コピー機の感光ドラムには半導体が塗ってある

コピー機やレーザープリンターには「トナー」と「ドラム」があるのは聞いたことがあると思います。「トナー」は、固形インクの粉ですね。これについては後で見ることにして、「ドラム」は半導体が塗ってある金属の円筒です。下記サイトがわかりやすいです。 https://www.hodogaya.co.jp/english/products/segment01/electronic/ OPC = organic photo conductor 有機光伝導体 で、微結晶の金属フタロシアニンなどを塗ってあるものが多いと昔聞きました。最初期はセレン、長寿命をうたうアモルファスシリコンのものもあります。 chargi…

世界の研究所 xerox Webster Research Center

今週来週の2週間でアモルファス半導体の応用について紹介しようと思います。広く応用されているのはコピー機などの感光ドラムですが、今週はその発展形のレーザープリンターも調べてみましょう。月曜の世界の研究所は、レーザープリンターが発明されたxerox Webster Research Center(ゼロックス、米国ニューヨーク州ウェブスター)にします。 https://xeroxnostalgia.com/2020/04/06/xerox-webster-campus/ 普通紙の複写機を発明したのは、米国のChester F. Carlson(1906-1968)で、光伝導という現象をコピーに使えな…

Also Sprach Zarathustra(7)永劫回帰の時代背景

金曜日のZarathustra、今週は「永劫回帰」の時代背景を説明します。19世紀後半になって、熱力学第二法則(エントロピー増大則)の仕組みを解明しようとする研究が盛んになりました。S=k log Wで微視的状態数WとエントロピーSを結び付け(1877)、H定理(1872)とあわせてこの問題をほとんど解決に導いたのがボルツマン(L.E.Boltzmann)です。一方、天体運動のような少数の物体が関与する系では単純な微分方程式である運動方程式で運動の時間変化を追いかけられることがわかっていました。エネルギーは保存するため、微分方程式で書ける運動は止まることがなく、同じ状態を繰り返すのではないか?…

リスコフの置換原則は上司と部下ではなくて祖先と子孫

私は教師として「たとえ話」を工夫する努力を続けています。ただ、うまい対応関係がない場合もあり、たとえ話だけでは誤解を招くこともあるので注意が必要です。その一つの例が昨日のSOLID原則の”L”, すなわち「リスコフの置換原則」にあります。たとえ話では、「上司は部下を置換できなければならない」でした。ソフトウェア工学の言葉で”superclass” と “subclass”というのがあり、このたとえ話では、superclass が上司(supervisor)で、subclassが部下(subordinate)に対応しそうです…

SOLID原則:たとえによる説明

ソフトウェア設計の原則には、リスコフの置換原則のほかに4つあり、まとめてSOLID原則と呼ばれています。 https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/02319/010500002/   わかりやすいですが途中から有料。 https://www.membersedge.co.jp/blog/typescript-solid-single-responsibility-principle/  およびそのリンクは無料。 S 単一責任の原則 Single responsibility principle O 開放閉鎖の原則 Open/closed prin…

リスコフの置換原則

リスコフの置換原則は、クラスと継承にかかわるものです。クラスは、使いまわせるひな形のようなもので、大規模なプログラムを多くの人で作る時に有用です。100行以下の短いプログラムでは、クラスを使わないほうが文字数を減らせるので、短い使い捨てのプログラムを書いているときはありがたみがわかりません。 最近、下記の本を読んでいて(javaで説明。初級を脱したい人にはおすすめです) www.amazon.co.jp/dp/4297127830/ クラスやインターフェースのありがたみがようやくわかるようになってきました。例えば、似ているが少し違うことをやりたいときの分岐をクラスを使って自動的に行う、という機…

世界の研究所 Mitre Corporation

私のソフトウェア工学の勉強は週末に時間を見つけて頑張っていますが、だいぶつながりが見えてくるようになりました。どの分野でも同じだと思いますが、有用な概念には名前(符牒 ふちょう)をつけて一言でコミュニケーションをとれるようにしていますね。ソフトウェア工学で人名がついている概念は化学の「人名反応 name reactions」ほどは多くないですが、今週はその一つである「リスコフの置換原則」の周辺を解説したいと思います。月曜日の世界の研究所は このBarbara Liskov教授(1939-, 現MIT)が若い時に在籍していた 米国の非営利法人Mitre Corporation (マイター と読む…

Also Sprach Zarathustra(6)永劫回帰の予感

金曜日のZarathustraは第二部の末尾、Zarathustraが夢にうなされます。理由は、「永劫回帰(えいごうかいき)」という「真理」にうすうす気が付いてしまったからです。なぜ「永劫回帰」という認識が必要で、なぜそれがそんなに恐ろしいのか、はニーチェでないわれわれにはわからないところです。後世の解釈もいろいろです。私は、これは個人から見た時間と運命に関する一つの考え方だと評価しますが、恐ろしさは感じません。 さて、「永劫回帰」とはなにかというと、ある時間間隔ですべては全く同じように繰り返すという世界観です。そんなばかな、と思うかもしれませんが、19世紀末の数学と物理学ではそういう認識が行…

カルシウムやマグネシウムは鉄の不純物を吸収してスラグになる

溶鉱炉からは「スラグ」というのが出ます。調べたところ、鉄鉱石由来の成分もありますが、後から加える生石灰(CaO)や苦土石灰(CaMg(CO3)2)由来のものが多いと思われます。CaやMgを加える理由は、下記に説明されています。 https://www.tochigi-lime.com/%E3%80%8C%E7%9F%B3%E7%81%B0%E3%80%8D%E3%81%AF%E4%BD%95%E3%81%AB%E4%BD%BF%E3%81%86%E3%81%AE%EF%BC%9F/ https://www.slg.jp/slag/process.html 鉄鉱石中のシリコン、硫黄、リンなどと反…

電炉による製鉄

製鉄は奥が深いです。色々調べていると疑問点がたくさん出てきます。さて、「電炉」というのがあり、鉄スクラップから鉄を再生するのに使われます。 http://www.fudenkou.jp/about_04.html 原料は鉄鉱石と違ってすでにほぼ還元されているので、融解することと不純物を除去することが主要な機能になります。溶接に使う「アーク放電」を使って温度を上げて鉄を溶かします。アーク放電は、ほとんど接触している金属同士の間に大電流を流そうとすると隙間の空気を介して放電が起こること。身近には、電池を導線で負荷に接触させるときに「パチッ」と火花が散るのがそれです。電灯のスイッチの火花や、突入電流…