企業会計の勉強第1回は、ROE(return on equity, 自己資本利益率と訳す)の解説にしましょう。
読み方は、アール・オー・イー のようです(本だけで勉強すると読み方を間違えて時々恥ずかしいですが、いまはネットで調べられるので安心です)。
定義は ROE = 当期純利益÷自己資本×100(%)
で、当期=一定期間(1年、3か月など)
純利益=税金を払った後の会社の手元に残る利益(すべての経費は税金を払う前に清算済み)
自己資本=株式を発行して集めたお金
です。当期純利益は貯金したり、設備投資したり、株主に配当を払うのに使います。上場企業に適用される数値です。
「お金が1年間にその何パーセントのお金を生むか」という数値なので、私には資本主義の精髄のように見えます。
驚いたのですが、ROEの目標値は1年あたり8~15%で、5%を下回って向上の可能性がない場合は経営陣が辞めさせられることもあるとのことです。また、日本の会社は概してROEが低めとのこと。日銀のインフレ目標が年あたり2%(=お金が増殖する平均速度?)であることと比べると、8~15%という数字は非常に大きいと思います。これは何を意味するのでしょうか?上場している株式会社は他の経済主体(例:個人商店、零細企業、公的機関など)からお金を吸い上げて巨大化していっているということでしょうか?それとも実はROEが低い不調の会社が多いということでしょうか?計算上の他の要因があるのでしょうか?この辺を国際的に調べてみるといろいろ見えてきそうですね。
ROE目標8%は2014年の伊藤レポート(一橋大・経産省)等が論拠になっています。下記解説によると、機関投資家のアンケート結果から出てきているようですね。「株主資本コスト」は、「未来のお金の現在の価値」という経済学の重要概念(と私は思っている)とも関わってくると思うので、別の回で解説します。
https://note.com/modeling/n/n872dae632fd1
ROEの国際比較
https://doda.jp/companyinfo/contents/finance/013.html
デュポン(←化学メーカー)の解析法というのがあって、ROEを3つの積に分解してわかりやすくします。
https://www.investopedia.com/terms/d/dupontanalysis.asp
https://studyfinance.com/dupont-analysis/
ROE=売上高純利益率(1)×総資産回転率(2)×財務レバレッジ(3)
(1)は売上高に対する利益率、(2)は売上高÷総資産、(3)は総資産÷自己資本(株式総額)で、
メーカーだと(2)の総資産は工場などに対応します。(3)は借金をすると増やすことができますが、借金しすぎると利子負担が重くなったり倒産の危険が出たりするので適正範囲があるそうです。
ROEを上げるには、(1)製品に高い付加価値をつけて高値で売ること、(2)生産性を上げること(工場に効率よく働かせる)が一般的な処方箋だとのことです。確かに、どこを改善すればいいか、わかりやすそうですね。(1)(2)は部門別に計算することもできます(“ROA” return on assets という別の指標に近いです)。
equity capital 自己資本(=株主資本); equity エクイティは平等、公正、衡平法など訳がありますが、ここは「普通株」の意味でしょう。経済・会計分野の用語は、英語と日本語がずれていてわかりにくいです。
資本主義 capitalism
精髄,本質 essence
貯金 saving, deposit, savings
内部留保 internal reserves, earning retention, undistributed profit, plowback
設備投資 capital investment, plant investment
株主 shareholder, stockholder
個人商店 family-type operations, private concern, one-man concern
零細企業 small business, small-scale enterprise
公的機関 public institution, public sector
巨大化する become gigantic ジャイ「ギャ」ンティック
吸い上げる suck
不調 failing
論拠 ground for argument, evidence
売上高純利益率 net profit margin = net income / revenue
売上高 revenue, sales
総資産 total assets
総資産回転率 asset turnover
レバレッジ leverage
lever てこ
生産性 productivity
処方箋 prescription(←医者でもらうもの), recipe レシピ
デュポン DuPont Corporation; ナイロン、テフロン、ケブラーなどを発明。
利子負担 interest (payment) burden