今週のマキャベリ「君主論」は、第8章~12章です。いくつか抜粋します。
(8章) 一つの国をかすめ取るにあたって、その征服者は一気呵成にぜひとも必要な荒療治をことごとくやってのける、つまりひと思いにすべてを断行し日ごとにそれを蒸し返したりしないように、また蒸し返しをやらずに人心を収攬し、恩恵を施してこれをつなぎとめておけるようにすることである。
(9章)人間は今まで悪人と思い込んでいた人にも良いところがあるとわかると、余計にその慈悲がありがたくなるもの。
(10章)人間の性質として、自分が恩恵を施しても、またそれを施されても、同じように義理を感じるものなのである。…賢明な君主にとって、籠城にあたりその市民たちに志を堅持させるのは困難ではない。
11~12章はイタリアが分裂し他国に蹂躙されている理由の分析がサブテーマで、ローマ法王の配下が分裂抗争していたが強力な法王(チェーザレ・ボルジアの父 アレッサンドロ6世)が出て両方滅ぼした→各都市の貴族は法王の味方として有形無形の援助を受けていたが、法王が強くなったので味方が不要とされた→市民が軍事を掌握していた貴族を追い出した→都市の軍事力が弱体化し、傭兵に頼るようになった→各都市の傭兵が勝手に都市間抗争ルールを決め楽をするようになった→ヨーロッパ他国(傭兵ではない)の軍に蹴散らされる
だそうです。wikipedia の解説はちょっと違います。メカニズムは複雑怪奇と言ってよいでしょう。西暦1500年くらいの話です。日本も応仁の乱(1467-77)でグダグタな抗争から戦国時代に入っていきますね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%82%AF%E3%82%B5%E3%83%B3%E3%83%87%E3%83%AB6%E4%B8%96_(%E3%83%AD%E3%83%BC%E3%83%9E%E6%95%99%E7%9A%87)
抜粋文の英訳は次のようになっています。直訳調です。
(Chapter 8) Hence it should be noted that in taking hold of a state, he who seizes it should review all the offenses necessary for him to commit, and do them all at a stroke, so as not to have to renew them every day and by not renewing them, to secure men and gain them to himself with benefits.
(Chapter 9) Since men who receive good from someone from whom they believed they would receive evil are more obligated to their benefactor.
(Chapter 10) The nature of men is to be obligated as much by benefits they give as by benefits they receive. …it should not be difficult for a prudent prince to keep the spirits of his citizens firm in the siege.
a siege スィージュ 包囲攻撃、日本語では立場が逆の籠城(ろうじょう)の方をよく使いますね。
seize スィーズ つかむ、握る level 4