2023年ノーベル化学賞

2023年のノーベル化学賞は、量子ドット=化学的に合成した半導体ナノ粒子の先駆者に対して与えられました。現在、一部のテレビ(パソコンのモニタ)には量子ドットが蛍光色素として使われています。有機分子と違って壊れにくく、発色もナノ粒子の大きさを変えることによって量子サイズ効果で調節できるという利点があります。Bawendi教授が量子ドットを発表したころ、私は大学院生で長期インターンで米国にいました。たしかBawendi教授はこの仕事でMITの助教授に抜擢され、すぐ教授になったと記憶しています。そのころ開発された半導体レーザーをつくるためのMOCVD(metal organic chemical vapor deposition, ガリウムやヒ素の有機化合物を高温基板表面上で反応させてエピタキシャル結晶薄膜を作る)の原料の一つを溶液に溶かし、加熱してもう一つの原料を注射器で注入して反応させることにより(現在も使われているrapid injection method)、大きさのそろった半導体ナノ粒子を大量に合成する方法を開発しました。研究室紹介に、「有毒な有機ヒ素や有機カドミウム化合物を安全に取り扱って反応させる特殊技術を開発した」と書いてあって、そうか、独創的な仕事はこういう風にやるのか、と思ったことを覚えています。大学の講義で有機化学の怖い先生から、「zero to one, 研究者たるものゼロから1を作らないといけない」と刷り込まれていてやり方がわかりませんでしたが、この時になるほど、と思いました。Ekimov博士は1967年にCuClとNaClの混合融液を冷却してCuClの量子ドットを作り(←私が3年生の講義で紹介している題材)、量子サイズ効果を発見した人です。
https://web.archive.org/web/20141216142832/http://www.jetpletters.ac.ru/ps/1030/article_15644.pdf
Brus教授はベル研で半導体ナノ粒子を合成し正確な理論を作った先駆者で、Bawendi教授はそのグループでポスドクをしていたのではないかと推測されます。

英語は、https://www.theguardian.com/science/2023/oct/04/nobel-prize-in-chemistry-winners-2023
から。
American chemist of French and Tunisian descent フランスとチュニジアの家系である米国の化学者
descent デ「セ」ント 降下、下山、下落、臨検などの意味が先に出てきます。4番目が家系、血統
in an embarrassing incident for the academy アカデミーにとっては当惑させる事故で
at the time of the inadvertent email 不注意な電子メールが送られたときには
inadvertent イン「ア」ドヴァテント うっかりしてた、不注意な level 11
I inadvertently fell a sleep / forgot about it. うっかり眠ってしまった。うっかり忘れてしまった。  He fell into a slumber inadverntedly. 彼はついうとうとした。
We deeply regret that this happened. このようなことが起こったことを深く遺憾に思います。
The laureates themselves were oblivious to the drama.
受賞者たち自身はこのドラマは気づかなかった。
oblivious オブ「り」ヴィアス ~を/に 忘れて、没頭して、気づかないで level 10
ハリーポッターの忘却呪文(Memory Charm)は”Obliviate”で、これは英語の古語(忘れる)です。

※ スウェーデンの新聞社に決定前にメールが送られたそうです。責任者は辞任させられるかもしれませんね。

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