セレン含有酵素 グルタチオンペルオキシダーゼ

今週はSeleniumの話から始まりましたが、確かにセレンは水銀の解毒剤(antidote)として最近も論文が出ています。ただし、無機水銀と無機セレンを動物の体内で混ぜると不溶性になり毒性が無くなると言った初期の研究の後は、長期の微量暴露については、水銀濃度の高い環境下で仕事をしている人の血中セレン濃度が低い、という測定結果の他は推測が多いように見えます。セレンは人間にとって必須元素で、グルタチオンペルオキシダーゼという活性酸素を分解する酵素の活性部位です。これについては https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B0%E3%83%AB%E3%82%BF%E3%…

水銀の応用、代替品

水銀は融点が-39℃、常温で液体の金属です。古くはトリチェリの真空を作るために使われ、その後比重が重い液体としていろいろの目的に使われました。最初の走査トンネル顕微鏡(STM)装置は資金潤沢なIBMの研究所(スイス)で除震のため水銀の上に浮かべられ、その結果原子像が得られてノーベル賞につながりました。同じことを長年やろうとした大学の先生(米国)は資金が足りずそこまでできなくて先を越されてしまったという話があります。できるとわかったあとはバネで吊るなど様々な安価な除震法が開発されましたが、最初にやるのはたいへんです。しかし水銀は蒸気圧が高いので、現在は開放系で使うことはほぼ禁止されています(空間…

水銀に関する水俣条約

話は飛びますが、2017年に「水銀に関する水俣条約」が発効し、加盟国は水銀使用量の削減や輸出入の規制が義務付けられています。2019年時点で109か国が締結しているそうです。これにより、研究で使用する水銀についても将来は廃棄に高額の費用を要するようになるから今のうちに処分するように、というような指示が来たりします。 ・鉱山からの水銀産出の禁止 ・小規模の金採掘における水銀使用の禁止(水銀で砂や石から金を溶かしだし、水銀を蒸発させることによって金を得る古い方法の禁止) ・蛍光灯などの使用を最小限にする規制 ・歯科用のアマルガムの使用は縮小するように、保険制度や教育をするという項目もあります。日本…

世界の研究所 Selenium プロジェクト

今週の世界の研究所は、Web applicationをテストするためのオープンソースソフトウェア Seleniumをとりあげます。 https://ja.wikipedia.org/wiki/Selenium_(%E3%82%BD%E3%83%95%E3%83%88%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%82%A2) これはいろいろなプログラミング言語から呼び出せる便利なもので、私はwebから文字を探索して自動で情報をとってきたりする(web scraping)のに使っています。28人で開発しているようです。wikipediaに載っている、Seleniumを立ち上げた人たちが含まれていない…

マキャベリ 人に頼るな

今週来週の集中講義でバタバタしていたら、もう金曜日です。今週のマキャベリは13~15章から抜粋します。 ・(戦争で加勢を受けることを戒めて)他人の武具は背中からずり落ちるか、重荷になるか、体を締め付けらえるか、そのいずれかになる。 ・君主が自分の都市国家の地形を熟知するように努力すると、より防備に工夫を凝らすことができ、さらに新しい土地を調べるときにもコツをつかんでいるので手軽に応用が利くようになる。 ・心の鍛錬については、歴史書に親しみ、偉人の所業に思いを致し、その勝敗の理を究明して勝つ方法に従うようにするべきである。さらに、優れた人が模範とした事柄を自ら実行しなければならない。 ・鍛錬を積…

グリホサートの訴訟と論争

除草剤グリホサート(N-ホスホン酸メチルグリシン (HO)2PO-CH2-NH-CH2COOH)は、最近週刊誌などで取り上げられ、農薬工業会が反論を発表したりして、ちょっとした論争になっています。その経緯について下記が良くまとまっていました。 https://wedge.ismedia.jp/articles/-/26627?page=1 話はアメリカの訴訟が発端のようですね。 https://agrifact.jp/roundup-not-prohibited-flow-what-truth-about-glyphosate8/ グリホサート耐性作物は、土壌にいる2種類の菌から別々の機構をも…

除草剤、遺伝子組み換え作物、シキミ酸サイクル、八角

遺伝子組み換え作物は除草剤と組で使うことが多いそうです。除草剤に耐性があるように遺伝子を組み替えます。対応する除草剤は、グリホサート系(glyphosate)(商品名ラウンドアップ)です。1970年に開発されてからもう50年過ぎています。最近、雑草に耐性種が現れ始めているとのことで、かなり時間がかかっていますね。 https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%A6%E3%83%B3%E3%83%89%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%97 遺伝子組み換え品は綿、大豆、トウモロコシ、アルファルファ等が広範に栽培されているとのこと。スリラ…

有機農業政策の破綻

https://foreignpolicy.com/2022/03/05/sri-lanka-organic-farming-crisis/ によると、スリランカの旧政府は肥料や除草剤の輸入でお金が流出することを嫌い、また、北部で多発する腎臓障害が除草剤の影響ではないかと疑って、化学肥料と除草剤を禁止したそうです。 その結果、主力輸出作物のお茶の収穫が30%減、主食のコメは20%減少して輸入が必要になり、肥料の金額以上に外貨が流出してしまったそうです。コロナに加えてロシアの戦争で観光が壊滅したのもダメージが大きく、為替レートをみると、今年の3月からスリランカルピーが暴落しているのが分かります。…

世界の研究所 Food Tank

今週の世界の研究所は、米国の食糧関係の民間シンクタンクであるFood Tankです。 https://foodtank.com/ ここは、最近経済が破綻したスリランカの有機農法政策を支援したとして批判されています。 https://foreignpolicy.com/2022/03/05/sri-lanka-organic-farming-crisis/ 今週は、本件に関連している除草剤と遺伝子組み換え作物について調べたいと思います。 chemical fertilizer 化学肥料 < 語源は ferry (フェリー)と関係あるそうです。fer で「進める」 https://www.y…

マキャベリ イタリアの分裂と傭兵

今週のマキャベリ「君主論」は、第8章~12章です。いくつか抜粋します。 (8章) 一つの国をかすめ取るにあたって、その征服者は一気呵成にぜひとも必要な荒療治をことごとくやってのける、つまりひと思いにすべてを断行し日ごとにそれを蒸し返したりしないように、また蒸し返しをやらずに人心を収攬し、恩恵を施してこれをつなぎとめておけるようにすることである。 (9章)人間は今まで悪人と思い込んでいた人にも良いところがあるとわかると、余計にその慈悲がありがたくなるもの。 (10章)人間の性質として、自分が恩恵を施しても、またそれを施されても、同じように義理を感じるものなのである。…賢明な君主にとって、籠城にあ…