m、直径4.25mで、中心磁場は13テスラだそうです。Nb3Sn線材を用いた超伝導線を5km巻いたソレノイドが6個積み重ねてあって、重さは1000トン。磁場の強さは航空母艦を2m浮かせられる、というよくわからない数値が出ています。 https://www.ga.com/general-atomics-to-ship-world-s-most-powerful-magnet-to-iter 鉄くずをくっつける磁石は、カタログによると径1mで0.5~…

改良型 Bitter plate

強い定常磁場をつくるには、超伝導コイルの内側に常伝導電磁石を入れます(ハイブリッドマグネット)。超伝導は電力を消費せずに磁場を作れますが、臨界磁場があり、磁場が大きくなると超伝導でなくなってしまうため、外側になります。臨界磁場を超えた磁場を作るために内側の常伝導電磁石の磁場を足します。常伝導は抵抗があるので発熱が問題になります。昨日のフロリダの研究所では40000アンペアを流しているそうです。このような電流は改良型ビッター板を使わなければなりません。下記動画にくわしいですが、銅の円環に切れ目を入れて絶縁体(黄色いのはポリイミド箔)を挟みながららせん状に何百枚も重ねて締め付けることによってコイル…

世界の研究所 米国 National High Magnetic Field Laboratory (国立強磁場実験施設)

今週の世界の研究所は、米国 National High Magnetic Field Laboratory (国立強磁場実験施設)です。Florida State University とLos Alamos National Laboratoryに設備があります。米国はこのようにいろいろな地方大学に国立研究所の設備を併設しています。これは地方大学に活力(予算面(間接経費が大学を潤す)と優秀な学者)を与えるいい考えで、日本もすこしずつその方向に動いているように思います。Florida State Universityの施設は院生まで含めると300人いるそうです。 https://nationa…

Justice 第七章 アファーマティブ アクションの正当性

今週のJusticeは、第7章”Arguing Affirmative Action”です。affirmative action は日本語で訳されずに英語の発音でアファーマティブ アクションとして使われますが、人種や性別による大学入学や就職時の優遇措置です。米国では黒人や女性を優遇しており、日本でも女性限定枠の就職や昇進が増えてきています。扱いの難しい話ですが、著者は大胆にその正当性を議論しています。優遇されずに落ちた人が訴訟を起こして敗訴した例が多数あるそうです。環境によるテストの差を補正する、過去の差別を補償する、多様性を促進するという3つの理由が考えられ、中でも、…

Oxford Nanopore Technology社のDNAシーケンサと求人

月曜日にはDNAシーケンシングの話になるとは思わなかったのですが、直径数nm、厚さ数nmの穴をDNAが通過した時の電気抵抗変化の解析の現状が面白かったので紹介します。原理は、溶液中のイオンの透過が、穴を通っていくDNAの各塩基によって邪魔されるのですがその邪魔され方が違うこと利用するものです(電気抵抗が時間の関数として階段状に変化する)。DNAが通っていく速度はおそらく流体の圧力で制御しているのだと思います。信号は穴や流路、さらに膜が一つの塩基よりも厚いので、前後の塩基による影響もあるでしょう。これらによる「くせ」があるので、補正をどうするかが問題になります。昨日のyoutube解説では10-…

電解液+パルス電圧でナノメートルの穴を開ける

重慶緑色智能技術研究院の面白かった論文は下記ですが、電解液入りのキャピラリーを好きな位置に置いてから電圧をかけてSiN薄膜やグラフェン等に狙って小さい穴をあける目的の装置です。ちゃんと動いていてすばらしいです。 http://www.cigit.cas.cn/yjycg/kyjz/202201/t20220123_6347024.html https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0024079 これは少し前に日立製作所が発表した方法の発展です。こちらは位置がどこになるかは決められません。 https://www.nature.com/articles/s…

2次元半導体のプラズマプロセス

グラフェンのような2次元物質の仲間はいろいろあって、遷移金属と16族元素(カルコゲン chalcogen=O,S,Se,Te。酸素以外を指すことも多い)の化合物である金属カルコゲナイドは半導体や金属など様々な物性を示すため、古くから研究がおこなわれています。昨日の重慶の研究所の論文では、プラズマを利用した2次元物質のプロセスをまとめています。 https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.accounts.0c00757 半導体+プラズマだと欠陥が生じて使えないのでは?と疑問に思いました。プラズマを使うと高エネルギー粒子が物質に衝突して化学結合を壊すので、きれいな結…

世界の研究所 中国科学院重慶緑色智能技術研究院

今週の世界の研究所は、中国科学院重慶緑色智能技術研究院を取り上げます。 http://www.cigit.cas.cn/yjycg/kyjz/ ここは、Green & Intelligence を標榜(ひょうぼう)していろいろな加工・計測技術を研究しているようです。中国科学院傘下の研究所は多数ありますが、ここはwebがちゃんと更新されています。重慶は揚子江の上流の都市圏人口3000万人の大都市ですが、夏は猛暑日が続いてかなり暑いようです。80年前の戦争では臨時首都となり、日本の攻撃を受けました。 https://en.wikipedia.org/wiki/Bombing_of_Chon…