コピー機やレーザープリンターの感光ドラムに使う半導体はいろいろあります。有機半導体は異なる分子を混合することによって光励起できる深いトラップを作れるので理想的です。ほかの半導体で金属ドラムの上に成膜できるものというとかなり限られます。また、光伝導性や帯電性の制御が有機物よりも難しいと思います。セレンは古くからこの目的に使われてきましたが、毒性と摩耗性に弱みがあります。
アモルファスシリコンはセレンや有機物よりも硬いので長寿命ですが、トラップの制御がかなり難しいと思われます。
シリコンのダングリングボンド(dangling bond, 他の原子とつながっていない結合手)がトラップを作りますが、その数は手が1本の水素原子で終端することにより制御できます。トラップの深さは、ダングリングボンド周辺のシリコン原子の位置関係で決まると思うので、制御が大変です。
特許は1970年代からいろいろ出ていますが、アモルファスシリコンの感光ドラム実用化は難航したと聞きます。2011年発売の京セラのシリコンドラムが有名ですが、下記サイト(2017年の改良版)を見ると、表面に凹凸をつけることによって接触面積を減らし、摩耗をさらに減らしているそうです。コピー中に接触する他の物質に比べて比べてアモルファスシリコンが圧倒的に硬いので、接触面積が重要になるのでしょう。コピー機の分解能は5ミクロンくらいあれば十分なのでしょう、ちょうどそのくらいの凹凸が作ってあります。
https://www.kyoceradocumentsolutions.com.au/smarterworkspaces/Pages/new-kyocera-a-si-photoreceptor-drum-for-document-equipment-improves-durability-reduces-internal-friction-by-30-percent.aspx
話はずれますが、NHKのプロジェクトXの抜粋が下記webに乗っていますが、既存の特許をかいくぐるための努力(感光ドラムの材料などが中心のようです)が面白いです。逆にみると先行者であるxeroxの独創性と、長期にわたって優位性を保ち続けることの難しさがわかります。
https://jimukiki.net/project-x/
英語は上記サイトから。
“a coeffient of friction 30% lower than that of the company’s convensional a-Si drum”
coefficient コエ「フィ」ーシエント 係数
friction 摩擦
conventional 従来の
“The new product is now available for shipment to equipment manufacturers worldwide.”
新製品は現在、世界中の装置製作メーカーに向けて出荷可能です。
“In a key enhancement of xx drum that the company launched 2011, the new yy series incorporates a proprietary coating with submicron scale variations in surface topography – including microasperities measuring approximately 100nm.”
launch ろーンチ 打ち上げる、立ち上げる
incorporate 合体させる、合併する、編入する、「具体化する」 でよく使います。
proprietary プロプ「ラ」イエタリ そのまま日本語として使うこともありますが、「専有の」の意味が多いです。ほかに「所有主の」「独占するような」
measuring ~の寸法になる ※ 英語らしい言い回しです
asperity 荒々しさ、ごつごつした