百人一首(1) 「ちはやふる」の完結

お手伝いしていた国際会議は1000人の参加者がいましたが感染者も出さずに無事終了しました。今日から研究に注力します。 さて、金曜日の古典は、「百人一首」を10回ほど取り上げようと思います。言葉は文化と一体のもので、人間の考え方・感じ方を規定しています。詩にはそれが先鋭化されて現れると思います。編者は「かに星雲」を作った超新星爆発(西暦1054)の記録を日記(明月記)に孫引きして後世に残したことでも知られる藤原定家(1162-1241)で、1200年代前半に作られたとされています。 https://en.wikipedia.org/wiki/SN_1054 「英語で読む百人一首 Peter Ma…

切れないヒューズ

16族元素(特にテルル)を使ったphase change memoryは、究極的には原子の位置の変化に情報を蓄える素子です。少し似た、もっと大型のデバイスとしてresettable fuse というのがあります。fuse (ヒューズ)は、ガラス管中に細い導線が入っていて、電流を流しすぎると発熱して導線が融けて断線する安全のための素子ですが、一度切れると交換が必要です。resettable fuse は、電流を流しすぎると発熱して電気抵抗が高くなり、電流が流れにくくなります。過剰電流が流れる原因が取り除かれると、放熱が起こり温度が冷えて電気抵抗が低くなるという仕組みです。このような、温度が上がる…

相変化メモリのデバイス化プロセス

1968年にOvshinskyによって見出された相変化メモリ(phase change memory,PCM)についての研究は現在も活発に行われています。加熱して液体状態にして、急冷するとアモルファス、徐冷すると結晶になり、アモルファスと結晶で光の反射率が違うのを利用するのがDVD、電気抵抗が違うのを利用するのが狭い意味のPCMです(広い意味ではDVDも記憶素子なので、それも含む)。電気抵抗は、例えばアモルファスで30MΩ、結晶で700Ωなど、3桁以上の違いがあることもあります。加熱や冷却は電流による発熱(ジュール熱)で行います。物質の探索はおそらく終わっていて、GST(Ge-Sb-Te)とA…

相変化メモリ材料にはテルルが入っている

相変化メモリ材料は、書き換え可能なDVD(digital video disk)に使われているという話を昨日紹介しました。主な材料が2つありますが、52番元素 Te (テルル、16番元素 = カルコゲンchalcogen の一種)が入っているのは共通です。下記が実験結果の解説です。 http://www.spring8.or.jp/ja/news_publications/press_release/2012/120319/?set_language=ja&cl=ja http://www.spring8.or.jp/en/news_publications/press_release…

世界の研究所 Ovshinskyの「自宅研究所」

今週の世界の研究所は、今は存在していないUnited Solar Ovonic社を取り上げます。この会社は、発明家Stanford R. Ovshinsky(1922-2012)が作った会社です。この人は大学に行っていませんが、固体素子分野で既存の常識にとらわれない重要な発明をいくつもしています。 https://www.smithsonianmag.com/innovation/stanford-ovshinsky-might-be-the-most-prolific-inventor-youve-never-heard-of-180970276/ https://en.wikipedia.…

半導体加工技術の最先端

昨日の東京エレクトロンの投資家用資料(pdf注意)から面白いところを1つ解説します。 https://www.tel.co.jp/ir/policy/mplan/cms-file/IR_Day_20211012_J.pdf の76枚目~90枚目が現在の半導体微細加工の最先端だと思います。 GAA(Gate-All-Around)トランジスタは、flash memoryだけではなく論理回路にも使われるようですが論理回路では電子の高速移動が必要なので、結晶性が良くなければならないため、シリコン基板上にエピタキシャル成長したSi/SiGe超格子を作っています。それぞれの厚みは数nmでそれは蒸着源を切…

現在のflash memoryの構造

昨日の円筒型のトランジスタはGate-All-Around型と呼び、GAA-FETというそうです。同心円筒状にフローティングゲートがあるのが現在のフラッシュメモリの1セルで、昨日のように電荷の量でトランジスタのon/off閾値を動かすことにより1セル当たり3ビットの情報を記憶できるというものです。 ベルギーの研究機関 IMECのレポートが分かりやすかったです。 https://www.imec-int.com/en/articles/role-3d-nand-flash-and-fefet-data-storage-roadmap FETのチャネル(半導体)は多結晶シリコンを多分SiH4からC…

flash memory

頓挫(とんざ)したIntel Optaneは結局フラッシュメモリに勝てなかったわけです。フラッシュメモリについて調べましょう。 フラッシュメモリは東芝で発明されました。 https://www.youtube.com/watch?v=r2KaVfSH884 仕組みも上記で説明されていますね。金属が薄い絶縁膜にくるまれている構造です。読み出しのときは電荷の出し入れが起こらず、書き込み(1または0)の時に10V程度の高電圧をかけるとトンネル効果で絶縁物を介して電荷が出入りできることを利用しています。 アモルファスのシリコンが金属としてふるまい、取り巻くシリコン酸化物がアモルファスでありながら非常に…

Intel Optane メモリの中身

Intel のOptaneはいわゆる抵抗変化型メモリ ReRAMを使うというのが7年前の発表①②を見たときの私の理解でしたが、下記③wikipediaと④の分解レポートには相変化メモリPCMと書いてありますね。相変化メモリについては来週説明します。 ① https://www.youtube.com/watch?v=Wgk4U4qVpNY&t=2s ② https://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/semicon/714157.html ③ https://ja.wikipedia.org/wiki/3D_XPoint ④ https://pc.…

世界の研究所 Intel Labs と Intelの Optane メモリ撤退

今週の世界の研究所は、米国Intel社のIntel Labsです。 https://www.intel.com/content/www/us/en/research/overview.html 下記116人のっているのは役付きの人でしょうか。ソフトウェアだけでなく回路の人もいます。日本人はいないですね。 https://www.intel.com/content/www/us/en/research/researchers/overview.html Intelは最近コンパイラをみんなに無料公開してくれてたいへん助かっています(これまではバージョンアップのたびに10万円くらいずつ必要で面倒でし…