世界の研究所 Global CCS Institute (メルボルン)

先週はノーベル賞の合間にCO2回収技術について解説を始めていました。今週はその続きで、世界の研究所はGlobal CCS Instituteを取り上げます。これはオーストラリアのメルボルンに本部があり、Washington DC(米国)、London(英国)、Brussels(ベルギー)、北京、東京に事務所がある40人の組織です。日本は環境省の幹部が入っているので、政府が関与しているようです。ここが出している二酸化炭素分離貯蔵(carbon dioxide capture and storage, CCS)に関する下記レポート(pdf注意)はあちこちで引用されています。
https://www.globalccsinstitute.com/wp-content/uploads/2022/03/CCE-CCS-Technology-Readiness-and-Costs-22-1.pdf
その4章が二酸化炭素分離技術の現状を解説しています。現在商用化されている方法として液体アミンに化学吸収させる方法、Selexol, Rectisol等の商品名を持つ物理吸着剤に吸着させる方法、Benfield process, Sterically hindered amine, 固体へのpressure swingによる吸脱着、天然ガス採掘における膜分離が挙げられています。
Selexolは室温のジメチルエーテルとポリエチレングリコールの混合物と20~140気圧のCO2、Rectisolは-40℃のメタノールと28~70気圧のCO2を使う方法のようで、化学反応ではなく可逆な溶解平衡を使っているようです。Selexolは冷やさないといけないので必要なエネルギーが大きいとのことです。
Benfield processは 加温した炭酸カリウム水溶液を使う方法のようです。
K2CO3+CO2+H2O -> 2KHCO3 によってCO2を吸収します。
いずれにしても、CO2を高圧にしなければならない、温度や圧力を変化させなければならない、などの条件から、エネルギーを消費します。この報告書にはエネルギーについては書いていないですが、CO2回収1トン当たりの価格が出ています。分離方法よりも最初のCO2分圧で決まっています。Fig.11がそれですが、分圧1kPa(大気圧100kPaからすると分子数の比で大気圧の1%)で180ドルです、4%くらいまで急速に下がって70ドル、それ以降40%まで緩やかに下がり、50ドルになります。CO2発生源で回収する重要性がわかります。ガソリン1L燃やすと2.3kgのCO2が出るそうですから、
https://www.env.go.jp/council/16pol-ear/y164-04/mat04.pdf
CO2 1トンはガソリン430Lに相当します。1L150円として64500円、それにCO2回収コスト50ドル=7500円が加わるということですね。1割強の値上げならば社会として大きなダメージにはならないですね。一生懸命実行に向けて進んでいる理由がわかります。問題は、CO2を貯蔵する方法は800m以下の地下か海底ということですが、適した場所が少なく、以前紹介したように30年くらいで使い切ってしまういうことです。再生可能エネルギーを使ってCO2を還元して燃料に戻す必要があります。
英語は上記レポートから

mitigate 軽減させる
“Techonology as a driver of cost reduction and enabler of CCS depolyment”
技術が費用削減とCCS普及を可能とする駆動力になる
enabler 変なことばですが、「可能にするもの」という意味で、よく使います。こなれた日本語にするには意訳が必要です。
deployment 普及、兵の展開
“As the world moves towards higher ambition for emissions reductions and CO2
removal from the atmosphere, there is a relentless focus on driving down the costs of all parts of the CCS value chain. ”
relentless 絶え間ない
value chain 訳せば 価値連鎖、ですが バリューチェインのまま使うことも多いです。
“A value chain is a series of consecutive steps that go into the creation of a finished product, from its initial design to its arrival at a customer’s door. The chain identifies each step in the process at which value is added, including the sourcing, manufacturing, and marketing stages of its production. ”
https://www.investopedia.com/terms/v/valuechain.asp
consecutive コン「セ」キュティヴ 引き続いた、連続した、結果を表す level 9
“technology readiness level” 技術的成熟度 と訳されています。  readiness も日本語にはない、変な言葉ですが意味はわかるでしょう。 準備ができていること。

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