世界の研究所:ハクキンカイロ

今週は低温型の燃料電池について調べたいと思います。最初の燃料電池は、英国のSir William Robert Groveが1842年(天保13年)に発明しています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Fuel_cell それから実用的には顧みられなかったようですが、約100年後の1932年にケンブリッジ大学の技術職員のFransis Thomas Baconが実用化しました(Bacon cell)。この人は哲学者のFransis Baconの一族です。さらにさかのぼって哲学者Roger Bacon(1214-94)の子孫の可能性もあるそうです。 https://en…

ドン・キホーテ(9) ドン・キホーテがサンチョ・パンサに与えた訓戒

今週のドン・キホーテ: 公爵夫妻は家来と一緒に演劇仕立ての物語を作ってドン・キホーテとサンチョパンサに冒険をさせます。昼夜に渡って何十人もがかかわり、魔法使い、悪魔、空飛ぶ木馬を持った野蛮人の集団、呪いでひげが生えた侍女などが登場します。二人は目隠しをして木馬に載せられ、ふいごであおがれて空を飛んでいる気分になっている最中に仕掛けられた爆竹が爆発して冒険劇が終わります。すべては勇敢な遍歴の騎士とその部下の活躍で解決した、という手紙が降ってきます。 「それは公爵と夫人に、一生の間の笑い種を与え、サンチョには、長生きしても生涯話すべき内容を与えた」とあります。面白いですが、人が悪いですね。公爵は部…

RFIDの組み立て装置、銅ナノ粒子インク

RFIDはアンテナとmmサイズのシリコンチップからできています。組み立ての装置が下記です。 https://www.youtube.com/watch?v=_yKJprfFafk シリコンチップを切り出す装置(dicer)は日本が得意です。 https://www.youtube.com/watch?v=ScVRmpDgmTU アンテナは蒸着したアルミをエッチング(アルミはリン酸によく溶けます)して作ります。プラスチックフィルムにアルミを蒸着するのはポテトチップの袋に使われている枯れた技術です。 下記は、銅のインクジェットプリンタで作ろうとしています。試作にはいいと思いますが、量産には時間がか…

RFIDの心臓部は2mm角のシリコンチップ

RFIDにはアンテナは必要ですが、当然、13.56Mz,433MHz,900MHz等の検波、演算、発振・変調を行う電子回路が必要です。必要な項目のリストは下記にあります。 https://resources.pcb.cadence.com/blog/2024-rfid-chips この会社CADENCEは、米国の会社で、electronic design automation (EDA、電子設計自動化)の世界的大手です。当然、RFID用の半導体の設計ツールを売っています。 アンテナ、トランジスタ以外にもインダクター、コンデンサー等シリコン以外でできた部品も必要なはずですが、どうやっているのでし…

RFIDのアンテナの構造

UNIQLOのRFIDは、900MHz程度の電波(UHF帯)をアンテナで受け、整流して回路の電源として、タグの内容をレジに通信したり、会計が済んでいることをタグのメモリに書き込んだりしていると思われます。 まずアンテナの形状が興味深いです。 https://explore.averydennison.com/walmart-rfid/p/1 900MHzの電波の波長は33㎝です。波長の半分の長さのアンテナ(λ/2ダイポールアンテナ)は共振により最大の受信感度持ちますが、16.5cmはRFIDタグには大きいです。そこで折り曲げた形状でさらに半分にしているように見えます。 https://tech…

世界の研究所:RFIDを作っているAvery Dennison Corp.は接着剤の会社

UNIQLOのレジは値札のタグにRFID(radio-frequency identification)が埋め込まれていて、所定場所に置くだけで会計ができます。このRFIDの原価は1個4セント(6円)だそうです。 https://www.wsj.com/articles/uniqlos-parent-company-bets-big-on-tiny-rfid-chips-600b124f どこが作っているかを調べたら接着剤や高分子フィルムの会社で驚きました。 https://rfid.averydennison.com/jp/home/news-insights/case-studies/un…

ドン・キホーテ(8) サンチョ・パンサは島をもらえるか?

ドン・キホーテ後編は、前編を愛読している公爵夫妻が登場してクライマックスを迎えます。二人は城に招かれ、香水や赤いじゅうたんで迎えられ、食卓につきます。ドン・キホーテが上座に招かれたことに対してサンチョ・パンサが長い物語で当てこすりをして、ドン・キホーテは顔色をいろいろに変えて焦って怒って、公爵夫妻は笑いをこらえるのに必死です。 また、同席していた僧侶に「遍歴の騎士などは物語の中だけのものなので、馬鹿なことはやめて家に帰りなさい」と言われて危うく喧嘩になりそうになります。 そのやり取りの中で、公爵がサンチョ・パンサに「ドン・キホーテ殿の名によって島の総督役を授けましょう」という提案をします。僧侶…

ラマルキズムの現状

昨日紹介した論文を引用している論文を探ってみましたが、2013年から現在まで大きな進展はないようです。哲学的な怪しい論文、Crisper-CASとの関係を主張する(怪しい?)ものなども検索に引っかかってきて面白かったです。 さて、昨日ラマルクの話を出しました。調べていると変な雑誌が多かったですが、まともな雑誌で下記が見つかりました。 https://doi.org/10.1098/rsif.2021.0334 LamarckはDarwinの前に進化について考察した博物学者で、「用不用説」「獲得形質の遺伝」の2つをLamarckismラマルキズムと言って、20世紀初頭に一部で流行した考え方でした…

本能の遺伝子レベルのコーディング

生物が刺激に対して応答するやり方には、生まれつきプログラムされているもの(本能)と、後天的に学習したものがあります。本能が遺伝子レベルでどのようにコードされているかについて、論文はあまり多くありませんが、いくつかタダで読める解説を見つけました。 https://www.cell.com/neuron/fulltext/S0896-6273(13)00927-6 によれば、神経細胞(neuron)に対するepigeneticsが重要であるとのことです。 epigenetics は日本語では「後成遺伝学」と訳すようですが、DNA塩基配列の変化をともなわないが、遺伝子発現の変化が細胞分裂後も継承され…

ハチの社会性は神経伝達に関係する遺伝子で決まっている

https://www.nature.com/articles/s41467-018-06824-8 を読んでみます。この論文は、”sweet bee”(コナナバチ?)の仲間の”L.albipes”という種には孤立した生活を送るハチと女王バチを中心とした巣をつくるハチの二種類があることに注目し、それぞれの遺伝子解析を行って違いを見たというものです。 その結果、”syx1a”という遺伝子のイントロンに7種類の一塩基変異(SNP)があり、変異の有無でsyx1aの発現頻度が異なるということがわかりました。syx1aはシナプス小胞…