カジノの経済安保と収益性

RUSIのweb siteは読みごたえがあります。また、講義や解説のyoutubeがたくさん貼り付けてあるので、時間がある時にじっくり見たいですね。文字のほうが短時間に情報を得ることができるので効率はいいですが、研究所の人が話しているのも面白いです。今日は、ちょっと意外だった下記を読んでみましょう。 https://www.rusi.org/explore-our-research/publications/commentary/gambling-industry-ukraine-financial-and-national-security-threats ウクライナでゼレンスキー政権が20…

世界の研究所 英国 The Royal United Service Institute for Defense and Security (RUSI)

今週の世界の研究所は、英国の安全保障シンクタンク The Royal United Service Institute for Defense and Security (RUSI、英国王立防衛安全保障研究所) を取り上げます。ここはウクライナ-ロシア関係で情報源としてよくニュースに登場していましたが、イスラエル-ハマス関係でも情報を発信しています。1831年に設立された、この種のものとしては世界最古のシンクタンクとされています。 https://en.wikipedia.org/wiki/Royal_United_Services_Institute 現所長はケント公爵(故エリザベス女王のい…

西行(7) 源平の争い

ウクライナとロシアの争いが膠着状態に陥っている中でイスラエルとハマスの戦闘が勃発し、世界がきな臭くなっていますね。金曜日の読書の西行の解説書は今回源平の争いにさしかかっています。平清盛と西行は同い年で、西行が高野山に庵を構えたのは平清盛の働きかけがあったという説があります。源平の争いは国家を二分する内乱で、多くの人がなくなっています。この解説書は、「戦争は地獄で、人間の愚かさの表れである」とたびたび書いています。西行は平清盛による強引な福原遷都や内乱に関して多くの和歌を詠んでいます。 福原へ都うつりありときこえしころ、伊勢にて月歌よみ侍りしに 雲のうへやふるき都に成りにけりすむらん月の影はかは…

固体多孔質CO2吸脱着剤

一昨日はアミン溶液を中心としたCO2吸着剤の応用例でしたが、固体吸着剤も使われています。ゼオライトなど多孔質固体や、多孔質固体の孔の内部ににアミン等のCO2を吸着・脱着できる分子・高分子を吸着させたものです。利点は、温度の変化でCO2の溶解度を変える液体を作ることは可能ですが、溶液、特に水の温度を変えるのはエネルギー消費が大きいので、潜熱の小さい固体にしよう、という発想です。ムーンショットなど国家プロジェクトも複数走っています。諸外国の大型プロジェクトも多数あります。 下記は現状がよくわかります(pdf) https://www.rite.or.jp/news/events/%E6%B4%BB…

混合のエントロピー変化

一昨日にノーベル経済学賞が発表されました。解説を、と思ったのですが、所得の性差に関する統計的な研究を最初にまとめたHarvardの教授で、男女格差解消のきっかけになったという業績のようです。数理的な要素が無いので、このくらいにしましょう。 さて、昨日は1kgのCO2を4%から90%に濃縮するのに3MJのエネルギー(電気ストーブを1時間焚くエネルギー)が必要という話でした。これが理論的な最大効率とどのくらい離れているかを検討したいと思います。 こういう時は化学工学の文脈では「エクセルギー」というのが出てきます。 https://www.kobelco.co.jp/technology-revie…

石炭火力発電所の二酸化炭素回収実用プラント

二酸化炭素分離プロジェクトで有名なものにBoundary Dam Carbon Capture Projectがあります。カナダのサスカチュワン州の電力会社SaskPowerが2014年から手掛けています。 https://www.saskpower.com/Our-Power-Future/Infrastructure-Projects/Carbon-Capture-and-Storage/Boundary-Dam-Carbon-Capture-Project これは、石炭火力発電所からのCO2を回収するプラントで、石油メジャーのShellが開発したCansolveという回収システムを使って…

世界の研究所 Global CCS Institute (メルボルン)

先週はノーベル賞の合間にCO2回収技術について解説を始めていました。今週はその続きで、世界の研究所はGlobal CCS Instituteを取り上げます。これはオーストラリアのメルボルンに本部があり、Washington DC(米国)、London(英国)、Brussels(ベルギー)、北京、東京に事務所がある40人の組織です。日本は環境省の幹部が入っているので、政府が関与しているようです。ここが出している二酸化炭素分離貯蔵(carbon dioxide capture and storage, CCS)に関する下記レポート(pdf注意)はあちこちで引用されています。 https://www…

西行(6) 讃岐への旅

金曜日の読書の西行の解説書、今回は西行51才の時の四国への旅(1167)です。四国に行ったのは、讃岐に流されて4年前に亡くなった崇徳院と370年前に四国で育った空海(784-835)のゆかりの地を訪ねるためです。この旅で詠まれた名作がいくつかあります。 (詞書)讃岐に詣でて、松山の津という所に、院(崇徳院)おはしましけん御跡たづねけれど、かたもなかりければ。 松山の 波に流れて 来(こ)し舟の やがてむなしく なりにけるかな Having come to Sanuki, I was at a place called the Cove of Matsuyama. I looked around…

2023年ノーベル化学賞

2023年のノーベル化学賞は、量子ドット=化学的に合成した半導体ナノ粒子の先駆者に対して与えられました。現在、一部のテレビ(パソコンのモニタ)には量子ドットが蛍光色素として使われています。有機分子と違って壊れにくく、発色もナノ粒子の大きさを変えることによって量子サイズ効果で調節できるという利点があります。Bawendi教授が量子ドットを発表したころ、私は大学院生で長期インターンで米国にいました。たしかBawendi教授はこの仕事でMITの助教授に抜擢され、すぐ教授になったと記憶しています。そのころ開発された半導体レーザーをつくるためのMOCVD(metal organic chemical v…

2023年ノーベル物理学賞

2023年のノーベル物理学賞は attochemistry と呼ばれる分野の先駆的な実験に対して与えられました。やや専門的な、分かりやすい解説は下記です。atto秒(10の-18秒)の桁のパルスを作り計測する技術の開発に焦点があてられたようです。 https://www.optica-opn.org/home/newsroom/2023/october/attosecond_physics_pioneers_take_2023_nobel_prize/ atto は10^-18で、その上はfemtoですが、femtochemistryは1991年の化学賞です。attoだと物理学賞になるのは面白…