クェーサーで悩みを吹き飛ばそう!

今週は観測可能な宇宙(数百億光年)の三次元地図が作られつつあること、そしてその方法について解説していました。距離はスペクトルの赤方偏移で測定しますが、遠くなので非常に明るい天体が必要です。その一つがクェーサー(Quasar、準星、恒星状天体)です。恒星のように見えるが、年周視差がほとんどない遠距離の謎の天体である、と言うのが私が子供の時の情報でした。今では正体がわかっていて、「活動銀河核 active galactic nucleus, AGN」、すなわち、銀河の中心にある巨大ブラックホールに星々が活発に吸い込まれるとき、物質が渦巻状に加速されて(お風呂の栓を抜いたときが良い例え)お互いの摩擦…

宇宙の3次元地図

1989年に最初に発見されたCfA2 Great Wallや、ラニアケア超銀河団やそれ以上の銀河系の泡状集積構造がわかっているということは、億光年スケールで宇宙の3次元地図ができていることになります。例えば下記は10年前の番組ですがわかりやすいです。Sloan財団の望遠鏡も出てきます。1分10秒くらいからの格納庫が”Sloan Foundation”の響きにふさわしい怪しさでかっこいいです。2.5mで、思ったよりも小さいですね。 https://www.youtube.com/watch?v=xu2-9omdXNc https://www.apo.nmsu.edu/ 超…

宇宙のGreat Wall

銀河の分布にむらがあることは、1989年にハーバード大学の研究者によって発見されました。地球から最も近い構造は、2億光年離れたところにある、厚さ1500万光年幅3億光年、長さ>5億光年の銀河集団がつくる「壁」で、万里の長城にちなんで Great Wall と名付けられました。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%A6%E3%82%A9%E3%83%BC%E3%83%AB その成因は暗黒物質(電磁波や光を発しないので天文学的に観測されない物質、dark matter)の分布のむらであると…

世界の研究所 Sloan Digital Sky Survey

今週の世界の研究所は、Sloan Digital Sky Survey プロジェクトです。これは米国Sloan財団が資金援助して、北米と南米の天文台に専用の望遠鏡を作って深宇宙の構造を調べているものです。 https://www.youtube.com/watch?v=n7vzVcKEqIU 最近宇宙の絵を描く必要があって、星の分布をどのようにすると実体に近いかを調べたらひっかかってきました。今週は日常生活に全く関係ない深宇宙について解説します。調子が出ないときは宇宙のことを考えるのが気分転換におすすめです。 Sloan 財団は、1934年に米国の自動車会社 General Mortorsの社…

墨子(5) 墨守

墨子関連で現在まで日本語に残っているのは「墨守」でしょう。「因習を墨守する」のようにあまりよくない意味に使うと思っていたので、良くない故事があるのかと思いましたが、「公輸」のところで出てきた、「雲梯」との机上戦で9回戦って9回とも防衛に成功した、という故事からきているとのことです(解釈が最近変わったのかと思って古い広辞苑を見ましたが同じでした)。 ただし、墨子から3代目のリーダーの下、城の守備に失敗してリーダーもろとも180人(400人?)が城と運命を共にした記録が残っています。これは楚との戦闘で、墨家はまだしばらく続きましたが、戦国時代を終わらせた秦との戦闘でも似たようなことがあって、墨家が…

一人でいろいろやっていたオランダ黄金時代(17世紀)の人たち

オランダの国家としての意思決定に誤りが少ない理由を調べましたが、よくわかりません。ヨーロッパはずっと争いが続いていましたが、特に政治的に派手な指導者が出たわけではないようです(地味なのがいいのかもしれません)。 17世紀に経済的飛躍を遂げ、それに伴い芸術と科学で発展がみられたというのは確かです。 その背景にはカルヴィン派のプロテスタントが集まっていたことが要因として挙げられています。宗教的理由で経済的成功を重視し、そのために一生懸命働いたということのようです(昔、大学1年の教養の授業でMax Weberのその趣旨の本を習いました)。 https://ja.wikipedia.org/wiki/…

ニューヨークとスリナムの交換

オランダの戦略の続きです。模範解答は次のような内容でした。「ニューヨーク」は第一次~第三次英蘭戦争でとったりとられたりしていましたが、1674年のウェストミンスター和約でイギリスに引き渡され、その代わりに英領スリナム(南米大陸の北部)とトバコ等カリブ海の島々がオランダ領になりました。そこでサトウキビのプランテーションが行われ、成功したので蘭領ジャワ(インドネシア)で「コーヒー」を作って三角貿易でさらに収益を上げました。「南アフリカ戦争」で鉱産資源に恵まれた南アフリカ植民地をイギリスに明け渡し、さらに「太平洋戦争」後に植民地をすべて失ったオランダは、国内市場が小さすぎるため、経済的生き残りをかけ…

したたかなオランダの戦略

今週はオランダの歴史です。現在は昨日のTUDelftも関係ある半導体ナノ露光装置のオランダASMLが市場13兆円/年の半導体装置産業を制覇しています(半導体全体は80兆円/年)。 https://newswitch.jp/p/32027 暇つぶしに大学入試の世界史の問題の解説本を読んでいたら、「オランダは中世末から存亡の危機を多く潜り抜け、生き残りをかけた決断を成功させてきた」という内容があったので興味を持ちました。この入試問題は単純化すると「「グロティウス、コーヒー、太平洋戦争、長崎、ニューヨーク、ハプスブルグ家、マーストリヒト条約、南アフリカ戦争」のキーワードを用いてオランダの戦略を600…

世界の研究所 オランダ デルフト工科大学の Kavli Institute of Nanoscience

今週の世界の研究所はオランダ デルフト工科大学 (TUDelft)のKavli Institute of Nanoscience を取り上げます。 https://kavli.tudelft.nl/ 米国のKavli(カヴリ)財団が出資して世界のあちこちに研究施設を作っています。日本には宇宙論の研究所が東大に作られています(いずれ取り上げましょう)。ここはナノ加工技術を使った電子工学・生物化学・量子物理にまたがる分野を研究しているようです。我々の研究分野にも近いので、いろいろ刺激を受け、「やられたー」と悔しい思いをすることもあります。Casimir Research School というオラン…

墨子(4) ピンホールカメラ

墨子は、先週のyoutubeで言いたいことはほぼ尽くされているので、あと数回こぼれ話的なところをやって、マキャベリ「君主論」に移ろうと思います。今回は、気になっていたピンホールカメラ(小孔成像)の発明とされているところです。 https://learning.sohu.com/20170810/n506260353.shtml 私には正しいかどうか判定できませんが、光について語っている一連の短い文章で、「端」という字が古語で「終極」→「小さい点」の意味、そこから離れると大きくなる、「到」→「倒」反転している、下のものは高くなり、高いものは下になる、庫に景がある、などの文があります。まさに判じ物…