世界の研究所 独・ランゲルハンス研究所 Paul Langerhans Institute Dresden

今週の世界の研究所は、Paul Langerhans Institute Dresden (独 ドレスデン工科大学付属の研究所)をとりあげます。 https://tu-dresden.de/med/mf/plid?set_language=en ランゲルハンス(1847-1888)は、解剖学に様々な細胞染色試薬が使われるようになった時期に活躍した学者で、結核で若くして亡くなりましたが、皮膚の免疫システムにかかわるランゲルハンス細胞と、糖尿病にかかわるすい臓のランゲルハンス島の発見に名前を残しています。 先週、東大医科研等のグループからランゲルハンス島のβ細胞の増殖に成功したというプレスリリース…

ATP合成酵素

生物系の分子動画で外せないのが ATP synthase でしょう。WEHI.tvとHarvard Univ.の動画がありました。 https://www.youtube.com/watch?v=OT5AXGS1aL8 https://www.youtube.com/watch?v=_GPDsQnnvrA この仕組みを推測した人とX線回折で証明した人は1997年のノーベル化学賞です。 https://www.nobelprize.org/prizes/chemistry/1997/press-release/ ATP synthase が働くミトコンドリアは、独自の遺伝子を持っていて共生細菌由…

アポトーシスの分子機構

WEHI.tvの動画の続き、今日はアポトーシス apoptosisです(つづり注意)。 https://www.youtube.com/watch?v=DR80Huxp4y8 https://www.youtube.com/watch?v=tzwaPWElklo ここに出てくる抗がん剤 venetoclax はスイスの製薬会社ロシュ(Roche)傘下のGenetech社の製品のようです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Venetoclax 英語は昨日のassume の解説です。これは「仮定する」だけではわからない文章が出てきます。 LDOCEから 1 to thi…

ミトコンドリア中の電子輸送系、「まねする、ふりをする」の英語

WEHI.tvというyoutube チャンネルは昨日のオーストラリアの研究所が作っています。いろいろありますが、今日はミトコンドリアの中の電子輸送系を見ましょう。酵素の動きは分子動力学計算でしょうね。動きが硬いのと柔らかいのがあって面白いです。 https://www.youtube.com/watch?v=nmoLoiFakxY 日本語の図が http://www.sc.fukuoka-u.ac.jp/~bc1/Biochem/oxidphos.htm にあります。 最初の方にでてくるquinone はubiquinone = 最近のサプリにある Coenzyme Q10 でしょうか。昔々ユ…

世界の研究所 WEHI (オーストラリア Walter and Eliza Hall Institute of Medical Research)

今週は年度末行事や各種会議で時間が切迫することが予想されるので、youtube鑑賞で楽をしようと思います。世界の研究所は、細胞内現象の分子レベルの動画を多数公開している、オーストラリアのWEHI (Walter and Eliza Hall Institute of Medical Research)をとりあげます。 https://en.wikipedia.org/wiki/WEHI メルボルンにあって、1915設立、以前の所長(Sir Burnet)は免疫のクローン選択説でノーベル賞を取っています(1960)。動画というのは、例えば下記です。 https://www.youtube.com…

Justice 第1章

今週から金曜日の読書は、Michael J. Sandel の “Justice: What’s the right thing to do?”を読みます。 Prof. Sandelはハーバード大学の政治哲学(Government Theory)の教授で、NHKでも以前(2010年ごろ)講義・討論番組がありました。道徳系の英単語は日本語との対応が一筋縄ではなく、お酒が入った席などで使うことが多いのでそれが多用される本書をやってみようと思った次第です。いろいろ極端な実例が多く面白いのですが、感情を揺さぶられるので疲れます。第1章では、天災の際の便乗値上げの是非…

さらに高速の光シャッターはできるか?

昨日紹介した市販品は30μ秒の開閉スピードの液晶シャッタでした。いい技術ですが、さらに速くすることはできるでしょうか?下記、研究者のQ&A掲示板に情報がありました。 https://www.researchgate.net/post/Where-do-I-find-Liquid-Crystal-Optical-Shutters-faster-than-10us 電気光学効果の一種であるポッケルス効果を使うと、液晶と同様に偏光方向を回転させることができます。wikipedia英語版は駆動回路のトランジスタの型番まで書いてあってマニアックです。昔のビデオディスク関連に使われていたそうです。…

高速液晶シャッターの特許

昨日の訂正です。「クロスニコル」はcrossed Nicolsで、Nicolは、昔の偏光素子Nicol prismから来ています(1828年に William Nicolさんが発明)。下記によると、用語には残っているが現在はNicol prismは使われていないとのことで、日本だけで使っているガラパゴス言葉になるかもしれません。英文ではcrossed polarizers のほうが多いようです。 https://en.wikipedia.org/wiki/Nicol_prism さて、昨日紹介した高速液晶シャッター(LC-Tec社)の特許を見ましょう。米国特許はUS Patent Office…

高速液晶シャッターの最前線

液晶ディスプレイの電極を両方透明にすれば、液晶テレビと同じ原理で光を通したり遮ったりするシャッターができそうなのはわかるでしょうか。単純化した原理としては、液晶分子の向きによって透過する光の偏光面が回転することを利用します。電圧をかけると液晶分子の向きが変わるので、直交した偏光子(crossed Nicols クロスニコルという(2022-02-02修正済))の間で偏光が90度回ると透過、回らなければ非透過です。シャッターの開閉速度は、100方向から見ることができる3Dディスプレイを60枚/秒の動画にするには、1秒間に100(方向ごとに画像が変わる)×60(動画のコマ数)回の開閉が必要なので、…

世界の研究所 Institute de Pierre-Gilles de Gennes

今週の世界の研究所は、フランスのInstitute de Pierre-Gilles de Gennesをとりあげます。 https://www.institut-pgg.com/ ここはマイクロ流体デバイスを主に扱っているようです。分析や合成のためのデバイスとしていろいろ使われていますね。 P.G. de Gennes(1932-2007)は 液晶の理論で1991年のノーベル物理学賞を受賞しています。液晶の他にも、汚い超伝導体や高分子など、乱れと秩序が共存する系の理論を徹底的に構築しました。来日時に講演を聞いたことがありますが、接着がどうして起こるかという話でした。その時に提示された未解決問…