昨日紹介した論文を引用している論文を探ってみましたが、2013年から現在まで大きな進展はないようです。哲学的な怪しい論文、Crisper-CASとの関係を主張する(怪しい?)ものなども検索に引っかかってきて面白かったです。
さて、昨日ラマルクの話を出しました。調べていると変な雑誌が多かったですが、まともな雑誌で下記が見つかりました。
https://doi.org/10.1098/rsif.2021.0334
LamarckはDarwinの前に進化について考察した博物学者で、「用不用説」「獲得形質の遺伝」の2つをLamarckismラマルキズムと言って、20世紀初頭に一部で流行した考え方でしたが、農業へ応用しようとして失敗するなどして、DNAが遺伝情報を伝えることが確立して以来、否定されています。
「用不用説」は、生物の進化において、使わない器官は退化し、よく使う器官は発達するという説で、キリンの首が長い理由の説明に用いられました。現代では、自然選択(昔の自然淘汰)で子孫を残す確率が首の長さで変わるためだとして説明されます。
「獲得形質の遺伝」は、生物が生まれてから生殖時までに獲得した変化が遺伝して子孫に伝わるという説です。昨日紹介したように、最近はepigeneticsを通して獲得形質の遺伝が起こる場合もあるのではないか、という話になっています。が、これもまた覆る可能性もあります。
昆虫が匂いに対してどう応答するか、という本能的応答も刺激との組み合わせで変更可能ですが、それを担っているのは遺伝子ではなく、DNAのメチル化などを通してepigeneticsで制御されているとのことです。
https://link.springer.com/article/10.1007/s00441-020-03329-z
英語は https://doi.org/10.1098/rsif.2021.0334 から。
“Darwin’s theory arose in response to the paradox of how organisms accumulate adaptive change despite that traits acquired over a lifetime are
eliminated at the end of each generation. He devised a population-level explanation: although acquired traits are discarded, inherited traits are retained, so evolution is due to preferential selection for those inherited traits that confer fitness benefits on their bearers.”
※現在の説である、Darwinの自然選択説natural selection を解説しています。
organisms 生命体
despite that ~にもかかわらず
be eliminated at the end of each generation 各世代の終わりに削除される
acquire 獲得する
trait 特徴
“SOR(self-other organization) is distinctly different from a Darwinian or selectionist process. The distinction between Darwinian evolution and
SOR is summarized in table 2 and illustrated in figure 2. SOR involves not competition and survival of some at the expense of others, but transformation of all.”
SOR は 「自他の組織化」くらいでしょうか。
※この論文は自己触媒的に働く要素が多数ある組織の時間発展を数学的に扱っています。自然選択は必要ないということが示されています。DNA→生殖では難しいと思いますが、文化(特に「ミーム」の)進化がこのようなモデルであらわされることは他の論文でも指摘されています。
competition and survival of some 競争と一部の生き残り
at the expense of others 他の犠牲によって