今週の世界の研究所はオランダ デルフト工科大学 (TUDelft)のKavli Institute of Nanoscience を取り上げます。
米国のKavli(カヴリ)財団が出資して世界のあちこちに研究施設を作っています。日本には宇宙論の研究所が東大に作られています(いずれ取り上げましょう)。ここはナノ加工技術を使った電子工学・生物化学・量子物理にまたがる分野を研究しているようです。我々の研究分野にも近いので、いろいろ刺激を受け、「やられたー」と悔しい思いをすることもあります。Casimir Research School というオランダの物理の教育プログラムと連携しているようです。Casimirは、カシミール効果の提唱者(H. Casimir,1909-2000; 提唱は1948, 実験で確認されたのは1997)にちなんでいると思われます。カシミール効果は、2枚の金属板を非常に近接しておいておくと、真空の電磁的揺らぎが内外で異なることで引力が生じるというものです。通常の環境下では分子の分極(分子の分極が真空の電磁的揺らぎと相互作用したものがロンドン力で、狭義のファンデルワールス力)や永久双極子の影響の方が大きいと思われますが、条件を整えると測定できるのは面白いです。私も若いころ実験できないか理論家に相談を受けたことがあります。物質を変えると斥力も出るそうで、これも最近微細加工したシリコン素子で実証されたそうです。カシミール効果は「ワープ」の実現のための仕組み(負のエネルギー)のアナロジーで時々出てきます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%82%B7%E3%83%9F%E3%83%BC%E3%83%AB%E5%8A%B9%E6%9E%9C
https://www.quora.com/Can-the-Alcubierre-warp-drive-be-done-with-the-Casimir-effect
導出や最近の研究は英語版にあります。
https://en.wikipedia.org/wiki/Casimir_effect
https://www.nature.com/articles/nphoton.2016.254
“The Economist” 誌にカシミール力が出ているのでびっくりしました。日本の類似誌にはなさそうですね。
https://www.economist.com/science-and-technology/2008/05/22/much-ado-about-nothing
今日の英語は「引力」関連語です。
attraction 引力
affinity 親和力 electron affinity 電子親和力
affection (U)愛情(夫婦間や子供に対するような) 、(C)疾患
fondness 好意,愛情
allure 魅力
appeal 引き付ける力
preference 好み
sympathy 共感
repulsion 斥力