企業会計 その2 CAPM

金曜日はしばらく企業会計の解説です。略語がたくさん(数十)あるので、当面、それを知識ゼロから説明していく方針でやってみます。
今回は、前回出てきた企業が資金を株式市場から調達するときにかかる「株主資本コスト」に関連するCAPM(キャップエム: capital asset premium model、資本資産価格モデル)です。読み方が変な略語が多いです。

皆さんが大発明をしたとしましょう。それを使って製品を作って売りたいとして、工場を建てる資金をどう調達するか。銀行から借りるか、株を発行して株式市場で売る(審査に通って上場したとして)かという選択肢があります。銀行のお金は期限が来たら返す必要がありますが、株の売却代金は返す必要がありません(このへんは次回)。株の場合は製品を売って得た収益を配当として配分することになります。

結局、将来のお金は現在いくらに相当するか、という資本主義の基本概念になります。来年1万円もらう権利を今いくらで買うか、ということです。

CAPMは、ノーベル経済学賞を受賞した概念です(William Forsyth Sharpe,1990)。
https://mba.globis.ac.jp/about_mba/glossary/detail-11620.html
式は簡単で、株式の期待リターン r(前回、年間8%が目標と言っていたもの) = rf+β(rM-rf)
rf: risk free rate 国債の利回りなど、経済全体の年間膨張率
β: ベータ値 (beta value) 個別の会社のリスク係数
rM-rf: market risk premium 市場が、株式一般に期待する余分な年間利回り
βは、危険度も織り込んでいるはずなので個別の会社をよく調べて予測するべき難しい値ですが、通常は過去の株式取引データから算出されていて、株の売買におけるランキング(近い過去に株価が上昇した)としても使われています。こういう風に逆に使う考え方は経済によく出てきます(当然、危険ですが)。逆という点では機械学習のベイズ推定にもちょっと似ていますね(当然、危険ですが(!))。
https://roadtoartisan.com/valuation-beta/
https://www.nikkei.com/markets/ranking/page/?bd=betahigh

不動産価格(マンションの値段等)を決める「収益還元法」にも似た考え方がでてきて、Cap rate (キャップレイト cap はcapital、資本)と言います。
価格=年間収益÷”Cap rate”
例えば 家賃5万円の部屋は年間60万円、20%が経費として年間収益50万円、それをCap rate 5%で割ると、価格は1000万円となります。なぜこうなるかの理由は、等比級数の和です。n年後の将来のお金の現在価値は、a_n倍されるとします。不動産はリスクが一定であるという仮定を置いて、一定割合で減少するとみなす(1/(1+r)をかける)ことがよく行われます。5%というのは、来年1万円入る予定は、今年の9500円に相当する(災害、不況などのリスクを見込む)と考えている。
収益50万円がリスク込みで永遠に入るとすると、収益の総額はa_n=1/(1+r)^n として、収益×Σa_n
a_n=1/(1+r)^n のとき、Σa_n=1/rだからです(Σのnは1からに注意)。

収益 profit
家賃 rent
株式 stock
配当 a dividend 「ディ」ヴィデンド 割り算の「割られる数」
現在価値 present value
価格 price (CAPM の premium も価格と訳しますが、「割増価格」のほうがはまるとおもいます)
危険度 risk
膨張率 expansion rate
価格変動率 volatility (ボラティリティのカタカナのまま使われることが多い)本来は「揮発性」=液体の蒸発のしやすさ
volatile 揮発性の 「ヴォ」らタイる
利回り yield (収率)、 interest rate (利率)
総額 summation

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