世界の研究所 カッパドキア遺跡の研究所がギリシャとトルコにある理由

今週の世界の研究所は、トルコの世界遺産カッパドキアに関する研究所を紹介します。ギリシャとトルコに2つあるようです。 https://www.cappadocianstudies.com/about-us/ https://kapadokya.edu.tr/en/research-and-development/cappadocian-studies-research-center 2つある理由はおそらく1923年~の二国間住民交換がかかわっています。複雑な歴史を持つ隣同士の国で、単一民族化を図るために計200万人の両国住民を強制的に移住させたとのこと(一部は第一次大戦とその後のギリシャ・トルコ…

百人一首(9) 山の字が入っている歌 2 3 4 5 7 8 16 22 24 25 26 28 32 42 58 60 66 69 73 74 83 94

今週の百人一首は、山という字が入っているものを紹介します。たくさんあるので、英語は勉強になりそうなのだけ載せます。 (英訳はPeter Mcmillan, 文春文庫) 2 春すぎて夏来にけらし白たへのころもほすてふあまの香具山 持統天皇 3 あしひきの山鳥の尾のしだり尾のながながし夜をひとりかも寝む 柿本人麻呂 4 田子の浦にうちいでて見れば白たへの富士の高嶺に雪は降りつつ 山部赤人 Coming out on the Bay of Tago, / there before me. Mount Fuji - / snow still falling on her peak, / a splen…

Boston Dynamics の歴史と市販品

MIT-CSAILから派生した(spin-off)会社として、Boston Dynamicsが有名です。 https://www.youtube.com/watch?v=SAj2_mIlbm0 1992年にCSAILの電子工学の教授(歩行研究leg-labを主宰するMarc Raibert教授)が設立したそうです。 https://history-computer.com/boston-dynamics-guide/ 映画 Terminator や Robocop の兵器になりそうなロボットが多いですが、 米軍からいろいろ受注して研究したためだと思います。 2013 Google傘下→2017…

MITの公開講座は高い

MIT-CSAILのページを見ていたら、公開講座をいろいろやっていますね。 https://professional.mit.edu/course-catalog/designing-efficient-deep-learning-systems?utm_source=mit-csail&utm_medium=web&utm_campaign=sp-dls-2023 などは、深層学習のシステムのデザインの講習ですが、2日で$2500、日本で同等の講義をやるよりもだいぶ高いと思います。それを考えると大学の授業料は割安・・・ではないですね。。 下記は講演会ですが、面白そうです。一日…

コンピュータ科学の先駆者リスト、FFT

昨夜は月食でした。帰宅時は月が蝕から回復するところでしたが、地球の影の端が完全な黒ではなく、月面の広い範囲にわたって灰色に見えたのが不思議です。光の回り込みが起こっているようですが、どういう仕組みなのか、すぐにはわかりませんでした。考えてみます。 さて、「コンピュータ科学の先駆者リスト」というのがwikipediaにあります。「この人の業績はそれほど偉大か?」などと突っ込みが[ ]の中に入っていて、議論スペースへのリンクが貼られているのが面白いです。深層学習は入っていますが、量子コンピュータは入っていません。日本人は1934年のデジタル回路論(=0、1を扱うデジタルの基礎、NECの人)と、20…

世界の研究所 米国MIT CSAIL

医学系の話が続いたので、今週は目先を変えて、米国MITのCSAIL (Computer Science and Artificial Intelligence Laboratory)を取り上げます。兼任も含めて約100の研究室、構成員は学生を含めて900人越、年間$65M(150円換算で100億円?計算間違いではないですね?)の予算があるそうです。 https://www.csail.mit.edu/about/mission-history ここのスピンオフに、四足ロボットで有名なBoston Dynamicsがあります。 英語は https://www.csail.mit.edu/news…

百人一首(8) 時には月を見上げて昔を思いましょう 7 21 23 31 36 57 59 68 79 81 86

ときどき空を見上げていますか?上空に氷粒ができてきたためか、月が橙色っぽく見えるようになりましたね。今週金曜日の百人一首は、月に関するものを探してみたら、たくさんあり、傑作が多いです。日本人は月が好きなのかもしれません。他の言語の詩で月はどう扱われているか、調べてみたいです。(英訳はPeter Mcmillan, 文春文庫) 7 あまの原ふりさけ見ればかすがなるみ笠の山にいでし月かも 安倍仲麻呂 I gaze up at the sky and wonder / is that the same moon / that shone over Mount Mikasa / at Kasuga /…

プリオン研究における事故

タンパク質の折り畳みが異常になってそれが感染するというプリオン病は不思議なことが多く、盛んに研究されています。例えば、多次元NMRでタンパク質の各部分の距離を測定することができるので形状が分かります。その実験とコンピュータシミュレーションを組み合わせた昨年発表の研究などは面白いです。まれな過程の効率的なシミュレーションの例(metadynamics、いずれ解説しましょう)として勉強になります。 https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2019631118 この論文ではプリオンの断片を扱っていますが、断片ならば病原性はないのでしょうか。黄熱病の研究などでも野口…

スーパーおたくと今後の創薬の方向性

近代創薬の祖は、Paul Ehrlich と言われています。病原体のみを狙い撃つ「魔法の弾丸 magic bullet」を有機化学で絨毯爆撃で見つけようという、狂人と言われても仕方がない目論見に606番目の化合物で成功してノーベル賞をもらっています。私の宗教観では、正しいことは天が味方することもあるという例の一つです。スーパーおたくを許容するドイツの国民性恐るべしです。日本の文化も歴史的に自分の道を突き進む人に優しいです。頑張りましょう!(一緒にされると怒る人もいるかもしれません。失礼しました) https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%82%A6%…

アルツハイマーの免疫療法

アルツハイマー、レビー小体型認知症、ALS(筋無力性側索硬化症)等のいわゆる神経難病のうち少なくともいくつかはタンパク質の異常な折り畳み(folding)の変化とそれに伴う異常な集合体形成が神経細胞を壊すためではないかという説があり(先週と今週紹介した研究所)、アルツハイマーについては、関与するタンパク質は説が分かれていますが、定説となっているように見えます。神経細胞は壊れると再生が困難なため(最近、不可能ではないことが発見されています)、重大な機能障害を招いてしまいます。 それなら問題となっているタンパク質の異常な集合体を除去するように免疫を使えばいいのではないか、という発想で、ワクチンそし…