一昨日にノーベル経済学賞が発表されました。解説を、と思ったのですが、所得の性差に関する統計的な研究を最初にまとめたHarvardの教授で、男女格差解消のきっかけになったという業績のようです。数理的な要素が無いので、このくらいにしましょう。
さて、昨日は1kgのCO2を4%から90%に濃縮するのに3MJのエネルギー(電気ストーブを1時間焚くエネルギー)が必要という話でした。これが理論的な最大効率とどのくらい離れているかを検討したいと思います。
こういう時は化学工学の文脈では「エクセルギー」というのが出てきます。
https://www.kobelco.co.jp/technology-review/pdf/64_1/045-048.pdf
分かりにくい概念ですが、結局のところ混合のエントロピーかける温度とエンタルピー変化を考えているので、単純化すると自由エネルギーの差と思っていいと思います。
混合のエントロピー変化の式は応用範囲が広いので、絶対に覚えておくべきです。
ΔS= -R (nA ln(xA) + nB ln(xB)) です。 ・・・★
ここで、Sはエントロピー、Rは気体定数8.314J/mol/K, nAは物質Aのモル数、nBは物質Bのモル数、 xA=nA/(nA+nB), xB=nB/(nA+nB) で、AとBのモル分率です。lnは自然対数。
詳細は下記。
https://chem.libretexts.org/Bookshelves/Physical_and_Theoretical_Chemistry_Textbook_Maps/Supplemental_Modules_(Physical_and_Theoretical_Chemistry)/Thermodynamics/Ideal_Systems/Entropy_of_Mixing
1kgのCO2が空気と混じって(1)4%のときと(2)90%の時の、ΔS(完全に分かれている場合を基準とした変化量)を計算してみましょう。AをCO2, Bを空気とします。
nA=1000g/44(CO2分子量)=22.7mol
nBは(1)では24nA, (2)では0.1nAです。また、(1)ではxA=0.04, xB=0.96; (2)ではxA=0.90, xB=0.10です。これを★の式に代入すると、
ΔS(1)=793 J/K, ΔS(2)=63 J/K
温度をT=300Kとすると、自由エネルギーの中にエントロピーは -TSの形で入っているので
CO2濃縮に必要なエネルギーは T(ΔS(1)-ΔS(2))=0.22 MJ となります。
2014年の段階でCANSOLVEプラントは 3MJ必要だったので、効率は0.22/3=0.07 で、7%しかないということになります。計算が合っているかどうか不安になるくらい低いですね(間違っていたらご指摘ください)。改良の余地がものすごくある、ということで、技術者魂を刺激されます。
英語は、ノーベル経済学賞のニュースから。https://www.theguardian.com/world/2023/oct/09/claudia-goldin-nobel-economics-prize-gender-pay-gap
gender pay gap 男女の所得格差 gender ジェンダー は性差。
contraceptive pill 避妊用ピル
child rearing 子育て rear は、名詞「後ろ」のほかに、動詞「育てる、しつける」があります。
“Men forgo time with their family and women often forgo their carrier.”
forgo フォア「ゴ」ウ なしですませる、差し控える、見合わせる、 level 11
“The bulk of the earnings difference between men and women in the same occupation arises largely when they have children.”
同じ職業についた男女の収入格差は子供ができたときに大きく開く
occupation オキュ「ペ」イション 職業
earnings 「ア」ーニングス 収入
“Claudia Goldin’s discoveries have vast societal implications,” said Randi Hjalmarsson, a member of the economic prize committee. “By finally understanding the problem and calling it by the right name, we will be able to pave a better route forward.”
pave a better route forward 前進するよりよい道を開く pave ペイヴ 「道を拓く」というときの「ひらく」で、きまり文句です。
vast social implications 莫大な社会的波及効果を持つ